就職や転職をしてそれほど年月が経っていない時点で妊娠が分かった場合、産休や育休を取得できるのか気になる方が多いのではないでしょうか?
産休については勤続年数にかかわらず取得できますが、育休は入社1年未満だと取得できない場合があります。
本コラムでは「育休」の定義を確認したうえで、入社1年未満だと取得できないケース、取得できない場合の取り扱いについて解説します。
そもそも育児休業(育休)とは何かを確認したうえで、入社1年未満だと育休を取得できないケースについて解説します。
時系列からすると育休の前に「産休」があるので、まずは産休の意味を解説します。
産休とは、女性労働者が労働基準法第65条にもとづき取得できる、産前6週間・産後8週間の休業のことです。勤続年数は関係ないので、入社1年未満でも取得できます。
なお、令和4年10月施行のいわゆる「男性版産休」は育休の一種なので、ここでいう産休ではありません。
育児休業(育休)とは、1歳未満の子どもを養育する労働者が会社に「申し出ることにより」、子どもが1歳になるまでの期間(最長で2歳まで)、取得できる休業のことです(育児介護休業法第5条など)。女性だけでなく、男性も取得できます。
なお、父母が一緒に育休を取る場合には、その期間は1歳2か月までと定められています。
一般的には、産休が終わった日の翌日から育休に入るケースが多いでしょう。
産休および育休中は、事業主が申出をすることによって、健康保険料(40歳以上は介護保険料も含む)と厚生年金保険料の支払いが免除されます。
社会保険料が免除されても、病院を受診した際には健康保険証が使えますし、将来の厚生年金の受給についても納付期間として扱われます。
期間の定めのない雇用契約(無期雇用)の労働者から育休取得の申し出があった場合は、会社は原則として拒むことはできませんので、入社から1年未満であっても育休を取得できます。
ただし、入社1年未満の労働者を育休の対象から除外する内容の労使協定が締結されている場合は、会社は育休の取得を拒むことができます(育児介護休業法第6条1項)。
したがって、正社員など期間の定めのない雇用契約の場合は、1年未満であっても原則として育休を取得することができます。
例外的に、1年未満の場合に育休の対象から除外する旨の労使協定がある場合にのみ、会社が拒否すると育休を取得できません。
一方で、期間の定めのある雇用契約(有期雇用)の場合には、以下の場合に育休を取得できます。
したがって、原則として入社1年未満の場合には育休を取得することはできません。
よって、子どもが1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない場合については、入社後1年未満であっても原則として育休を取得でき、労使協定があって会社が拒否した場合にのみ育休の取得ができません。
期間の定めがない雇用契約で入社1年以上が経っていれば、原則として労使協定の有無にかかわらず育休を取得できます。
では入社1年以上か1年未満かは、どこの時点を基準に判断するのでしょうか?
また1年未満だったために育休を取得できない場合は、どのように扱われるのでしょうか?
以下のケースで確認してみましょう。
上記のケースでは、産休終了直後の令和4年3月14日から育休を取得したいと考えるのであれば、育休の申出期限は育休開始日の1か月前の令和4年2月14日です。
この時点では入社から10か月と14日目なので、入社1年未満に該当します。
なお、会社が許せば、申出からすぐに育休を取ることも可能です。
入社1年未満であることを理由に育休が取得できなくても、入社1年以上になった時点で育休の申し出をすれば、その1か月後から原則として子どもの1歳の誕生日前日まで育休を取得することが可能です。
ただしこの場合、産休が終わってから育休の開始までに空白期間ができてしまいます。
産休後にすぐ職場復帰して働けるのなら問題ないかもしれませんが、ご自身の体調や子どもの預け先などさまざまな面から難しい方も多いでしょう。
その場合は、
自分が産休・育休制度の対象になっているかは仕事をするうえで重要なポイントですが、出産や育児に関する金銭的な援助が国の制度として確立されているかも、気になるポイントでしょう。
本章では入社1年未満でも支給されるお金について、確認しておきましょう。
「出産育児一時金」は、出産した場合に受け取れる一時金のことです。
出産は病気やケガではないため健康保険の適用外ですが、出産にともなう費用負担を軽減する目的で、加入している健康保険から支給されます。
出産のために会社を休む場合はノーワークノーペイの原則により、就業規則等の定めがない限り、給与が支給されません。すると無収入になってしまうため、産休中の所得を補償する目的で健康保険から支給されるのが「出産手当金」です。
1歳未満(最長2歳)の子どもを養育するために育休を取得した労働者に対して、雇用保険から支給されるのが育児休業給付金です。
その他の要件は以下のとおりです。
令和4年10月からの産後パパ育休の制度スタートに伴い、新たにできた給付金制度です。
そもそも産後パパ育休とは、産後8週間以内に、4週間の休みを、2回まで分けて取得できる制度です。
例えば、2週間の休みを2回、4週間まとめて、といったお休みを取ることができます。通常の育休とは違うものと考えましょう。
この制度では、この期間中は最大10日働きつつ、子どもの育児を行うことができます。まとめて休むことできない方向けの育休です。
生まれた日から8週間までの育休中は育児に専念するという場合には、通常の育休を申請しましょう。
出生時育児休業給付金は子どもが生まれた日から8週間を過ぎる日の翌日までの間に、4週間以内の期間で産後パパ育休を取った人に支給されます。
なお、受給には、そのほかいろいろな条件があります。
育休の取得を申し出たものの会社から拒否された場合はどこに相談すればよいのでしょうか?
まずは会社の相談窓口に相談しましょう。特に相談窓口がない場合でも、人事部や総務課など社会保険の手続きや労務制度の運用などを行う部署に相談できます。
産休・育休の取得については、まずは直属の上司に相談する方が多いかもしれませんが、上司が必ずしも育休や会社の制度に詳しいとは限りません。
実務を行う部署で確認したうえで該当部署から上司に正しい情報を伝えてもらうことで、スムーズに育休を取得できる可能性があります。
都道府県労働局や労働基準監督署内に設置されているのが「総合労働相談コーナー」です。労働基準監督署が労働基準法令違反の相談を対象としているのに対し、総合労働相談コーナーではあらゆる分野の労働問題を相談できます。
出産や育休に関するハラスメントなどについては、都道府県労働局雇用環境・均等部への相談をすすめられる場合もありますが、適切な相談先の紹介も含め、まずは総合労働相談コーナーへ相談するのがよいでしょう。
ただし、総合労働相談コーナーでは一般的な解決法の提案や基本的な制度の仕組みなどを教えてくれますが、会社との交渉など具体的な問題解決に向けた活動はしてくれません。
育休を取得できる条件を満たしているのに会社が拒否する場合などは、弁護士への相談も検討しましょう。
弁護士であれば単なるアドバイスにとどまらず、法律の知識をもとに会社に対して育休を認めさせる交渉ができます。
育休の申し出をしたら解雇された、パートへの転換を要求されたなど不利益な取り扱いを受けた場合も、弁護士なら会社の違法性を指摘して是正を求める、訴訟手続きを進めるなどして対抗できます。
具体的な問題解決を望む場合は弁護士への相談が最善です。
入社1年未満でも、労使協定で除外されていない場合には原則として育休を取得できます。また入社1年以上か1年未満かは育休の申し出時点で判断されるため、妊娠が分かった時点では入社1年未満であっても、その後に育休を取得できるケースは少なくありません。
育休 の申し出により不利益な取り扱いを受けたなどのケースは、弁護士に相談してみましょう。
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