外資系企業というと、日本に進出している企業であっても、成果が出せないと、ある日突然、「君はクビだ。」と言われ、段ボールに私物を詰め込んで会社を去ることになってしまう…そんなイメージはないでしょうか。
「外資系企業はその分高い給料をもらっているし、しょうがないんじゃないの…?」
いいえ、必ずしもそうとはいえません。
たとえ外資系企業による解雇であっても、客観的に合理的を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権の濫用として無効と判断されることになるのです(労働契約法16条)。
「Performance Improvement Program」または「Performance Improvement Plan」のことをいい、「業績改善プログラム」または「業績改善計画」と訳されます。
これは、成績不振者等、業績の改善が必要な従業員を対象者として選定し、数ヶ月程度の期間を設定して目標を立て、面談やレポート等を繰り返しながら業績の改善を図っていくプログラムを指します。
一見すると、手厚い教育プログラムのように思われるかもしれません。
しかし、近年、PIPを用いた不当解雇の事例がみられるようになってきました。
つまり、達成困難な目標ないし抽象的な目標を設定し、その目標を達成することができなかったことを理由として解雇されるのです(このような会社では、就業規則上、業務を果たす能力が著しく低く改善の見込みがない場合に解雇できるような規定になっていて、会社は、当該規定に該当するから解雇理由があると主張する場合が多いといえます。)。
雇用を維持するために会社としてできる限りのことをしたという実績作りのためにPIPが利用されるのです。
しかし、PIPによる目標不達成を理由として解雇されたとしても、直ちに能力不足による解雇が正当化されるわけではありません。
設定された目標が一般の社員と比較して達成可能なものか、設定された目標が達成できなかったとしてそれが解雇を正当化するほどのものか、といった事情等を踏まえ、当該解雇に客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上も相当であるといえるのかどうかが改めて判断されることになるのです。
実際の裁判例でも、アメリカに本社があり金融情報等を提供する大手通信社に記者として雇用されていた労働者が、複数回のPIPの後、目標が達成できなかったとして自宅待機を命じられ、その後解雇されたという事例で、裁判所は、会社側が主張する解雇事由を排斥し、本件解雇は客観的に合理的な理由を欠くものとして無効であると判断しました。
このように、外資系企業であっても、解雇の効力が争われる場合には、基本的に日本企業と同様の基準により判断されるものと考えられます。
すなわち、客観的に合理的な理由もなく労働者を解雇することはできないのです。これは、上記のようにPIPが行われたとしても同様です。
勤務先が外資系企業の場合でも納得できないのであれば、泣き寝入りせず、早い段階で弁護士に相談してください。
ベリーベスト法律事務所では、外資系企業の不当解雇・退職勧奨の解決についても多数の実績があります。
1人で悩むより、弁護士に相談を