厚生労働省が公表した「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によれば、総合労働相談コーナーに寄せられた総合労働相談件数は15年連続で100万件(※)を超えており、労働問題の悩みを抱える方は依然として多い状況です。
そんな中、近年急速に知名度を上げているサービスに「退職代行」があります。「退職代行」は、退職を切り出せない本人に代わって退職の意思を会社に伝えるサービスです。「退職代行」については、自力での退職が困難な方から一定の評価を得ている一方で、トラブルが生じるケースも出ています。
今回は、退職代行をテーマに、サービスの仕組みやトラブルを回避するための対策法、退職代行を弁護士に依頼するメリットについて解説します。
(※)出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00132.html)
退職代行サービスとは、退職を希望している方に代わり、勤務先の会社に対して退職の意思表示を行うサービスのことです。
期間の定めのない雇用契約においては、原則として、労働者は2週間の予告期間を置けば、いつでも、理由を要せず退職をすることができます(民法627条1項)。
しかし、中には次のような事情があり、困っている方がいます。
退職代行サービスは、一般的に次のような流れで行われます。
弁護士が直接対応しないような退職代行業者を利用する際には、気をつけるべき点があります。
弁護士法72条では、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務をしてはならない旨が定められています。
これを非弁行為(ひべんこうい)といいますが、退職代行業務の一部が非弁行為に該当する場合があると常々指摘されているのです。
非弁行為には、刑事罰が予定されていますので、悪質な退職代行業者を利用して非弁行為が行われると、業者が法違反で検挙される可能性があるだけでなく、利用者本人も捜査機関に事情を聴かれるなど、トラブルに巻き込まれてしまうおそれがあります。
退職代行といっても退職代行業者ごとに対応範囲が異なりますので、対応してくれるサービス内容をしっかりと確認する必要があります。
利用を検討している方は、要らぬトラブルに巻き込まれないためにも次の点に留意しましょう。
退職代行サービスは昨今、メディアで取り上げられる機会も多く、新規参入する業者が増えています。そして、やはり実績のある業者の方がコンプライアンスへの意識が高い場合が多く、非弁行為にあたる業務は行わないなど、対応可能な業務範囲を理解しているように思えます。
料金が安すぎる業者はもとより、料金システムが複雑で、ことあるごとに追加料金をとる業者も、思わぬ高額料金が請求されることになり得ますので、トラブルに発展してしまう可能性があります。
ホームページがない業者も実態がつかめず、トラブルに巻き込まれかねませんので、やめておいた方がよいでしょう。
弁護士事務所以外が行う退職代行でも、顧問弁護士がいれば法的なアドバイスを受け、非弁行為にあたらない範囲で業務を行っている可能性があります。
ただし、顧問弁護士がいるといっても、弁護士が直接退職代行業務を行っていない以上は、業者が弁護士のアドバイスに従わずに非弁行為を行っているリスクが残ります。
そのため、顧問弁護士の存在は、参考にはなりますが、それをむやみに信じることは念のためやめておきましょう。
また、「弁護士と連携・紹介」をうたっている業者も注意が必要です。
弁護士法72条では、法律事務の取扱いとともに法律事務の周旋(世話をとりもつこと)も禁止しています。また、同法74条では、弁護士でない者が弁護士事務所などの標示や記載をすることを、27条では弁護士の非弁提携を禁止しています。
つまり、金銭を対価に弁護士を紹介することは弁護士法に抵触するため、こうした業者の利用はトラブルの元になります。
弁護士以外が行う退職代行サービスが必ずしも悪いのではなく、法律で禁止された範囲にわたって業務を行う点が問題となるのです。
弁護士ではない業者ができる退職代行は、すなわち伝言です。
「退職を希望しています」「有休を消化するそうです」などと一方的に伝えることはできますが、有休の消化日数や退職時期、未払い賃金の請求についての交渉などは一切できません。
ですので、弁護士でない者が、こうした交渉や請求行為ができるとうたっている場合は違法業者といえますので注意が必要です。
退職に際してトラブルを回避するためには、弁護士へ依頼する方が安全で確実です。
弁護士へ依頼すると次のようなメリットがあります。
退職代行業者を利用しても、会社側が強硬な姿勢を貫き、「本人からしか退職の意思は受け付けない」「退職には応じない」などといわれてしまうリスクがあります。
こうした場合、上記のとおり、弁護士でない業者は交渉ができませんので、なすすべがありません。対応を誤れば会社側から非弁行為を指摘されてしまうでしょう。
一方で、弁護士であれば法律に基づき適切に退職の意思表示を行い、相手方の主張にも対抗することができます。
退職代行業者の場合には、伝言行為しかできませんので、実際の手続きはすべてご自身が行うことになります。
たとえば退職届を提出することや離職票の送付を依頼すること、退職金を支払うよう一方的に請求することは弁護士が直接に対応しない退職代行業者でも行うことはできますが、会社側がこれを断った場合、弁護士のように交渉をすることはできませんし、社会保険や雇用保険の手続きを依頼することもできません。これらの手続きには手間がかかりますし、不慣れで分からないことも多いでしょう。
弁護士であればこうした手続きを正しく行うためのアドバイスを行い、必要に応じて代行することも可能です。
退職代行業者を利用せざるを得ない状況にあるということは、未払い賃金や未払い残業代がある、パワハラの慰謝料を請求したいなど、何らかのトラブルを抱えていることも少なくないのではないでしょうか。
最初から弁護士に依頼すれば、退職の意思表示と同時に、こうした金銭の請求も行うことができます。
まれに会社が「辞めるなら損害賠償を請求する」などと言ってくることがありますが、弁護士がいれば損害賠償を請求される根拠がないことを主張したり、合意書を作成したりして対処することが可能です。
ほかにも、最初から弁護士に依頼すれば、退職する前に不当解雇された場合や、理由なく懲戒解雇扱いにされてしまった場合などの解雇トラブルについて対処してもらうこともできますし、会社から止められていた労災認定請求等の他の法的トラブルについても相談することができる点もメリットと言えるでしょう。
退職代行サービスが活況である一方、非弁行為の問題が指摘されているように、退職代行業者を選ぶ際には注意が必要です。
悪質な退職代行業者を利用した結果、トラブルに巻き込まれないとも限りません。
「勤務先の会社を確実に退職したい」「退職と同時に未払い残業代も請求したい」など、労働問題でお困りのようでしたら、まずは一度ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
労働問題の実績と経験が豊富な弁護士が初回60分無料で親身になってお話を伺い、ご相談者様の個別の事情に合わせた対応をするとともに、問題の解決に向けて尽力いたします。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
残業代請求、不当解雇・退職勧奨、同一労働同一賃金、退職サポート、労働災害、労働条件・ハラスメントに関するトラブルなど、幅広く労働者のお悩み解決をサポートします。ぜひお気軽に お問い合わせください。
1人で悩むより、弁護士に相談を
1人で悩むより、弁護士に相談を
今すぐには弁護士に依頼しないけれど、その時が来たら依頼を考えているという方には、ベンナビ弁護士保険への加入がおすすめです。
何か法律トラブルに巻き込まれた際、弁護士に相談するのが一番良いと知りながら、どうしても費用がネックになり相談が出来ず泣き寝入りしてしまう方が多くいらっしゃいます。そんな方々をいざという時に守るための保険が弁護士費用保険です。
ベンナビ弁護士保険に加入すると月額2,950円の保険料で、ご自身やご家族に万が一があった場合の弁護士費用補償(着手金)が受けられます。残業代請求・不当解雇などの労働問題に限らず、離婚、相続、自転車事故、子供のいじめ問題などの場合でも利用可能です。(補償対象トラブルの範囲はこちらからご確認ください。)
ご自身、そして家族をトラブルから守るため、まずは資料請求からご検討されてはいかがでしょうか。
提供:株式会社アシロ少額短期保険 KL2022・OD・214