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退職時の有給消化は可能! 円満退職の7ステップでトラブル回避

2025年09月11日
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退職時の有給消化は可能! 円満退職の7ステップでトラブル回避

有給休暇は、退職する際に、残っている分すべてを消化することができます。会社の「有給消化の拒否」「有給分の賃金や残業代が支払われない」といった行為は違法の可能性があります。

厚生労働省が公表している「就労条件総合調査の概況」によると、令和5年において、労働者1人に付与された有給休暇の平均日数は16.9日、実際に取得した有給休暇の平均日数は11.0日でした。これは昭和59年以降で最高となっています。

有休を消化しつつ円満退職するためのステップを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、退職時に有給休暇は消化できる!

労働者が退職するときは、残っている有給休暇を消化することができます。
正当な理由もなく会社が有給消化を拒否することは違法です。

  1. (1)有給消化の拒否は違法! 退職直前では時季変更権も行使できない

    年次有給休暇は、労働基準法に基づいて労働者に付与される有給の休暇です。
    労働者は原則として、自由なタイミングで有給休暇を取得できます(労働基準法第39条第5項本文)。

    例外的に、使用者が有給休暇の取得時季を変更できる「時季変更権」を行使できる場合もありますが、取得自体を拒否することは認められません

    時季変更権とは?
    使用者(会社側・雇用主の事)が、従業員の年次有給休暇取得のタイミングを、別の時季に変更できる権利のことです。
    ただし、時季変更権は、「事業の正常な運営を妨げる場合」のみに限ります

    たとえば、従業員が有給休暇を希望したタイミングで、その従業員にしかできない仕事があり、代替人員を確保するのも困難で、事業に支障をきたす場合などに、認められる場合があります。

    また、退職直前では有給休暇の取得時季の変更が難しいため、時季変更権の行使は認められにくいと考えられます。

    したがって、間もなく退職しようとする労働者は、退職前に有給休暇をすべて消化することができます
    有給消化によって、働かなくても賃金をもらえる期間ができることは、労働者にとって大きなメリットと言えるでしょう。

  2. (2)雇用形態別、付与される有給休暇の日数

    有給休暇は、正社員などのフルタイム労働者だけでなく、契約社員やパート・アルバイト、派遣労働者などにも継続勤務期間と所定労働日数に応じて付与されます。

    具体的な有休日数について、一覧表で見てみましょう。

    フルタイム労働者(正社員など)に付与される有給休暇の日数

    継続勤務期間 有給休暇の日数
    6か月 10日
    1年6か月 11日
    2年6か月 12日
    3年6か月 14日
    4年6か月 16日
    5年6か月 18日
    6年6か月以上 20日

    なお、フルタイム労働者は正社員に限りません
    以下のいずれかに該当する労働者です。

    • ① 1週間の所定労働日数が5日以上、かつ一定以上の所定労働時間
    • ② 1年間の所定労働日数が217日以上
    • ③ 1週間の所定労働時間が30時間以上

    フルタイム労働者でない労働者の場合に付与される有給休暇の日数
    (契約社員、パートタイム、アルバイトなど)

    所定労働日数 1週間 4日 3日 2日 1日
    1年間 169日以上
    216日以下
    121日以上
    168日以下
    73日以上
    120日以下
    48日以上
    72日以下
    継続勤務期間 6か月 7日 5日 3日 1日
    1年6か月 8日 6日 4日 2日
    2年6か月 9日 6日 4日 2日
    3年6か月 10日 8日 5日 2日
    4年6か月 12日 9日 6日 3日
    5年6か月 13日 10日 6日 3日
    6年6か月以上 15日 11日 7日 3日

    正社員でない人が退職する際にも、有給消化ができることを覚えておきましょう。

  3. (3)退職代行サービスを使っても、有給消化はできる?

    退職代行サービスを利用して、会社に有給消化の意思を伝えることは可能です。
    会社が応じれば、有給消化をして退職することができるでしょう。

    ただし、会社が有給消化を拒否する、有給の賃金を支払わないなどの場合、退職代行業者に交渉を依頼すると非弁行為という違法行為にあたる可能性があります。

    有給消化に関する会社との交渉は、弁護士に依頼することをおすすめします。

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2、円満退職の7STEP、有給消化~退職する際の流れ

会社とのトラブルを避け、円満に有給消化をして退社したい場合は、以下のステップにしたがって対応を進めましょう。

  1. (1)就業規則の確認

    まずは会社の就業規則を確認して、有給休暇に関するルールや手続きを確認しましょう。
    会社の就業規則は、労働基準法上のルールと照らし合わせることが大切です。

    就業規則の内容が、労働基準法に比べて労働者に不利である場合は、労働基準法のルールが優先して適用されます

    たとえば、労働基準法で6か月以上勤務した労働者に10日の有給休暇を付与することが義務付けられているにもかかわらず、就業規則で「6か月勤務後に5日のみ有給を与える」と定められていた場合、その部分は無効となります。

  2. (2)有給日数の把握

    有給日数は、早めに会社の勤怠システムで確認しておきましょう。

    また、就業規則と労働基準法のルールを読み合わせると、適切な日数の有給休暇が付与されているかが分かります。そこからすでに取得した日数を差し引くと、退職前に取得できる有給休暇の日数を計算できます。

    なお、労働基準法では義務付けていませんが、会社が独自に規定を設けて、有給休暇の買い取りを行っている場合もあります。
    消化できなかった分は給与に換算してもらえないか確認してみるとよいでしょう。

  3. (3)有給消化スケジュールを決定

    有給消化の時期は、原則として労働者が自由に決められるため、自分である程度のスケジュールの目途を立てておきましょう。

    引継ぎ先との連携や転職活動の状況などを考慮しつつ、無理なく有給消化できるスケジュールにしておくことが、円満退職につながります

    業務の引継ぎを済ませたうえで最終出社日を迎え、有給消化に入るのが一般的です。

  4. (4)退職・有給消化を申請

    有給消化のスケジュールや退職日などを決めたら、会社に対して退職する旨と有給消化をする旨を伝えましょう。

    会社からは引き止められたり、退職や有給消化の時期をずらすよう求められたりする可能性があります。
    会社の求めに応じるかどうかは、自分の都合や職場の人間関係などを総合的に考えて判断しましょう。

    会社にしつこく引き止められて困っているときは、弁護士に相談することをおすすめします。

  5. (5)業務引継ぎ

    有給消化に入る前に、業務の引継ぎを済ませておくことが望ましいです。

    きちんと引継ぎを行えば、職場の人間関係を良好に保ったまま退職することができるでしょう。対応事項を早い段階から整理しておき、計画的に引継ぎを行いましょう。

    ただし、引継ぎに関して会社側の無理な要求に応じる必要はありません。会社から不当な要求を受けたら、弁護士のサポートを受けながら毅然と拒否しましょう。

  6. (6)有給消化~最終出社

    業務の引継ぎが済んだら有給消化に入り、最終出社日を迎えます。
    最終出社日には、関わりのあった上司や同僚、部下などに挨拶をしましょう。
    きちんとした形で別れと感謝を伝えれば、良好な人間関係を保つことができます。

  7. (7)退職金、残業代等の支払確認

    退職金や未払いの賃金は、退職後しばらくしてから振り込まれるケースが多いです。
    満額支払われているかどうかをしっかり確認しましょう。

    入金日を数日過ぎても振り込みが確認できない場合や、振り込まれた額が不当に少ない場合は弁護士への相談をおすすめします。

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3、会社に有給休暇を拒否されたときの相談先

会社が退職前の有給消化を拒否することは、労働基準法違反にあたります。
もし不当に有給休暇を拒否されたら、以下の窓口などへ相談しましょう。

  • 社内の人事部や内部通報窓口
  • 総合労働相談コーナー(労働基準監督署、都道府県労働局)
  • 弁護士

特に弁護士には、有給消化に関するトラブルへの対応を全面的に任せられます。
退職前後の会社とのトラブルに備えたい場合や、すでにトラブルが発生している場合には、弁護士へご相談ください。

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4、退職時に起こり得るトラブルと対処方法

会社を退職する際に発生することが多いトラブルの内容と、その対処方法を解説します。
いずれも弁護士の退職サポートを受ければ、適切な形で解決できる可能性が高まります。

  1. (1)有給消化中に呼び出された

    有給消化中であるにもかかわらず、出勤するよう不当に強要された場合、労働基準法に抵触する可能性があります。

    有給消化中の労働者は、会社側の出勤要求に応じる義務を負いません
    有給休暇が不当に搾取されないように、毅然と拒否することをおすすめします

    会社がしつこく出勤を求めてくる場合は、弁護士に相談しましょう。
    弁護士は労働基準法の根拠を示しながら、会社の不当な要求を拒否します。

  2. (2)退職日までに有給を消化しきれない

    有給休暇の日数がたくさん残っていて、予定している退職日までに有給休暇を消化しきれないこともあります。

    退職の時点で有給休暇が残っていても、会社が任意に応じる場合を除き、その買い取りを請求することはできません
    有給休暇をすべて消化してから退職したいなら、退職日を後ろにずらすことを会社と交渉してみましょう。

    転職先への入社日などとの関係で、退職日を後ろにずらすことが難しい場合は、残念ながら有給を諦めざるを得ないケースもあるでしょう。
    労働者が有給を消化しきれない場合でも、会社が労働基準法に違反することはありません

  3. (3)退職日を引き延ばされる

    労働者が自分で決めた退職日を会社に伝えたにもかかわらず、会社が勝手に退職日を後ろ倒しにすることは原則として違法です

    正社員などの無期雇用労働者であれば、2週間以上前に会社へ申し入れれば退職できます。内容証明郵便などで退職届を会社に送付しましょう。
    会社に届いた日から2週間が経過すると、その時点で退職したことになります

    会社から退職日の引き延ばしを受けて困っているときは、弁護士に相談しましょう。
    弁護士は会社とのやり取りを代行し、適切に退職日や退職条件などを調整します。

  4. (4)有給休暇の賃金や残業代が支払われない

    退職前後の時期において、有給消化中の賃金や、未払いとなっていた残業代が支払われないトラブルも散見されます。

    賃金未払いなどの問題を解決するためには、弁護士のサポートが役立ちます。
    弁護士は会社との交渉を代行するほか、会社が支払いを拒否し続ける場合は裁判手続き(労働審判や訴訟など)も行います。

    退職に関するトラブルに幅広く対応し、適切な解決へと導くことができるのが、弁護士です。退職や有給消化に関するトラブルは、早い段階で弁護士にご相談ください。

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5、まとめ

有給消化をしてから退職する場合は、早い段階から綿密なスケジューリングをすることが大切です。円満退職に向けて、余裕を持って行動を始めましょう。

ただし、退職に伴い、不当な引き止めや有給・残業代の未払いなど、会社とのトラブルが発生するケースもあります。退職トラブルが発生したら弁護士に相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所は、退職サポート未払い残業代請求などのご相談を随時受け付けております。まずはお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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