解雇は労働者の生活の糧を奪う行為となり会社には慎重な判断が求められます。
不当解雇の疑いがあるのなら、労働者側はまずは適切な場所への相談が大切となり、その相談先は複数あります。
本コラムでは不当解雇の相談先7つについて、それぞれの特徴と相談するメリット・デメリット、どんな人に向いているのかを解説します。あわせて、不当解雇を争う際に必要な行動や注意点も確認しましょう。
「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」解雇は権利の濫用にあたり無効
だと述べています。
たとえば、経営者に意見したため解雇された、会社による十分な指導がないまま能力不足として解雇されたといったケースは不当解雇にあたる可能性が高いでしょう。
また、労働基準法やその他の法律で解雇が禁止・制限されている場合があり、それに違反して解雇されたケースも不当解雇にあたります。
たとえば業務災害による休業中に解雇された(労働基準法第19条)、女性が婚姻・妊娠・出産を理由に解雇された(男女雇用機会均等法第9条)、といったケースです。
このような不当解雇を受けてしまったら、どこへ相談すればよいのでしょうか。
会社内の労働組合や個人が加入できる合同労組(ユニオン)に相談すると、団体交渉を通じて不当解雇を主張し、解雇を撤回してもらえる可能性があります。
団体交渉を通じて会社を交渉に応じさせたい方に向いている相談先です。
もっとも、業務災害による休業中や産前産後中の解雇、解雇予告のない解雇など、明らかな労働基準法違反が認められる事案では会社への指導をしてくれる可能性があります。
労働基準法違反があるか分からないという方はまずは相談してみるとよいでしょう。
ハローワークは雇用保険法にもとづく基本手当(失業手当)の申請受付や求人紹介などを行う機関です。
不当解雇を直接解決する機能はないため、相談しても満足いく回答は得られない可能性が高いでしょう。
不当解雇後の失業手当について、相談したいことがある方に向いている相談先です。
各都道府県の労働委員会は、もともと労働組合と会社との間の集団的労使紛争を解決するために設置された機関ですが、労働者個人と会社との個別労働紛争のあっせんも行っています(東京都、兵庫県、福岡県を除く)。
自分だけで会社と交渉しても解決が難しいので第三者に入ってもらいたいと考えている方は相談してみるとよいでしょう。
労働局に相談すると不当解雇をはじめとする個別労働紛争について無料でアドバイスを受けられるほか、助言・指導、紛争調整委員会によるあっせんの申し出により具体的な解決に向けて動いてもらうことができます。
その点を理解したうえで、まずはあっせんなど無料の解決支援を受けたいという方は相談してみるとよいでしょう。
労働局や労働基準監督署内に設置されている総合労働相談コーナーでは、解雇をはじめとする幅広い労働問題について、専門の相談員からアドバイスを受けられます。
まずは法制度の知識や一般的なアドバイスを得たいといった方に向いている相談先です。
弁護士に相談すると、不当解雇をはじめとする法的トラブル全般について、個別具体的なアドバイスやサポートを受けられます。
ただしほかの方法と比べて費用がかかってしまうため、まずは無料相談を利用するなどの工夫が必要です。
ある程度の費用をかけてでも具体的な解決を目指したいと考えている方に向いている相談先です。
不当解雇された場合に労働者がとれる選択肢としては大きく分けて2つあります。
1つは、解雇の撤回を求めて復職を目指す選択肢です。
解雇が撤回されると解雇はなかったことになるため、もとの職場で継続して働くことができます。このとき、同時に解雇期間中の未払い賃金の請求が可能です。
解雇が不当であれば解雇日から現在まで在籍していたことになり、解雇期間中は会社側の都合により働けなかっただけなので、その間の賃金を請求できるわけです。
もう1つは、解決金を受け取って退職・転職する選択肢です。
不当解雇をするような会社にはいたくない、争った以上は会社に残るのが精神的に苦痛だと考える方も多いでしょう。
その場合は会社と和解して解決金を受け取り、退職・転職するのもひとつの打開策です。
ただし、この場合でも、まずは解雇無効による地位確認と未払い賃金を求め、最終的には解決金を受け取って退職する方向で進めるケースが多くなります。
はじめから退職を前提としていると、復職の意思がないものとして、解雇期間中の未払い賃金を受け取れないおそれが生じるからです。
不当解雇を主張して争う際の注意点を確認しましょう。
まず重要なのは解雇に同意しないことです。
後に不当解雇を争う際、会社側から「労働者が当初は解雇に同意していた」と指摘され、不当解雇の主張で不利になるおそれがあります。
退職金や離職票の請求も同意とみなされるおそれがあるので、不当解雇を争う場合はより慎重になりましょう。
解雇は口頭でも成立しますが、後に裁判などで不当解雇を争うには、いつ、どのような方法で、なぜ解雇されたのかを書面で残しておくことが大切です。
そのため会社に対して解雇通知書、解雇理由証明書を求めましょう。
労働者が解雇の理由を含む退職時の証明書を請求した場合に会社は交付する義務があり、請求を拒むことはできず、労働者は、解雇を予告されていれば、在職中でも解雇理由証明書を請求できます(労働基準法第22条)。
就業規則に記載されていない理由で解雇されたのなら不当と判断される可能性があるため、就業規則の「解雇事由」を確認しましょう。
また懲戒解雇の場合は就業規則に定めていなければ原則として解雇することはできないため、そもそも規定が存在するかの確認も必要です。
いくつもある相談先の中で、具体的な解決にもっとも期待できるのは弁護士事務所です。
弁護士への相談と聞くと敷居が高いと感じる方もいるようですが、最近は無料相談を受け付けている事務所も多く、相談した弁護士に依頼するかどうかは相談者の自由です。
弁護士への相談は以下のメリットがあります。
解雇が不当かどうかを判断するには法律や判例の知識が必要であり、一般の個人の方が見通しを立てるのは困難です。
明らかに正当な解雇であるのに会社側と争えばご自身の労力や時間が無駄に終わってしまうでしょう。まずは不当解雇にあたるか否かの検討が大切です。
弁護士であれば相談者から具体的な事情を聞き、法律や判例の知識、経験と照らして見通しを立てることができます。
労働者が個人で解雇の撤回を求めても会社は応じないケースが多いでしょう。
また弁護士以外の相談先に相談しても、具体的な支援が得られないか、支援があっても希望の結果にならないケースが少なくありません。
しかし弁護士は個人の法的トラブルを解決するために具体的に動いてくれます。
法的根拠をもとに交渉するため、会社側が裁判になることやトラブルの長期化を懸念して解雇を撤回する可能性も高められます。
不当解雇されてから現在までの未払い賃金の確実な請求・回収にも期待できます。
あわせて、サービス残業が横行していれば未払いの残業代を請求できる場合があります。
労働審判や裁判になった場合も弁護士なら対応できます。
労働審判や裁判の結果、会社側に賃金や慰謝料の支払いが命じられ、万が一、会社側が支払わなかった場合は、裁判所を通じて会社の財産を差し押さえ、金銭を強制的に回収することも可能です。
労働問題の相談先としてはいくつかの選択肢がありますが、それぞれに特徴があるため不当解雇の相談先として、個々のケースに必ずしも適しているとは限りません。
具体的な解決を目指すなら弁護士への相談がもっとも有効です。
ベリーベスト法律事務所では不当解雇のご相談を初回60分無料でお受けしており、労働問題の対応経験が豊富です。まずはお気軽にご相談ください。
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