会社から突然「解雇する」と告げられたとしても、その解雇の理由が「納得がいかない」「自分には非がないのに…」「理不尽だ」などと思ったのなら、不当解雇だとして「解雇無効」を請求できる可能性があります。
本コラムでは、不当解雇とみなされ、解雇無効と認められる可能性が高いケースについて、解説します。さらに解雇無効が認められた場合、復職するべきか否かなど、解雇後に取り得る選択肢についてもご紹介します。
最初に、解雇の定義や種類など、解雇に備えて知っておきたい基礎知識について解説します。
解雇とは「会社からの申し出による、一方的な労働契約の終了」を意味します。
労働者の意思とは関係なく、会社が一方的に辞めさせるのが解雇です。
解雇は内容によって、以下の通り大きく3つに分類されます。
どの解雇でも、会社が自由にいつでも行えるというものではなく、労働基準法などの法令で定められたルールにのっとって、厳格な条件をクリアする必要があります。
たとえば、いかなる解雇であっても、後記2(1)のとおり、労働契約法16条の規制により、「客観的に合理的な理由」がなく、「社会通念上相当」でない解雇は、権利の濫用として無効とされます。
さらに、懲戒解雇については、労働契約法15条においても、「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」な懲戒解雇であることが認められなければ、権利の濫用として懲戒解雇が無効とされる等、普通解雇以上に厳しい規制を受けます。
加えて、いずれの種類の解雇をするにあたっても、原則として、労働基準法20条で、会社が解雇を行う際に、少なくとも30日前に解雇の予告をすることを義務付けています。
予告をしない場合も30日分以上となる平均賃金を「解雇予告手当」として支払わなければなりません。
予告の日数が30日に満たない場合も、その平均賃金の不足分を、支払う必要があります。
会社が労働者を解雇しようとするときには、何らかの理由があるはずです。
解雇の有効性が認められるかどうかには、この「解雇の理由」の内容がポイントとなります。
労働契約法16条は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、労働者の解雇はできないと定めています。
つまり解雇が有効と認められるためには、「客観的に合理的な理由がある」「社会通念上相当と認められる」という2つの要件を満たす必要があるのです。
たとえば「数回遅刻した」程度の理由での解雇は認められないでしょう。
しかし「長期間の無断欠勤があった」といったケースであれば客観的に合理的な理由と認められる可能性があります。
そのほか、客観的に合理的な解雇理由に該当すると考えられるのは、次のようなケースです。
また、整理解雇の場合には、以下の4つの要件ないし要素をから解雇の有効性が考慮されます。
いくら会社側から「経営不振だから解雇は仕方ない」と言われたとしても、上記の要件ないし要素を満たしていない場合は、解雇無効となる可能性があります。
前述の通り、解雇処分が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」、労働者が裁判で訴えれば、「解雇権の濫用」として、解雇は無効と判断される可能性があります。
裁判所は、労働者の落ち度の大きさや会社が被った損害の重大性、やむを得ない事情があるかどうかなど、さまざまな事情を考慮した上で、解雇の正当性を判断します。
労働契約法16条以外にも解雇処分を受けた労働者が、解雇の無効を請求できるケースがあります。
労働に関連する様々な法律で、以下のような不当な理由による解雇が禁じられています。
などです。
このような理由で解雇された場合には、解雇無効の請求を検討するとよいでしょう。
日本の労働法制では解雇を厳しく制限しているため、労働審判や裁判で解雇が有効と認められるケースは多くはありません。
ですが、裁判で解雇無効を勝ち取ったとしても、心理的に「一度解雇された会社には戻りたくない」「復職後の立場や人間関係が不安」と考える方も少なくないはずです。
そうした場合は、最終的な判断として、「復職しない」というのも選択肢のひとつでしょう。
実際、会社側と解雇無効を争う多くのケースでは「復職」ではなく「金銭を受け取って退職」という選択肢を選ばれる方が多いのが実情です。
不当解雇が認められた場合、解雇時点から判決確定時までの賃金相当額(バックペイ)の支払いを、解雇された会社に求めることが可能になります。
解雇時点から判決確定時までは「無効な解雇を主張していた会社の都合で働けなかった」ことになり、「債権者(会社)の責めに帰すべき事由によって債務を履行する(労働する)ことができなくなった」といえるため、民法536条2項に基づき労働者はバッグペイを受け取る権利があるという考え方です。
バックペイは、解雇された期間中の失業給付や別の会社で働いて得た給与と重複して受け取ることができます(ただし、月例賃金のうち平均賃金の40%は控除の対象)。
解雇無効となっても復職せず、バックペイを請求することは、不当解雇された労働者にとって有力な選択肢といえるでしょう。
さらに、解雇前に未払いとなっていた残業代は、復職せず別の会社に就職した後でも請求できます。
退職をするのであれば、会社での立場や人間関係を心配する必要もありませんので、退職のタイミング合わせて、残業代の請求も併せて行うことをお勧めします。
ただしその際、残業代の請求には時効があることに注意が必要です。
時効期間は、
となっています。
復職を希望しない場合でも、解雇が無効であることを主張していくことに変わりはないので、解雇予告手当や退職金を請求する等、解雇を受け入れたと思われる行動はしないようにし、解雇を受け入れない姿勢は明確にしておきましょう。
不当な解雇処分を受けたときは、まず弁護士に相談することをおすすめします。
解雇無効を請求するためには、さまざまな手続きが必要です。訴訟に至らないケースであっても弁護士に相談できれば安心でしょう。
たとえば、解雇処分を受けてすぐに必要となる対応は、解雇理由の確認です。
早い段階で、会社側の言い分、ひいては解雇の理由を確認しておけば、後に会社と交渉したり、労働審判や訴訟で争う際に、解雇の有効性の判断がしやすくなるからです。
労働基準法22条2項は
解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない
と規定しています。
また、同条1項は
労働者が、退職の場合において、…退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
と規定しています。
すなわち、解雇の予告がされてから実際に解雇となる日までの在職中でも、解雇がされた後でも、労働者は、会社に対して解雇理由の証明書を請求することができます。
しかし、会社に請求しても会社側が応じないケースは多々あります。
そうした状況でも、弁護士であれば、解雇理由の確認を含めた会社との交渉を代理することが可能です。
また、前述したように「退職するタイミングで残業代請求も一緒にしたい」というような場合も、弁護士へのご相談をお勧めします。
この場合、解雇と残業代請求、両方の問題に適切に対処する必要がありますが、弁護士であれば、状況に合わせて最適な方法をご提案することができます。
会社から突然、解雇処分を受けたら、どうしたらいいのか分からず、不安になる方は多いことでしょう。
しかし解雇処分を受けても、客観的に合理的な理由がなければ有効性は認められません。
不当な解雇は無効であると請求することができ、実際に裁判で解雇無効と判断されるケースも少なくありません。
解雇処分を受けてしまい請求の手続きや会社との交渉に悩んだら、労働問題の解決の実績が豊富なベリーベスト法律事務所へぜひご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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