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労働条件・ハラスメントの弁護士コラム

給与の未払いを解決する方法は? 時効や手続きの流れを弁護士が解説

2024年09月13日
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給与の未払いを解決する方法は? 時効や手続きの流れを弁護士が解説

給与の未払いは労働基準法違反です。受け取れるはずの給与が未払いとなっている場合には、すみやかに弁護士に相談して回収を図りましょう。

本記事では、未払給与の支払いを受ける手順、未払給与請求には時効があること、弁護士と労基署どちらに相談するのがいいのかについてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、給与(賃金)の未払いが違法である理由

給与未払い(賃金未払い)は、「全額払いの原則(労働基準法24条1項本文)」に反するため違法です。

  1. (1)給与の未払いは「全額払いの原則」に反する

    労働基準法第24条1項本文は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定めています。

    発生した給与(賃金)を全額払わなければならないというルールは、一般に、賃金全額払いの原則などと呼ばれています。

  2. (2)未払いが違法となる「給与(賃金)」に含まれるもの

    「給与(賃金)」とは、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいいます(労働基準法第11条)。

    労働の対価として支払われるものはすべて、「給与(賃金)」にあたるため、給与以外の名目で支払われているものも、「給与(賃金)」に含まれることがあります。

    たとえば、以下のような名目で支払われているものは「給与(賃金)」であり、これらの一部でも未払いがあれば違法となります

    給与(賃金)に含まれるものの一例
    • 基本給
    • 各種手当
    • 残業代
    • 賞与
    • 退職金
    など
  3. (3)会社の経営状態が悪化していたとしても給与の未払いは違法

    会社の経営状態が悪化していた場合であっても、給与の未払いは許されません。
    いかなる場合でも、会社には給与を全額支払う義務があります。

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2、未払給与の消滅時効

給与の支払請求権は、本来の支払日の翌日から以下の期間が経過すると時効により消滅してしまいます(労働基準法第115条、附則第143条第3項)。

給与(賃金)の支払請求権 行使できる時から3年
退職手当の支払請求権 行使できる時から5年

時効期間が経過すると、未払給与を請求できなくなってしまいます。

なお、この時効は、会社に内容証明郵便等で未払い給与の請求をすれば、6か月間進むのを止めることもできます(これを、時効の完成猶予といいます)。
その間に、裁判を起こすなどの行動を起こせば、裁判等の間は時効が進むことはありません。未払給与がある方は、なるべく早い段階でどういう方法を取るのが最善なのか、弁護士に相談し、未払給与の回収を図りましょう。

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3、給与の未払いについては、労働基準監督署と弁護士のどちらに相談すべき?

給与の未払いに関する主な相談先としては、労働基準監督署と弁護士が挙げられます。実際に未払給与を回収したい場合には、弁護士へのご相談をおすすめします。

  1. (1)労働基準監督署|一般的なアドバイス・臨検・是正勧告など

    労働基準監督署は、企業における労働基準法の順守状況等を監督する行政機関です。

    労働基準監督署に相談すると、未払給与の回収方法などについて一般的なアドバイスを受けられます。
    また、実際に事業場に対する臨検(立入調査)を行い、違反を発見した場合には是正勧告を行う場合もあります。

    ただし、労働基準監督署は、労働者の代わりに未払給与の支払いを請求してくれるわけではない点に注意が必要です。

  2. (2)弁護士|具体的なアドバイス・未払給与請求の代理など

    弁護士は、法律の専門家であり、労働問題の解決も取り扱っています。

    弁護士に相談すると、未払給与の回収方法などについて、具体的な状況に合わせて詳しいアドバイスを受けることができます。

    また、弁護士には、会社との交渉や法的手続きなど、未払給与の請求に必要な対応の大部分を依頼することができます

    実際に未払給与の支払いを請求する際には、弁護士に相談するのがおすすめです。

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4、未払給与請求の手順

会社に対する未払給与の請求は、以下の手順で行うのが一般的です。


  1. (1)労働の事実に関する証拠の収集

    給与請求権は労働契約に基づいて発生するため、まずは、労働契約書や雇用条件通知書から給与の計算方法や支払日等を確認することが必要です。
    また、給与は実際に労働をしたことによって発生するため、労働をした事実に関する証拠を集める必要があります。できる限り多くの証拠を収集しましょう。

    弁護士であれば、証拠になる資料としてどんなものがありそうか、具体的な働き方の状況に合わせてきめ細かいアドバイスが可能です。

    労働の事実に関する証拠の例
    • 勤怠管理システムやタイムカードの記録
    • 交通系ICカードの乗車記録
    • 会社のシステムへのアクセス記録
    • オフィスの入退館記録
    • 業務日誌
    など
  2. (2)未払給与額の計算

    労働に関する証拠がそろったら、それらを基に給与計算を行います。

    未払給与額の計算にあたっては、割増賃金が適用される場合がある点に注意が必要です。割増賃金を考慮した給与の計算は複雑になることが多いため、未払給与の金額を正確に計算するためには弁護士にご依頼いただくことをおすすめいたします。


    法定内残業 通常の賃金
    時間外労働 通常の賃金×125%
    ※月60時間を超える時間外労働については通常の賃金×150%
    休日労働 通常の賃金×135%
    深夜労働 通常の賃金×125%
    時間外労働かつ深夜労働 通常の賃金×150%
    ※月60時間を超える時間外労働については通常の賃金×175%
    休日労働かつ深夜労働 通常の賃金×160%

    ※休日労働となる日については、時間外労働の規定は適用されませんので、1日8時間、週40時間を超えて働いたとしても、125%の割増率は重ねて適用されず、通常の賃金×135%(深夜労働は160%)となります。

  3. (3)会社との交渉

    証拠収集と未払給与額の計算が済んだら、会社に連絡して未払給与の支払い交渉を行いましょう。

    会社に未払給与の支払義務を認めさせるには、労働時間に関する証拠を示し、法的な根拠に基づいて請求の理由を説明することが大切です。弁護士を代理人として交渉に臨むと、スムーズに未払給与が支払われる可能性が高まります。

  4. (4)労働審判・訴訟

    会社との交渉がまとまらない場合には、法的手続きを通じて未払給与の支払いを請求することになります。

    未払給与の請求に関して利用し得る主な法的手続きは、「労働審判」と「訴訟」です。

    ① 労働審判
    裁判官1名と労働審判員2名で構成される労働審判委員会が、非公開の手続きにより、調停または労働審判によって解決を図ります。
    審理が原則として3回以内で終了するため、訴訟よりもすばやく解決する可能性が高いです。しかし、労働審判に対して異議が申し立てられると、自動的に訴訟へ移行します。

    ② 訴訟
    公開法廷で行われる紛争解決手続きです。未払給与請求権の存在を立証できれば、裁判所が会社に対して未払給与の支払いを命ずる判決を言い渡します。

    労働審判や訴訟の手続きやルールは複雑であるため、適切に対応するには弁護士のサポートが必要不可欠です。
    法的手続きを見据えた対応を行うため、未払給与の請求はお早めに弁護士へご相談ください。

    弁護士に依頼するメリットについて、詳しくはこちらで解説しています。

    請求額が少ない場合の対処法
    なお、請求する金額が少なくて弁護士に依頼すると費用の方が高くなってしまう、という場合もあるでしょう。
    そういった場合には、支払督促や少額訴訟、民事調停といった手段も選択肢となります。

    ①支払督促
    相手に対してお金などを支払ってほしい場合に、裁判所書記官にその旨申し立てる手続きです。
    書記官が「請求に根拠がある」と認めれば、相手に対して支払督促を送ります。
    法的手続きのひとつではありますが、書記官に審査する書類を送るだけ、手数料は訴訟の半額というメリットがあります。
    しかしながら、相手がこれに対し異議を申し立てれば、訴訟手続きに移ることになるというデメリットもあります。

    ②少額訴訟
    相手に対して60万円以下の金銭の請求をしたい時に行うことができる手続きです。
    原則1回だけ、裁判官が審理をし、判決を下します。判決に不服があれば異議を申し立てることもできます。

    ③民事調停
    裁判官と調停委員が両者の間に入って話し合いを行う手続きです。
    3か月くらいの間に2回から3回、解決に向けた話し合いを行います。
    調停で解決できなかった場合には、再度当事者で話し合いを行う、裁判を起こすなどの方法を採ります。

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5、会社が倒産した場合には「未払賃金立替払制度」の利用を

会社が倒産して未払給与が回収できなくなった場合には、「未払賃金立替払制度」の申請を検討しましょう。

未払賃金立替払制度とは
未払賃金立替払制度とは、倒産状態となった会社の労働者を保護するため、未払給与の一部を国が補てんする制度です。
こちらのコラムで未払賃金立替払制度について詳しく解説していますので、利用を考えている方はぜひご覧ください。

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6、まとめ

会社の経営状態が悪かったとしても、給与を全額支払わないことは違法です。
給与の未払いが発生している場合は、弁護士に相談しましょう。

未払給与を最大限回収するためには、時効や未払賃金立替払制度などを含めて、法制度を正しく理解することが大切です。そのためには、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所は、給与未払い(給料未払い)に関する労働者のご相談を随時受け付けております。未払給与を回収したい労働者の方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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