新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、倒産する会社が増加しています。労働者に対する賃金が未払いのまま倒産する会社も少なくありません。
このように会社が賃金を未払いのまま倒産してしまったときに、労働者が利用できる制度が、国の「未払賃金立替払制度」です。一定の要件を満たすと、国が倒産した会社に代わり、未払いとなっている給与や退職金の一部を支払ってくれます。
本コラムでは未払賃金立替払制度をテーマに、制度を利用できる要件や申請に必要な手続きなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
会社の倒産や事業停止にともない、給与や退職金などの賃金が未払いのまま退職を余儀なくされると、労働者は会社から賃金を受け取れずに困ってしまいます。
このようなとき、退職した労働者やその家族の生活の安定を図るセーフティーネットとしての役割を担っているのが「未払賃金立替払制度」です。
この制度は、「賃金の支払の確保等に関する法律」にもとづき、未払賃金の一定範囲について、独立行政法人労働者健康安全機構(以下、機構)が事業主の代わりに支払うというものです。機構は立替払いを実施した後、事業主などに弁済を請求します。
制度が適用されるためには労働者側、会社側双方に一定の要件があり、対象となる賃金の種類や期間、金額などにも制限があります。
次章から確認していきましょう。
退職した方が制度を利用するためには、次の要件を満たす必要があります。
労働者とは、会社と雇用関係にあり、労働の対価として賃金の支払いを受けていた人のことをいいます。正社員だけでなく、パートやアルバイトも含まれます。
事業主の同居の親族は、ほかの従業員と同じように働いていたとしても、原則として制度の利用は認められません。
倒産の日とは、以下の日のことをいいます。
また退職後6か月以内に、裁判所への申立てや労基署への認定申請がなかった場合は、制度が適用されません。
制度を利用できる会社側の条件として、労災保険の適用事業場として1年以上の事業活動を行っており、かつ以下のいずれかに該当することが必要です。
制度の対象となる法律上の倒産には、次のようなものがあります。
法律上の倒産の場合、会社が法律にもとづき倒産の手続きをしていることから、未払賃金立替払金の手続きを「証明者」が行ってくれることがあります。
証明者とは、裁判所から指名されて破産手続などを行う弁護士のことです。
倒産の区分に応じて、破産管財人(破産)、清算人(特別清算)、再生債務者(民事再生)、管財人(会社更生)となりますが、いずれも役割は同じです。
不明な点があれば証明者に聞くとよいでしょう。
中小企業や個人経営の事業が破たんしたときは、法的手続をとらずに店舗や工場が閉鎖される場合や、経営者と突然連絡が取れなくなる場合などがあります。
そのようなケースでは労基署に申請して、「事実上の倒産である」ということを認定してもらいます。
労基署は事業の状況の調査を行い、以下の点について認定します。
制度の利用にあたり、具体的にどのような流れで手続きを進めるのか見ていきましょう。
まず、どのくらいの給与や退職金が未払いとなっているか、これまでの給与明細書などで確認します。
金額や計算根拠が不明なときには、会社の労務担当者や破産管財人などに確認しましょう。
法律上の倒産をした場合
証明者または裁判所に申請し、「証明書」の交付を受けます。
事実上の倒産をした場合
まずは事実上の倒産状態にある認定のために、労基署へ「認定申請書」を提出し、「認定通知書」の交付を受けてください。その後、「確認申請書」を提出し、「確認通知書」の交付を受けたうえで次の手続きを進めましょう。
請求書に請求年月日や氏名、振込口座番号などの必要事項を記入します。
立替払金は、税法上は退職所得の扱いになるので、請求書下欄の「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書」にも記入しましょう。
請求書は、前項で紹介した「証明書」または「確認通知書」と一体となっているので、切り離さないで機構に提出します。
請求書が提出されたら、機構は労働者名簿や賃金台帳などの資料を元に審査を行います。破産管財人などに対する詳しい資料の照会や、元従業員に対するヒアリングが行われることもあります。
支払いが決定すれば、請求者に対して通知され、指定された口座に立替払金が振り込まれます。
制度を利用する際には、いくつか気を付けておきたい点があります。
立替払いの対象となる未払いの賃金とは、退職日の6か月前の日から立替払請求の日の前日までに支払期日が到来している「定期賃金」と「退職金」です。
ボーナスなどの臨時の賃金や解雇予告手当、年末調整の還付金などは含まれません。
また未払い賃金の総額が2万円未満の場合は制度の対象外です。
立替払いされる額は、未払い賃金の全額ではなく、未払い賃金の総額の80%です。
ただし退職日の年齢に応じて、以下の上限が設けられています。
例:未払い賃金の総額が250万円の場合
たとえば、未払い賃金の総額が250万円であったときは次のようになります。
立替払の請求には期限があります。
法律上の倒産をした場合
法律上の倒産では、破産手続開始などの決定日または命令日の翌日から2年以内に請求しなくてはなりません。
事実上の倒産をした場合
事実上の倒産では、労基署から倒産の認定を受けた日の翌日から2年以内に請求しなくてはなりません。
未払い賃金の存在や金額を証明するためには、給与明細書やタイムカード、就業規則などの証拠が必要です。
集めた証拠が有効であるかどうか自分で判断するのが難しいときには弁護士に相談することをおすすめします。
未払いの額や退職日などを偽って申請する、会社が加担して虚偽の報告・証明を行うなどした場合、不正に受給した者や不正に加担した者は、刑法246条1項の詐欺罪に問われる可能性があります。
また、立替払金の返還だけでなく、加えて同額の納付(いわゆる倍返し)も求められます。
会社が賃金を未払いのまま倒産してしまっても、立替払制度により一定額の支払いを受けることができます。ただし請求には期限がありますので、速やかな行動に移すのがよいでしょう。
自分が制度の対象となるのか分からない、賃金が未払いで困っているなどの場合は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
労働問題の解決実績が豊富な弁護士が、早期解決に向けて全力でサポートします。
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非正規雇用で働く方が増えている中、正社員と非正規社員の待遇格差が社会問題となっています。
正社員と非正規社員では雇用形態が違うとはいえ、非正規社員の中には、実質的には正社員と同じような働きをしている方もいらっしゃるのが実情です。
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「あなたの会社に毎晩遅くまで残業している労働者はいませんか?」
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わが国のサラリーマンの間には、依然として長時間労働こそが美徳という意識が根付いていますが、政府主導で働き方改革が推し進められる中では、長時間労働の削減は急務となっています。
もし、あなたが長時間労働を押し付けられて苦しんでいるのなら、専門機関や専門家に相談し、適切な方法で解決するべきでしょう。
長時間労働の相談を受け付けてくれる窓口や、相談前に必要な準備などについて紹介していきます。
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