会社から突然、リストラを通告されたらどうすればいいのでしょうか。「リストラに納得できない」「不当解雇だ」と思えば、撤回を求め会社と争わなければなりません。
しかし、ひとりで会社に対抗するのは困難です。まずは、相談できる人や組織を探すべきでしょう。そんな時、相談先として多くの人が思い浮かべるのは「労働組合」ではないでしょうか。
今回は、リストラを会社に撤回してもらうために、労働組合に期待できること、労働組合を通じて会社との交渉を行うメリットなどについてベリーベスト法律事務所の弁護士が説明します。
あわせて、労働組合に加入していない方が利用できる労働組合以外の相談先や、不当解雇の概要、会社との交渉を有利にする証拠などについても見ていきましょう。
最初に、労働組合とはどんな組織なのかを整理したうえで、リストラの通知を受けて相談した場合に期待できる対応について説明します。
労働組合とは「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体」(労働組合法2条)を意味します。
労働者が複数人で集まれば、公的機関の許可や届出をすることなく自由に労働組合を結成することが可能で、正社員、契約社員、パートなど雇用形態にかかわらず加入できます。
労働組合には、同じ会社の労働者が集まりつくる「企業別組合」や、同じ業種の会社で労働組合をつくる「産業別組合」など、いくつか種類があります。
企業別組合は、その会社の賃金や労働条件の改善、産業別組合では会社の枠を超え、業種横断的に賃金や労働条件の改善を目指します。
このコラムで主に取り上げる労働組合は、企業別組合です。
会社で働いていると、未払い賃金や長時間労働といった賃金・労働条件の問題以外でも、セクハラやパワハラなどさまざまな問題に直面する可能性があります。
そんなとき、会社に改善を求めようとしても、会社と労働者では会社の立場が圧倒的に強く、労働者がひとりで会社に対抗するのは非常に難しいというのが現実です。
しかし、労働組合であれば、労働者の代表という立場で、会社側と対等に話し合うことができます。労働組合を通じ、労働者の意見を職場に反映させることが期待できるのです。
これから労働組合に加入しようとする場合、会社に問い合わせれば労働組合があるかどうか確認できます。
しかし、会社によっては労働組合がないこともあります。
その場合には、地域ごとに設けられている「合同労働組合(地域ユニオン)」に個人で加入することも可能です。
不当なリストラ通知を受けたとき、会社に撤回を求めようとしても、個人では交渉にすら応じてもらえない可能性があります。
しかし、労働組合であれば、労働者の権利として憲法28条で保障されている「団体交渉権」「争議権」によって、会社を交渉のテーブルにつかせることができます。
個人よりも大きい力で会社へ対抗できるのです。
そのほか、交渉がまとまらず訴訟になった際に、労働組合と協力関係にある弁護士を紹介してもらえたり、裁判所に付き添ってもらえたりする場合もあります。
リストラを告知されても労働組合に相談できない場合はどうすればよいのでしょうか?
会社に労働組合がない、あるいは労働組合はあっても加入していない場合の相談先をまとめました。
総合労働相談コーナーは、都道府県労働局、全国の労働基準監督署など計379カ所に設置されている相談窓口です。
あらゆる職場のトラブルに関して情報提供や個別相談を行っており、労働者、使用者にかかわらず、予約不要で無料で相談を受けることができます。
不当なリストラ告知に関して相談すれば、関連する法令や裁判例に関する情報提供のほか、状況に応じて、会社に対する指導などにつなげてもらえることも期待できます。
ただ、相談コーナー自体がリストラの撤回など、会社の対応の是正に向けて具体的な行動を起こすことはほぼありません。
労働基準監督署は、厚生労働省の出先機関で、労働基準法などの法令に会社が違反していないか監督しています。「労基」「労基署」などとも呼ばれます。
労働基準監督署では、賃金や労働時間など労働条件に関した相談のほか、仕事中のけがなど労災保険関係の相談、会社の安全衛生に関する相談などを受け付けています。相談内容に応じて会社の調査を行い、労働基準法違反などがある場合は是正勧告してもらえます。
しかし、労働基準監督署の場合、リストラに関する相談では、解雇の有効性について判断する権限がありません。労働基準監督署に相談しても調査や勧告などは期待できない点に注意が必要です。
総合労働相談コーナーや労働基準監督署では、直接、リストラ告知の撤回に動いてもらうことなどは期待できません。
しかし弁護士であれば、会社との交渉から裁判まで、すべて代理で任せることが可能です。
そもそも会社からリストラ告知を受け、それが「不当解雇」にあたるのかどうか、労働者個人ではなかなか判断がつきません。
弁護士であれば、それぞれのケースについて「不当解雇」で争えるかどうか判断し、必要なアドバイスをすることが可能です。
「解雇」とは、会社から一方的に労働契約を終了させられることを意味します。
しかし会社は、労働者を自由に解雇できるわけではありません。解雇には厳格なルールが定められています。
労働契約法16条は
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする
と定めています。
客観的に「合理的だ」と納得できる理由がなく、単に経営者の主観で行う解雇や、社会の常識に照らしても相当だと認められない解雇は、違法であるということです。
近年、物価高騰・為替変動などの影響を受け、経営難に陥った企業から解雇・雇い止めをされるケースがあります。
解雇はひとごとではない社会情勢になっており、このコラムをご覧になっている方の中にも「ある日突然、解雇されてしまった、解雇されそう」という方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
ですが、「会社の経営が苦しいから」といった理由であっても、そう簡単には解雇することはできません。
会社の経営が悪化し、経営の打開・合理化を目的とした人員削減による解雇(いわゆるリストラのことです)を整理解雇といいます。
整理解雇は、労働者に責任のない会社側の事情に基づくもので、労働者を保護する必要性が高いことから、会社側に高いハードルが課されています。
そこで、整理解雇をするためには、以下の4つの要件をすべて満たしている必要があります。
たとえば、解雇と同時に人員の新規募集を行っているようなケースであれば、人員削減の必要性がないため不当解雇にあたる可能性があります。
これら4つの要件が満たされていない場合は、解雇の公平性に疑問が残り、不当解雇であると主張できる可能性があります。
具体的には、勤務態度が良好で会社への貢献度や売り上げ成績は良いが、日頃から上層部へ意見する機会が多い人をリストラしたようなケースなどです。
それでは実際、不当な解雇を争うことになった場合、どんな準備が必要となるのでしょうか。
解雇無効を主張するためには、解雇通告が労働契約法16条に違反していることを証明する必要があります。
違反を証明する有力な証拠になるのは、「解雇通知書」や「解雇理由証明書」です。
「解雇通知書」は、会社が労働者に対して、解雇の意思を表明するための書類です。
多くの場合は解雇理由も記載されています。
「解雇理由証明書」は、その名の通り解雇の理由を証明する書類です。
労働基準法22条1項は、労働者が請求した場合、解雇理由を記載した証明書を遅滞なく交付することを会社側に義務付けています。また、労働基準法22条2項では、解雇予告をされた日から退職日までの間に労働者が請求した場合も同様であるとしています。
解雇理由証明書に記載すべき解雇理由は、就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を具体的に記載しなければならないと通達で定められています。
解雇通知書や解雇理由証明書は、会社側の主張する解雇理由が「客観的に合理的な理由を欠く」という証拠になる可能性がありますし、仮に会社側が後の段階でこれらの書類に書かれていないことを解雇理由として主張してきた場合、そのような理由は疑わしいものと判断されやすくなりますから、確実に請求しておきましょう。
そのほか労働契約書や、リストラについて上司と面談した際の会話の録音データやメールなども証拠になり得ますので、集めておくことをおすすめします。
また、不当解雇を争うためには、証拠集め以外でも、事前に「退職に合意していない」ということが重要になります。会社側に求められても退職届を提出しないよう注意が必要です。この他、退職金や解雇予告手当を請求する等、解雇を受け入れたと思われかねないような行動も絶対に控えましょう。
不当なリストラ通告を受けた場合、ひとりで会社と交渉をしようとしても、なかなか難しいものです。労働組合に相談すれば、団体交渉権や争議権などの行使により、会社が拒否できない方法で交渉を行えます。
労働組合に加入していない場合でも、労働基準監督署等に相談することが可能です。
しかし、これらの方法での解決が見込めず、裁判で不当解雇を争うことを検討するのなら、弁護士のサポートが必要です。労働問題の実績が豊富なベリーベスト法律事務所にぜひご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
残業代請求、不当解雇・退職勧奨、同一労働同一賃金、退職サポート、労働災害、労働条件・ハラスメントに関するトラブルなど、幅広く労働者のお悩み解決をサポートします。ぜひお気軽に お問い合わせください。
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