2021年9月末に、パナソニックが勤続10年以上の従業員を対象として、1000人を超える規模の早期退職を実施しました。対象者には、30代の従業員も含まれていました。
いざご自身が30代でリストラの対象になった場合、「若手はリストラされないと思っていたのに……」「30代で転職できるかどうか不安」と感じる方も、少なからずいらっしゃるでしょう。
リストラにより退職を迫られた場合には、会社に対して法的な請求ができることがあります。労働法の正確な知識を備えたうえで、リストラを断行した会社に対して、従業員としての正当な権利を主張しましょう。
この記事では、30代の方がリストラに遭った場合の対処法を、労働法の観点から、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
30代の方にとっても、リストラはひとごとではありません。
もし会社からリストラの通告を受けた場合、会社の求めに応じてすぐに退職合意書などにサインすることは避けましょう。
退職合意書には、「会社に対して金銭的な請求をしない」「会社を訴えない」という趣旨の条項が盛り込まれるのが一般的です。
もし退職合意書にサインしてしまうと、その後会社に対して未払い残業代等を請求しても、上記の条項を根拠として、会社が支払いを拒否する可能性があります。
サインしてしまった場合でも、「真意に基づかずに退職合意書にサインさせられた」ことなどを主張して、退職合意書の無効や取り消しを争う余地は残されています。
しかし、退職合意書にサインすることで、従業員にとって難しい状況が発生してしまう事態は避けるべきです。
退職合意書にサインするとしても、それは会社から満足できる退職条件を引き出した後にしましょう。
1章でご説明した通り、30代であったとしても、その年収に能力が見合っていないと判断されれば、リストラ対象になる可能性がある時代です。
職場が外資系企業であれば、その判断はよりシビアになるでしょうし、企業の合併など職場環境の変化により、リストラ対象になってしまうこともあるでしょう。
しかし、30代の方はまだ若く、さまざまな業界を対象に転職先を探しやすい傾向にあります。
そのため、リストラ宣告をしてきた会社にこだわらずに、退職を受け入れ、別の会社へ転職することを検討するのも選択肢の1つでしょう。
ただし、リストラを受け入れて転職するのは、今の会社に対して、従業員としての権利に基づく請求を行い、十分な金銭の支払いを受けてからでも遅くはありません。
具体的には、未払い残業代と上乗せ退職金を請求できる可能性があります。
労働時間が適切にカウントされていない場合や、労働基準法のルールが正しく適用されていない場合には、未払い残業代が発生している可能性が高いです。
退職するのであれば、残業代請求の気まずさや報復などを心配する必要もありませんので、この機会に未払い残業代全額を請求しましょう。
未払い残業代を請求する際には、
が大切になります。
また、賃金の支払日から3年たってしまうと時効にかかり請求できなくなるので、このことも頭に入れておきましょう。
会社の主張する解雇理由が不当なものである場合、すなわち「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、解雇の無効を主張できます(労働契約法第16条)。
最終的には退職するつもりだとしても、ひとまず解雇の無効を主張して争うことにより、会社から上乗せ退職金を引き出せる可能性があります。
解雇通知を受けた場合には、速やかに解雇理由証明書の発行を請求して(労働基準法第22条第1項、2項)、解雇無効をどのように主張するかの戦略を立てましょう。
会社に対する未払い残業代や上乗せ退職金の請求は、弁護士への依頼をお勧めいたします。
弁護士は、なされた解雇が不当なものであるか否かを判断することができ、かつ解雇が不当であることを的確に主張することができます。
また、弁護士を通じて交渉することで、会社は労働審判や訴訟に発展するリスクを懸念し、十分な金額を支払って早期に和解しようとする可能性があります。
さらに、法的な相場観を踏まえて請求の方針を立てられる点や、会社との交渉を弁護士に一任してストレスを軽減できる点も大きなメリットです。
会社からリストラ宣告を受け、退職を決意した方は、会社に対する金銭請求につき、ぜひ弁護士へご相談ください。
ご自身は会社に残りたいと考えていても、上司や人事担当者からしつこく退職勧奨が行われることがあります。
もし無理やり退職を迫られるようなことがあれば、速やかに弁護士へご相談ください。
退職勧奨がすべて違法というわけではありませんが、やり方によっては違法となるケースもあります。
退職勧奨は、あくまでも従業員に対して任意の退職を促すものです。
これに対して、従業員の意思を抑圧する形で、無理やり退職を迫るようなやり方の退職勧奨は、違法と評価され、従業員に対する損害賠償責任を生じさせる可能性があります。
また、たとえば以下のような場合には、従業員が任意に退職勧奨を受け入れたものとは認められず、従業員側は、会社に対し、退職の意思表示の無効、すなわちいまだ従業員であることを主張できると考えられます。
不当解雇と思えるような退職勧奨を受けた場合は、会社に対して復職を求めましょう。
また、復職するまでの賃金についても、その全額を会社に対して請求することが可能です。
弁護士にご相談いただければ、解雇無効による復職や賃金の請求をスムーズに行うことができます。
会社が復職等を認めない場合にも、労働審判や訴訟などの法的手続きを通じて、従業員としての権利を決然と主張するためのサポートをいたします。
なお、ご相談いただく場合には、解雇理由通知書、解雇予告通知書、解雇通知書など解雇にまつわる各種書類や、退職を促すメールや退職勧奨面談の録音など証拠があるとスムーズです。
ですが、証拠がなくてもご相談いただけますし、弁護士であれば、法的手続きを通じて証拠を獲得することもできる場合があります。
退職勧奨を受け、納得がいかない方は、お早めに弁護士へご相談ください。
会社が倒産してしまったら次の会社を探すしかありませんが、未払いになっている賃金がある場合には、できる限り回収を図りましょう。
倒産する会社から未払いとなっている賃金を回収するには、
の2つがあります。
未払賃金立替払制度を利用すると、最大で未払賃金の8割を「独立行政法人労働者健康安全機構」に立替払いしてもらうことができます(収入額に応じた上限があります)。
未払賃金立替払制度は、労働基準監督署に申請すれば利用可能です。
未払賃金立替払制度によって穴埋めされなかった未払い賃金の残りについては、倒産手続きの中で債権を行使して回収を図ります。
会社の代理人弁護士や、裁判所から債権調査の連絡が来ますので、未払い賃金の金額を漏れなく記載して返送しましょう。
ただし、倒産手続きの中で会社財産がなくなってしまった場合には、全額が回収できない可能性もあるので注意が必要です。
30代で会社からリストラ宣告を受けても、必ずしもそれを受け入れて退職しなければならないわけではありません。
会社に残りたいのか、退職して新天地へ向かうのかによっても対応は変わりますが、いずれにしても会社に対してさまざまな請求ができることを知っておきましょう。
ベリーベスト法律事務所では、リストラに遭った労働者の方のために、会社に対する復職や未払い残業代の請求などをサポートいたします。
不当解雇に遭ってしまった方、退職合意書へのサインを迫られているという方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
当事務所では不当解雇のご相談を初回60分相談無料で受け付けております。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
残業代請求、不当解雇・退職勧奨、同一労働同一賃金、退職サポート、労働災害、労働条件・ハラスメントに関するトラブルなど、幅広く労働者のお悩み解決をサポートします。ぜひお気軽に お問い合わせください。
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