労働問題で悩んだときの相談先としてすぐに思いつくのは、労働基準監督署という方が多いでしょう。
厚生労働省ホームぺージによると、実際、総合労働相談コーナー(労働局や労働基準監督署などにある、行政機関による労働問題の相談窓口)に寄せられる相談件数は、令和4年度、124万8368件でした。
しかし、労働基準監督署はすべての労働問題を解決してくれる機関ではありません。また、何かトラブルが生じ、通報したとしてもすべての相談に対応してくれるとは限りません。
今回は、労働基準監督署がどのような問題の対応をしてくれるのか説明しつつ、何か労働トラブルに見舞われ労働基準監督署に相談や通報を考えるときの注意点などを解説します。
(出典:厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00132.html)
本ページはベリーベスト法律事務所のコラム記事です。
労働基準監督署(労働局、労働基準局)との間違いに、ご注意ください。
労働基準監督署の所在地はこちら
労働基準監督署は、企業や事業所の労働法違反を取り締まる行政機関です。
全国に321署あり、主に次のような業務をおこなっています。
また、労働者の権利を守るために各種相談窓口も設けています。
労働基準監督署へ相談できる内容は、賃金の未払いやサービス残業、労災隠し、健康診断の不実施など、労働関係の法令に違反する行為に対するものです。
一方で、職場内のいじめやハラスメントの相談にはなじみません。
このようなケースでは労働局などへの相談が適しています。
労働基準監督署は国の公的機関なので利用にあたって費用はかかりません。
賃金の未払いなどの金銭トラブルを抱えている場合にはありがたい存在だといえますが、それでは実際に相談や通報をした際、労度基準監督署は具体的にどういった対応をとってくれるのでしょうか。
労働基準監督官は、労働基準法などの労働関係法令違反の罪について、司法警察員としての権限があります。
裁判所から捜索令状の発付を受けて、強制的に事業所へ立ち入って調査することや、違反者を逮捕したり、検察庁に送致したりすることも可能です。
警察官同様の強力な権限を有していることから、企業の違法行為の是正に期待できるでしょう。
しかし、司法警察員としての権限は、あくまでも犯罪を処罰するという刑事上の手続にとどまります。したがって、不払いの残業代を強制的に支払わせるなどの民事上の請求は、ご自身で行うか、弁護士に依頼する必要があります。
また、労働基準監督官は、法律で権限が定められている労働関係法令以外の違反行為については司法警察員としての権限がありません。
さらに、321カ所の労働基準監督署に対し、全国には400万以上の事業所があります。
労働基準監督官は多忙を極めるため、相談の内容によって優先順位がつけられるのが現実です。
違法性や緊急性が高く、明確な証拠があるケースであれば早く動いてくれて、刑事上の罰則、行政上の処分等の威嚇を背景にして、間接的に民事上の紛争解決が促されることが期待できます。
一方、そうでない場合は対応も遅くなる場合があるでしょう。
相談した問題がどのような法律に違反するのか、解決を求める場合にどんな制度を利用できるのかなどのアドバイスを受けることができます。
労働基準監督署での相談になじまない問題には、適切な窓口の紹介も受けられるでしょう。
労働基準監督署を介すると企業と直接やりとりをする必要がありません。
退職した企業とのトラブルを抱えている場合など、助かる面が大きいでしょう。
先々、弁護士を利用した訴訟を視野に入れているというような場合でも、労働基準監督署で必要な証拠や証拠の集め方などのアドバイスを受けておき、今後に備えるという活用方法もあります。
通報する方法は主に3つあります。
それぞれ利点が異なるのでご自身の状況にあわせて利用しましょう。
労働基準監督署は勤務先の所在地ごとに管轄がわかれていますので、厚生労働省のホームページから所在案内を確認し、記載の住所へ訪問しましょう。
受付時間は、平日の午前8時30分~午後5時15分です。
有給休暇をとる必要がある方もいるかもしれませんが、窓口で証拠書類などを示しながら直接相談できるメリットがあります。
直接相談すると、労度基準監督署としても相談者の確認がその場でできますし、事態の深刻度も伝わりやすいため、具体的な対応を期待する場合にはもっとも望ましい方法といえるでしょう。
署内直通の電話番号にかけるか、「総合労働相談コーナー」にかける方法があります。
後者はあらゆる分野の労働問題を対象としており、最寄りの窓口があれば直接訪問し相談することもできますが、電話相談もできます。
また、労働条件に関する相談は、「労働条件相談ほっとライン」という相談窓口もあり、これは夜間や土日も対応しています。
電話の場合、直接出向くのが難しくても相談できるというメリットがあるほか、まずは電話でおおまかな相談をしてから、より具体的な行動に移すこともできます。
ただ、電話では労働基準監督署も証拠などを確認できないため、一般的なアドバイスに終始する可能性があります。解決を求める場合は直接訪問したほうがよいでしょう。
「労働基準関係情報メール窓口」というメール送信フォームから情報提供をすることができます。24時間いつでも通報できるため、忙しくて訪問や電話をする時間がとれない方に向いています。
ただし、あくまでも情報提供のメールであり、相談という性質ではありません。
メールフォームの画面にも「受け付けた情報に関する照会や相談についてはお答えしかねます」と記載してあり、立ち入り調査の際の参考情報といった程度にしか扱われないことが多くなります。
通報するという役割は果たしますが、何らかの回答を得たい場合には、直接訪問するか電話で相談することをおすすめします。
通報を受けた労働基準監督署は具体的にどのように動くのか、動いてもらう際の注意点についても説明します。
通報をきっかけに立ち入り調査や事情聴取などがなされ、法令違反があれば事業所に対して是正勧告、改善指導などを行います。
その後、事業所から是正の報告があるか、再度の監督がおこなわれ、違法状態の改善が確認できれば指導は終了となります。
一方で、調査の結果として法令違反があり、指導をしたにもかかわらず、事業所が無視をする、是正をしないなどのケースの場合には逮捕や送検をすることもあり得ます。
すぐにでも動いてもらうには、相談内容をできるだけ具体的に説明することが大切です。「いつからどんなトラブルに遭っているのか」を整理し、その証拠を提示します。
たとえばサービス残業を強いられている場合、タイムカードのコピーや給与明細書、社内メールの履歴、就業規則や労働契約書などが証拠となり得ます。
「自分はこう思う」という主観ではなく事実を提示することで、労働基準監督署に対応の必要性を理解してもらいます。
労働局では労働基準監督署と同じく総合労働相談コーナーへ相談できるほか、都道府県労働局長の助言・指導(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律4条)や、紛争調整委員会によるあっせん(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律6条)を受けることができます。
労働委員会でも労働相談、あっせん(労働関係調整法13条)の依頼が可能です。
これらは事業所全体への是正勧告や指導をおこなう労働基準監督署とは異なり、個別労働紛争解決制度にもとづく個々の問題解決に期待できる機関です。
ただし、あっせんなどの手続きは、相応の手間や時間がかかります。
また、助言・指導やあっせんには強制力がないので、企業が応じなければ意味がありません。
この点、速やかな解決を望むのであれば弁護士を利用するのが有効です。
労働者が個人で企業と対峙(たいじ)するのはとても大変です。
しかし、弁護士が間に入ると企業側もきちんと対応しなければならないと考え、問題解決に向けて交渉が進むことが期待できます。
また、労働審判や民事訴訟などの法的手段をとる場合も弁護士がすべて対応します。
労働基準監督署は公的機関なので誰でも利用でき、公平な立場での対応を受けることが可能です。電話やメールで相談や通報をするのも選択肢のひとつですが、トラブルの内容を整理し、違法行為の証拠をそろえたうえで直接出向くのが有効といえるでしょう。
適切に動いてもらえれば違法な状態を改善することが期待できます。
ただし、トラブルの内容によっては速やかな対応が見込めない場合があります。
労働問題の早期解決を願うのであれば弁護士への相談が最善といえます。
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