厚生労働省が公表している令和6年度個別労働紛争解決制度等の運用状況によると解雇に関する相談件数は3018件で、全体の9.9%を占めています。
実際に「退職届が受理されない」「“後任が見つかるまでいてくれ”と言われた」など、退職したくてもこじれてしまうケースも少なくありません。
今回は、退職を阻止(在職強要)されて困っている方に向けて、違法な引き止めの実態と適切な対処法をベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
「退職届が受理されない」「後任が決まるまで辞められない」といった引き止め行為は、法律上認められるものではありません。
労働者には退職する自由があり、会社が一方的に妨害することは違法となります。
以下では、その根拠や雇用形態ごとの注意点を説明します。
「退職届は受理できない」などといった会社の主張は通用せず、法的な拘束力を持ちません。
退職の自由は、憲法22条の「職業選択の自由」に基づく基本的な権利として保障されています。また、民法627条でも、労働者が自らの意思で労働契約を終了できることが認められています。
会社が「辞めさせない」と強引に在職を迫る行為は、これらの法律の趣旨に反するため違法です。
無期雇用である正社員の場合、退職の意思を伝えてから2週間が経過すれば契約は終了します(民法627条)。
会社の同意や承認は不要であり、法律上は一方的に退職できます。
会社から退職しないよう要求されても、退職できる
よくある、以下のような会社側の要求には法的拘束力がありません。
会社が退職届を不受理にしても、内容証明郵便などで退職の意思を示せば、受理されなくても退職は成立します。
このように労働者には自由に退職できる権利がありますので、不当な引き止めに屈する必要はありません。
有期雇用契約では、原則として契約期間満了まで働く義務がありますが、民法628条により「やむを得ない事由」があれば期間途中でも退職可能です。
たとえば、以下のようなものが「やむを得ない事由」の典型例です。
そのため、契約社員や派遣社員の方は、まずは自分の雇用契約書を確認し、契約期間がいつまでかを把握することが重要です。
会社の就業規則に下記のようなルールの記載があっても、これは無効です。
なぜなら、労働基準法92条は、就業規則が法令に違反してはならないと定めており、民法の原則を制限する上記規定は違法ですので、労働者を縛る力はありません。
前述した通り、会社が「退職届を不受理」として受け取りを拒否するケースもありますが、これも法的に無効であり、会社に対して現実に退職の意思表示ができているのであれば、退職は成立します。
就業規則は、「会社が決めた会社のルール」ですが、当然、法律が優先されます。
労働者は安心して退職手続きを進めることができます。
「退職届を不受理にされた」「退職させてくれない」といった引き止めは、典型的な在職強要の手口です。
法律上は労働者の自由を制限する根拠はなく、会社の一方的な言い分に従う必要はありません。
以下では、代表的な7つのケースを挙げ、それぞれの対処法を紹介します。
ひとつ目のパターンは、会社側から
などと言われて退職できないケースです。
ただし、後任が見つかるかどうかは企業側の都合であり、労働者には関係のないことです。上記のとおり労働者側には辞める自由があるので、これを理由に退職できないことにはなりません。
会社があくまで退職を認めないなら、あなたがはっきり退職の意思を示した証拠を残すため、内容証明郵便で退職通知を送り、控えを手元に残して対応しましょう。
会社から「今やめるなら迷惑をかけられるので、残りの給与を払わない」と言われ退職できないケースも多々あります。
しかし、いつ退職するとしてもすでに発生した給与を支払うのは会社の義務です。
退職後も未払い給与の請求はできます。
シフト表や業務日報など証拠の写しをとり、給与明細書や雇用条件通知書などの資料を手元に集め、退職をしてから請求すると良いでしょう。
会社が離職票を出してくれないといった嫌がらせをする場合があります。
失業保険の受け取りをさせないように圧力をかけてきて、在職強要するのです。
その場合、まずはハローワークに行って相談し、ハローワークから会社に離職票の発行を促してもらうのが良いでしょう。
それでも離職票を発行してくれない場合には、ハローワークの職権によって離職票を出してもらえる手続きがあります。
ハローワークに対し、労働者が被保険者でなくなったことの「確認の請求」を行い、その確認がとれたらハローワークが離職票を交付してくれます(雇用保険法第8条)。
会社から「懲戒解雇にするぞ」と脅されて退職できない方もいます。
しかし懲戒解雇は、会社が恣意(しい)的に適用できるものではありません。
懲戒処分となる事由もないのに懲戒解雇することは認められません。
このような会社の言い分に理由はないので従う必要はなく、あなたは会社を辞めることができます。会社側の勝手な理由で退職金を減らされたり、退職金がカットされたりすることもありません。
「退職したい」と告げると、会社から「有給を消化させない」と言われて嫌がらせを受けるケースもあります。
しかし有給休暇は法律(労働基準法)によって労働者に認められた権利であり、会社が取得させないのは違法です。
有給取得には理由は不要であり、有給中に転職活動や旅行をしてもかまいません。
会社が有給取得を認めないので困った場合には、労働基準監督署で労働相談をしてみるのもひとつの方法です。
有給を取得させないのは違法なので、労基署が会社に注意してくれる可能性もあります。
会社が有給取得を拒絶したことがわかる資料を持参して相談に行きましょう。
退職自体は認めても、会社から退職金を出してもらえないケースもあります。
しかし、退職金規定のある会社では、退職金の支給は義務です。
退職金が未払いであれば、退職後に請求することも可能です。
退職金規定の写しを取得し、会社から「退職金を出さない」と言われたときの連絡書やメールなどを手元に集めて後からの請求に備えましょう。
退職しようとすると「違約金を払え」「損害賠償請求する」などと脅されて退職できないケースがあります。
しかし、雇用契約などで労働契約に違反したことを理由とする違約金や損害賠償の予定をすることは禁じられています。
会社から金銭関係で脅されたとしても、気にせず退職してかまいません。
退職届を不受理にされたり、未払い残業代があるのに応じてもらえなかったりする場合、個人での対応には限界があります。
このような場合は、弁護士に相談し、退職の実現から未払い請求まで包括的なサポートを受けることが大切です。
弁護士は、退職届の受理を拒否された場合でも、内容証明郵便を用いて正式に退職の意思を通知できます。
これにより、会社が「退職届を受け取っていない」と主張しても、退職の意思を示した事実を客観的に証明できますので、法的には有効に退職が成立します。
また、会社からの不当な引き止めや脅迫に対しても、弁護士が介入することで労働者の心理的負担を大きく軽減できます。
退職代行サービスと異なり、弁護士は交渉権限を持つため、強い効果が期待できます。
残業代請求には、出退勤の記録や業務指示のメールなど客観的な証拠が必要です。
弁護士は、どの証拠が有効かをアドバイスし、集めた資料をもとに未払い残業代を正確に算出します。
サービス残業でタイムカードが存在しないようなケースでも、他の証拠を組み合わせることで残業代を請求できる可能性がありますが、それには専門家である弁護士のサポートが不可欠です。
弁護士が作成する内容証明書は、退職意思の通知や未払い賃金の請求を法的に明確に示すものです。郵送記録が残るため、会社が「受け取っていない」と否認することを防ぎます。
また、内容証明を受け取った会社は、無視すると法的リスクが高まるため、交渉姿勢を改めることも少なくありません。
退職届を不受理にされた場合でも、内容証明を送付することで退職の申入れをしたという法的効力を持たせることが可能です。
弁護士は、代理人として会社と直接交渉できるため、労働者が精神的負担を感じる必要がなくなります。
また、実際の交渉は、すべて代理人である弁護士が対応しますので、退職条件の調整や未払い残業代の支払い交渉なども有利な条件でまとめられる可能性が高くなります。
特に、「損害賠償請求をする」といった脅しに対しては、弁護士が法的根拠の有無を確認し、無効であるという判断になれば、その旨を主張することで、会社側も不当な請求を控えることが期待できます。
労働者本人が交渉するよりも、圧倒的に有利に話を進められるのが特徴です。
会社が交渉に応じない場合でも、弁護士であれば、労働審判や訴訟といった法的手段に進めます。
労働審判は、短期間で解決する仕組みが整っており、残業代請求等の事案で早期解決を目指す 場合に有効です。さらに、 場合によっては訴訟を提起し、経済的利益の最大化を目指した請求を行うことも可能です。
弁護士が代理人となれば、複雑な手続きを安心して任せられ、最終的に法的に認められた形で権利を回復できます。
実際に「退職届を不受理にされた」「長時間残業で引き止められた」といった相談は少なくありません。
以下では、弁護士が介入して退職と未払い残業代の問題を解決したベリーベスト法律事務所の事例を紹介します。
50代男性・料理店の調理担当のAさんは、飲食店で10年以上、週6日・1日11時間前後の過酷な勤務を続けていました。退職を申し出ても社長から繰り返し引き止められ、労働条件が改善されることはありませんでした。
長年の不当な扱いに限界を感じたAさんは退職を決断し、退職後、過去2年分のタイムカードと給与明細を持参して弁護士に相談しました。弁護士が未払い残業代を請求して交渉を重ねた結果、当初の相手方の回答から3倍近く増額した金額を支払ってもらうことができました。
50代女性・事務員のAさんは、勤務先で日常的に社長や会長から罵声を浴びせられるなどパワハラを受け、退職届を提出しましたが会社は受理せず、辞められない状況に追い込まれていました。
そこで弁護士に相談し、退職を最優先にサポートしてもらうことになりました。
弁護士は、内容証明を送り、まずは退職を成立させたうえで、さらに会社との交渉で当初の想定を100万円上回る金額で和解を成立させました。Aさんは安心して新しい生活を始めることができました。
会社が認めないので「退職できない」といった場合、たいていは法的に正当な理由はありません。
弁護士などの法律の専門家に依頼して、適切な対応をとって退職を実現しましょう。
会社が在職を強要することはできませんし、会社の意に反して退職した場合でも、基本的には残業代も給料も退職金も請求できます。
「退職できない」と泣き寝入りする必要はないので、正しい情報を集め、認められる権利はきちんと行使しましょう。
退職にかかわるトラブルでお困りの方はベリーベスト法律事務所までご相談ください。
当事務所は在職強要の解決に多数の実績があるほか、弁護士があなたの代わりに会社と話し合って円満退職をサポートする「退職サポートプラン」もご用意しております。
残業代請求に関するご相談は何度でも無料、退職サポートに関するご相談は初回相談60分まで無料です。
どうぞお気軽にお問い合わせください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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