平成26年11月1日より、「過労死等防止対策推進法」が制定されました。
この法律は、
を目的として制定されました。
同法は、「過労死等」を、
と定義しました。
過労の結果、身体に現れる症状としては、脳血管疾患(脳梗塞や脳出血等)、心臓疾患(狭心症や心筋梗塞等)、精神障害(心の病)などがあるのです。
同法の中では、今後政府が、過労死等の防止のための対策に関する大綱を定めるべきこと、過労死等の防止のための対策を立てるべきこと、及び過労死等防止対策推進協議会を置くべきこと、等が定められました。
このような法律が制定されたことから明らかなように、現在の日本においては、過労死等が大きな問題となっているのが実状です。
統計的な数字の一例を挙げてみますと、平成29年度厚生労働省「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」によれば、過労による脳・心臓疾患又はそれに基づく死亡を原因とする労災補償請求件数は840件、過労による精神障害又はそれに基づく自殺を原因とする労災補償請求件数は1732件となっており、これらの数字は年々増加傾向にあります。
特に、過労による精神障害の労災申請件数が増えていることが顕著です。また、統計的にみて、過労による精神障害の労災申請件数は、20歳から49歳の世代に多いことも明らかとなっています。
これらの数字から分かることは、いま会社で働き盛りの20代~40代の世代の中で、過労によって身体に変調を来している方がこれだけいて、さらに実際に身体に変調をきたしていないものの、その予備軍ともいえる方は、もっとたくさんいるであろう、ということです。
メールでのお問い合わせ 無料診断!残業代チェッカー仕事をし過ぎて心身の健康を害している方、過労により倒れた経験があるという方は、ご自身の働き方について、見直しをしてみた方がよいかもしれません。
次のことにあてはまる方は、要注意です。
以下の基準は、一般に過労死ラインとされている危険領域とされています。
「1ヶ月間におおむね100時間又は2~6ヶ月間平均で月おおむね80時間を超える時間外労働は、発症との関連性は強い。」とされていることにあります。
また、同基準では、「月おおむね45時間を超えて長くなるほど、時間外労働と発症との関連性は強まる。」ともされています。
なお、月80時間以上の残業は、週に置き直せば20時間以上の残業、残業を含む週労働時間で言えば60時間以上の労働にあたるところ、「労働力調査」の2017年平均結果によれば、我が国では、週60時間以上働いている人は被雇用者では435万人存在するそうです。
メールでのお問い合わせ 無料診断!残業代チェッカー
仕事をし過ぎて心身の健康を害していたり、上記の過労死ラインにあてはまったりしていても、簡単に働き方を変えることはできないと思われます。
自分の働き方を変えるには、多くの方の場合、上司や職場の同僚を巻き込んで、あるいはもっと上の存在である役員や社長まで巻き込んで、初めて変革が可能となるのではないでしょうか。
そのような変革を実現するのは容易ではありませんが、ここで、自分の就業環境が法律で許された範囲に入っているのかをチェックするポイントをご紹介します。
我が国では、使用者は自分の好きなように労働者を働かせることができる、ということは認められておらず、法律による規制がなされています。
労働基準法で定められている規制の内容は、主に以下のとおりです(以下は主要な原則を示したものであり、例外が認められていることもあります)。
上記のような労働時間・休日規制に対して、時間外労働・休日労働を労働者に行わせることが許されるのは、次の場合に限られます。
これら①~③の要件を満たさないで時間外・休日労働をさせた使用者には、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科されることがあります(同法119条1号)。
サブロク協定が有効とされるには、いくつかの要件を満たさなければならず、労働基準監督署長への届出が必要です。サブロク協定が無効な場合は、協定なしで残業を命じていることと同じになります。
厚生労働大臣は、サブロク協定で定める労働時間の延長の限度等の基準を定めることができ(同法36条2項)、サブロク協定の定める上限時間はこの基準に適合したものとなるようにしなければなりません(同法36条3項)。
これを受けて、厚生労働大臣は、以下の上限基準を定めています。
期間 | 限度時間 |
---|---|
1週間 | 15時間 |
2週間 | 27時間 |
4週間 | 43時間 |
1ヶ月 | 45時間 |
2ヶ月 | 81時間 |
3ヶ月 | 120時間 |
1年間 | 360時間 |
これらの法律上の規制に違反している部分があれば、あなたは会社に対して、法律に適合した就労環境を整備するように申し入れることが可能です。
あなた自身が会社にそのような申し入れをすることは難しいということであれば、弁護士に相談して、弁護士から申し入れをするという方法をとることもできます。
心身の健康を害するような過重労働、過労死ラインに至るような過重労働、あるいは法律に違反した過重労働を強いられているときに、実際に働いた残業時間について、適正な超過勤務手当(割増賃金)が支給されていますか?
たとえ1分だけの超過勤務でも、あなたは法律上超過勤務手当を請求する権利があります。
まして、過労死ラインを超えるような過重労働を強いられている場合には、自分の命を削って働いているようなものですから、当然それに対する正当な対価を請求すべきです。
会社に対して未払いの超過勤務手当を請求したいと考えている方は、まずは当事務所の弁護士にご相談ください。
超過勤務手当に未払いの部分がある場合、どの程度請求が可能かは、「残業代チェッカー」をご利用ください。
また、不幸にして実際に過労が原因で亡くなった家族がいるという方は、過労死に対する労災補償を請求することが可能な場合があります。こちらについても、当事務所までご相談、または「労働災害補償専門サイト」をご覧ください。
1人で悩むより、弁護士に相談を