会社が労働者を解雇するためには、厳格な要件を満たさなければなりません。そのため、正当な理由のない解雇については、不当解雇にあたる可能性があります。
不当解雇をされた場合には、解雇無効を主張して職場への復帰を求めることができるだけではなく、事案によっては慰謝料請求までできるケースもあります。
今回は、不当解雇を理由とした慰謝料請求が認められる可能性があるケースや、会社に対する慰謝料請求を行う場合の手順などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
解雇には、大きく分けて「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」の3種類があります。
以下では、不当解雇に関する基本事項を説明します。
普通解雇とは、民法627条1項本文に基づく使用者からの雇用契約の解約の申入れで、民法の条文上は特に要件は定められておりません。
しかし、判例により「客観的な理由」及び「社会通念上相当」の要件が必要とされており、現在では労働契約法16条に判例法理が明文化されています。
現実には、勤務成績・態度の不良等を理由としてなされることが多いです。
懲戒解雇とは、労働者に企業秩序違反などがあった場合に、使用者が課す一種の制裁罰としてなされる解雇方法です。
たとえば、会社のお金を横領したなどの犯罪行為をした場合は、懲戒解雇がなされます。
退職金が支給されなかったり、減額されたりする可能性があるだけでなく、懲戒解雇の事実を隠して転職すると、後に発覚した場合に経歴詐称として再び懲戒解雇される可能性もあります。
整理解雇とは、会社の経営上の都合によってなされる解雇方法です。
普通解雇と懲戒解雇は、労働者の側に解雇される理由がありますが、整理解雇は会社側の一方的な都合によってなされるという違いがあります。
不当解雇とは、解雇に必要となる要件を満たさずに行われた解雇のことです。
「解雇には厳格な要件が必要」とはいっても、不当解雇にあたるケースとはどのようなものでしょうか。
普通解雇であれば、前述のように、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」という要件が必要となるため、これらの要件を満たさない解雇については、不当解雇になります。
たとえば、下記のような場合には、「客観的に合理的な理由」を欠き、不当解雇になる可能性があります。
また、解雇は、労働者にとって重大な不利益を与えるものです。
そのため、客観的に合理的な理由が存在していたとしても、解雇という処分が重すぎると判断される場合には、「社会通念上の相当性」が十分でないとして、不当解雇になる可能性があります。
懲戒解雇の場合には、以下の点が要件とされています。
整理解雇の場合には、以下の点が要件とされています。
会社から不当解雇をされた場合には、精神的に多大な苦痛を被ることになります。
そのため、解雇の撤回だけでなく、慰謝料の請求もしたいと考える方もいるでしょう。
しかし、不当解雇に該当する場合であっても、必ず慰謝料請求が認められるというわけではありません。
解雇された労働者が被る精神的な苦痛は、
解雇期間中の賃金が支払われることによって慰藉されるのが原則で、これによってもなお償えない特段の精神的な苦痛を生じた場合にのみ認められる
というのが確定した判例です。
前述したとおり、不当解雇だからといって必ずしも慰謝料の請求が認められるわけではありません。しかし、以下のようなケースについては、不当解雇を理由とする慰謝料請求が認められる可能性があります。
判例に現れた事案としては、下記のような場合に解雇されることは不当解雇にあたり、かつ、特別な精神的苦痛をもたらしたことを理由に慰謝料請求ができる可能性があります。
判例に現れた事例としては、形式上の解雇理由が整理解雇など別の理由であったとしても、実質的には外部機関に相談したことを理由に解雇がなされたといえる場合には、不当解雇にあたり、かつ、慰謝料を請求することができる可能性があります。
判例に現れた事例としては、下記のような経緯を経て解雇されることは不当解雇にあたり、かつ、慰謝料請求ができる可能性があります。
不当解雇をされたときは、慰謝料以外にも以下のお金を請求することができる場合があります。
労働者が解雇される場合、解雇の30日以上前に会社から予告をされることとなっています。しかし、30日以上前に解雇予告をされなかった場合には、不足する日数分の平均賃金を「解雇予告手当」として請求することが可能です。
サービス残業を強いられていた場合には、未払いの残業代があることもあるでしょう。
未払いの残業代がある場合には、不当解雇の主張と併せて、未払いの残業代を請求することが可能です。
不当解雇は解雇自体が無効となるため、解雇された労働者は職場に復帰することができるだけではなく、会社の都合によって働くことができない状態になったことから、その間に業務を行っていなかったとしても、賃金を請求することができます。
解雇が有効であった場合には、退職金を請求することが可能です。
不当解雇の主張とは両立しませんが、解雇を受け入れる場合には、退職金規程に従って計算をした退職金を請求します。
慰謝料請求をする場合には、証拠を収集することが必要不可欠です。
前述のとおり、不当解雇が認められたとしても、慰謝料請求が必ず認められるわけではありません。
しかし、実際に慰謝料請求を行う場合には、不当解雇を立証する証拠に加えて、不当解雇に付随して違法な行為があることを立証する証拠が必要です。
慰謝料請求に必要となる証拠の例としては、以下のようなものが挙げられます。
このうち、人事評価書・勤務成績表などは、通常は会社の役職者・管理者にのみ開示されている情報であり、一般の労働者には入手が困難な資料です。
ですが、会社側は不利になる証拠の提出を拒んだり、無視するケースもあります。
そのような場合には、弁護士に相談をしましょう。
弁護士であれば、開示請求することによって、必要となる証拠を入手できることが可能です。
会社に対して慰謝料請求をする場合には、以下のような手順で行います。
不当解雇を理由とする慰謝料請求を行う場合には、まず、解雇の無効と慰謝料請求の主張を書面にまとめて、内容証明郵便で会社に送付します。
口頭で請求していくこともできますが、会社に対して、不当解雇の主張を行った証拠を残しておくためにも、書面によって行うことがおすすめです。
内容証明郵便によって書面を送付した後は、会社との話し合いによって解雇の無効、および慰謝料の支払いについて交渉を行っていきます。
会社が不当解雇であったことを認めるようであれば、職場への復帰時期、未払い賃金や慰謝料の金額・支払い方法などについて取り決めをします。
個人でも会社との交渉を行うことができますが、個人による対応では会社がまともに取り合ってくれないケースもありますので、弁護士に依頼をして交渉を進めていくようにしましょう。
会社が話し合いに応じない場合には、労働審判や訴訟といった法的手段によって解決を図ります。
裁判手続きは、非常に専門的かつ複雑な手続きです。専門的な知識を持っていない一般の労働者の方では適切に進めていくことが難しいといえるため、弁護士のサポートが不可欠といえます。
不当解雇でお悩みの方は、弁護士への相談をおすすめします。
ここからは、不当解雇のことを相談するメリットを3つご紹介します。
「解雇に納得がいかない」という主観的な理由では、不当解雇を争うことはできません。
不当解雇にあたるかどうかは、解雇要件を満たしているかどうかという法的判断が必要になりますので、解雇の有効性を正確に判断するためには、法律の専門家である弁護士のアドバイスを受けるべきといえます。
解雇に納得ができないという場合には、まずは弁護士に相談をして、不当解雇であるかどうかを判断してもらうとよいでしょう。
弁護士に依頼をすれば、弁護士が労働者の代理人として会社と交渉することができるため、労働者の方が自ら会社と交渉をする必要はなくなります。
不当解雇によって不快な思いをさせられた会社と話し合いをしなければならないのは、精神的にも大きな負担となりますが、弁護士にすべて任せることができれば、そのような負担は大幅に軽減されるでしょう。
会社側が話し合いに応じない場合には、解雇無効を争って訴訟(労働裁判)を起こす必要があります。
訴訟では、労働者の側で解雇が無効であること、未払いの残業代があること、会社の不法行為によって精神的苦痛を被ったことなどを主張立証していかなければなりません。
具体的な事案に応じて必要となる証拠も変わってきますので、適切な訴訟対応をするためには弁護士のサポートが不可欠です。
弁護士に依頼をすれば、複雑な訴訟手続きもすべて弁護士に任せることができますので、裁判による労働者の正当な権利の実現が可能となります。
不当解雇が認められたとしても、慰謝料請求が認められるかどうかはケース・バイ・ケースです。また、実際に慰謝料請求と行うときも、不当解雇や違法性などを証明する証拠が必要となります。
慰謝料請求ができるかどうか、慰謝料の他に請求することができるお金にはどのようなものがあるのかを判断するためにも、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。
思い悩む気持ちに寄り添いながら、出来るかぎりのサポートをいたします。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
残業代請求、不当解雇・退職勧奨、同一労働同一賃金、退職サポート、労働災害、労働条件・ハラスメントに関するトラブルなど、幅広く労働者のお悩み解決をサポートします。ぜひお気軽に お問い合わせください。
1人で悩むより、弁護士に相談を
1人で悩むより、弁護士に相談を