派遣に絡むトラブルのひとつに、突然、派遣元から契約期間満了を理由に更新を拒絶される「雇い止め」の問題があります。
期間の定めがある雇用契約で働く派遣社員の雇い止めは、原則として違法ではありません。しかし一定の事情があるときは、違法な雇い止めとして無効になる可能性があります。
今回は、派遣社員に向けて、派遣元から雇い止めされたときの対処法や違法な雇い止めの判断基準など、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1章では、派遣の雇い止めとはどのようなものかを知るために、労働者派遣契約や雇い止めの概要を説明します。
労働者派遣契約とは、派遣元会社が雇用する労働者を、派遣先会社の指揮命令下で働かせる契約をいいます。
一般的な労働契約は、会社と労働者の二者間の契約ですが、労働者派遣契約は、派遣社員・派遣元会社・派遣先会社の三者間となるのが特徴です。
このような労働者派遣契約では、「3年ルール」と呼ばれる特別なルールが定められています。
この制度に基づき、派遣先企業が3年を超えて、引き続き派遣社員に働いてもらいたいと考えるときは、正社員に雇用するなどの対応が必要になります。
雇い止めとは、有期雇用契約で働く労働者の契約期間満了を理由として、契約を更新せずに打ち切ることをいいます。
有期雇用契約は契約期間の定めがあるため、期間が満了すれば終了するのが原則です。
そのため、雇い止め自体は原則として違法ではありません。
しかし、複数回にわたって契約の更新が繰り返され、雇用期間も長期になっているケースは、実質的に期間の定めのない雇用契約と変わりなく、派遣社員として契約更新の期待を抱くでしょう。
そこで、一定のケースでは雇い止めを「解雇」と同様に扱い、厳格なルールで雇い止めの有効性を判断することで、結果、無効になることがあります。
派遣の雇い止めが無効となるケースについて、違法性の判断基準を説明します。
有期雇用契約は、契約期間満了によって終了するのが原則です。
派遣元会社から期間満了を理由として契約を打ち切られたとしても、直ちに違法になるわけではありません。
一方で、
・ 複数回更新が繰り返され、契約更新に対する期待が生じているケース
・ 実質的に期間の定めのない雇用契約と変わらない状態になっているケース
では、雇い止めが無効になる可能性があります。
これを「雇い止め法理」といい、労働契約法19条によって定められているルールです。
労働契約法19条には、雇い止めが無効になるケースが明記されていません。
ただし、過去の裁判例では、以下の6つの要素を総合考慮し、判断しています。
有期雇用契約を締結する労働者の雇い止めが、違法・無効と判断された裁判例を見ていきましょう。
事案の概要
Aは、Y社との間で1年ごとの有期雇用契約を締結し、29回にわたり更新・継続してきました。ところが、Yは、就業規則を改訂し、雇用期間を最長で5年とする旨の条項を設けました。
当初Aは、最長5年ルールの対象外でしたが、労働契約法改正に伴う無期転換申込権の適用を受けて、Aにも最長5年ルールが適用されることになりました。
そして、Aは、やむを得ず5年を超えては雇用契約を更新しない旨の条項の入った雇用契約書を取り交わしました。
Aは、本件雇用契約の更新を求めましたが、Yは更新を拒絶したため、本件雇止めは無効であると主張して、労働契約上の地位の確認を求めて訴えを提起しました。
裁判所の判断
本件の雇い止めは無効と判断されました。
※福岡地裁令和2年3月17日判決
事案の概要
Aは、Y社と1年間の雇用契約を締結し、臨時雇用のタクシー運転手として勤務していました。
Yは、Aに対し、契約期間満了を理由に解雇の意思表示をしたことから、Aは従業員としての地位保全等の仮処分を求めて訴えを提起しました。
裁判所の判断
本件の雇い止めは無効と判断されました。
※大阪高裁平成3年1月16日判決
派遣元会社から雇い止めをされ、「これは違法ではないか」と感じたときは、以下のような対処法を検討してみましょう。
派遣元会社から雇い止めをされた後は、まずは派遣元会社との雇用契約書の内容を確認してみましょう。
有期雇用契約を締結する際には、以下の事項を明示しなければならないとされています。
契約書の記載内容は、雇い止めの違法性を判断する際の重要な要素となりますので、契約内容に反する雇い止めにあたるかどうかをしっかりとチェックしましょう。
雇い止めの違法性を争うためには、派遣元がどのような理由で雇い止めをしたのかを確認することが重要です。
そのため、派遣元から雇い止めをされたときは、理由を確認しましょう。
そして、
・ 3回以上更新されている場合
・ 契約期間が通算で1年を超える場合
は、雇い止めの理由について記載された「雇い止め理由証明書」の発行を請求できますので、請求しましょう。
雇い止め理由証明書は、派遣社員からの交付申請がなければ、派遣元は発行しないため、雇い止めされたときは忘れずに請求するようにしましょう。
雇い止めの有効性については、専門的な知識や経験がなければ正確に判断することはできません。
違法な雇い止めかもしれないと感じたときは、自分だけで判断するのではなく、以下のような窓口で相談してみるのがおすすめです。
これらの相談先から適切なアドバイスを受けることで、今後の方針が明確になるでしょう。
不当な雇い止め(解雇)かどうかを争っている最中に、失業保険を受け取りたい場合には、「仮給付」という手続きをする必要があります。
仮給付の手続きの詳しい内容については、下記の記事をご参照ください。
派遣元から違法な雇い止めをされたときは、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。
雇い止めの違法性については、さまざまな要素を総合考慮して判断しなければなりませんので、正確に判断するためには法的知識が不可欠となります。
一般の派遣社員の方では、雇い止めをされたとしても、それが違法なのかどうかを判断できないため、まずは弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士に相談をすれば、雇い止めの違法性を正確に判断してくれるため、今後の方針を明確にすることができます。
雇い止めが違法である場合、会社と交渉をして復職を求めていくことになりますが、派遣社員が個人で対応しても、派遣元はまともに取り合ってくれないケースが多いです。
職を失った状態で、派遣元との交渉を行わなければならないのは、派遣社員にとって大きな負担となってしまうでしょう。
弁護士であれば、派遣社員の代理人として派遣元と交渉することができるため、負担は大幅に軽減されます。
精神的なサポートを得られるという点でも、弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士に依頼をすれば、雇い止めの無効を主張し、派遣元に復職できるよう派遣元と交渉を行ってくれます。
交渉が決裂したとしても、労働審判や訴訟などの法的手続きにより、復職を目指すことが可能です。
派遣元に不当な雇い止めを認めさせて復職を実現するには、弁護士のサポートが欠かせません。まずは弁護士に相談するようにしましょう。
派遣を雇い止めされた際には、30日前までに更新しないことについて通知があったか、雇い止めに関する明確な理由があるかなどの基準を満たしていない場合は、違法と判断される可能性があります。
弁護士に相談すれば、労働トラブルに関して法的な観点からアドバイスを受けられるだけでなく、慰謝料請求の検討をすることも可能です。
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