新型コロナウイルス(以下「コロナ」といいます。)感染拡大の影響で、解雇や雇止めをされる事案が後を絶ちません。タクシー会社で約600人の社員がコロナを理由に解雇されたとの報道もありました。
正社員で解雇されてしまった方、契約社員で契約を打ち切られてしまった方、またそのような方々のご家族など、お困りの方がたくさんいることでしょう。状況が状況だけに仕方がない…とお考えの方も多いかもしれませんが、コロナを理由とする解雇は本当に有効なのでしょうか。また、会社をやめるのは良いとしても不当解雇であれば適切な補償を受けたいとお考えの方もいるのではないでしょうか。
本コラムでは、
・ コロナを理由とする解雇や雇止めは有効なのか、その判断方法
・ 解雇を争う場合の相談先、争う方法
・ 解雇をされたときに受けられる給付
などについて、弁護士が解説していきます。
コロナを理由とする解雇のほとんどは、コロナの影響によって会社の業務を通常どおり行うことができなくなり資金繰りが悪化したことによるものだと思います。
会社としては、従業員に与える業務もない上に、給与として支払うお金もないので、解雇するしかないという判断なのでしょう。
解雇とは使用者(会社)による労働契約の解約のことをいいますが、その中でも、このような会社の経営上必要とされる人員削減のために行う解雇のことを、「整理解雇(せいりかいこ)」といいます。また、整理解雇の意味で「リストラ」という言葉が使われることも多くあります。
では、コロナのせいで経営難に陥ったからといって、本当に全ての解雇が有効なのでしょうか。
結論としては、解雇が労働者に与える影響は非常に大きなものであることから、法律上その有効性は厳しく判断され、経営難だからといって全てが有効になるわけではありません。
法律での決まりを見ていきましょう。
解雇の有効性について、労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定しています。
整理解雇については、判例上、これがより具体化され、以下の4つの要件(要素)から正当性が判断されています。
具体的には、以下のような点が考慮されることとなります。
したがって、コロナのせいで経営状況が悪化した場合でも、会社は解雇を避けるためにできるだけの手段をとらなければ、解雇は法律上無効となる可能性があるのです。
自分は解雇をされたのに
というような場合には、解雇の有効性を疑ってみてもよいでしょう。
コロナを理由とする解雇や雇止めが多発している中で、政府は雇用調整助成金を活用して従業員の雇用維持を呼び掛けていますから、雇用調整助成金を活用しているかどうかも、解雇の有効性に影響する可能性があります。
もっとも、コロナを理由とする解雇の有効性を考えるためには専門的な判断が必要になりますので、納得がいかないとお考えの方は弁護士に相談することをおすすめします。
解雇と似たような言葉に「雇止め(やといどめ)」があります。
解雇が会社による労働契約の契約期間中に行われる解約であるのに対し、雇止めは期間の定めのある労働契約を期間満了で終了とし、更新しないことをいいます。
雇止めは期間満了による終了ですから基本的には違法となりませんが、
などでは、解雇と同様に雇止めの正当性が判断されることとなります(労働契約法19条)。
雇止めをされてしまった、いわゆる契約社員の方でも、何度も更新されていたような場合や更新されると期待する理由があったという場合は、泣き寝入りをせずに、弁護士に相談することをおすすめします。
なお、有期労働契約を契約期間中に解約されてしまった場合には解雇にあたり、そのような解雇は「やむを得ない事由」がない限り認められず、よほどのことがない限り有効にはなりません(労働契約法17条1項)。
コロナを理由に解雇や雇止めにあってしまったときは、弁護士に相談しましょう。
労働問題の相談先として労働基準監督署や労働局を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、整理解雇の有効性に関する相談はこれらの機関にはなじみませんし、労働者の代理人として会社と争うことができるのは弁護士です。
まずは弁護士に相談をしてみて、ご自身がされた解雇や雇止めが不当なのか、どういった対応をとることができるのかなどを確認してみましょう。
また、弁護士であれば、未払い残業代などの解雇以外の労働問題も併せて解決を依頼することができるでしょう。
解雇が違法・無効である場合には、解雇がなかったことになるので、依然として労働契約が継続していることになります。したがって、会社に対して復職を求めたり引き続き賃金を支払うように請求したりすることができます。
また、雇止めが違法である場合は、契約更新や締結の申込みをすれば、会社はその申込みを承諾したものとみなされ(労働契約法19条)、解雇が無効の場合と同様に復職や賃金の支払を求めることができます。
① 解雇理由をはっきりさせよう
解雇に納得できない場合、まずは会社に対して解雇理由証明書の交付を求めましょう。
解雇理由証明書によって、会社がどのような理由で解雇をしたのかが明らかになりますので、争うべきポイントが明確になります。
また、コロナのせいと見せかけて、真実は他の理由だったということもあり得ますので、解雇理由証明書を交付させることによって、真の解雇理由が明らかになることもあるかもしれません。
② 復職と賃金の支払を求めよう
解雇の理由がはっきりしたら、その理由に対する反論とともに解雇の不当性を主張して、復職と賃金の支払を求めましょう。
会社が応じれば良いのですが、そう簡単に応じるものでもありません。話し合いをして決着がつかなければ労働審判や訴訟等の法的手続きをとることとなります。
③ 自分で対応する前に、弁護士に相談しよう
こういった対応はもちろんご自身ですることも可能ですが、弁護士に依頼した方が、会社が本気で対応する可能性が高まりますし、法的手続きは複雑でご自身で行うのは困難でしょうから、弁護士に依頼することも検討してみてください。
④ メリット・デメリットを検討してから対処しよう
なお、解雇を争うからといって、必ずしも復職を求める必要はありません。
一度解雇を言い渡された会社に戻ることには抵抗がある方も多く、むしろ退職を前提として金銭的な解決が図られることが多いでしょう。
復職を目指すのか、金銭解決を目指すのか、双方にメリットとデメリットがありますので、どちらの方針をとるのかは弁護士と相談するなどして決めると良いでしょう。
① 退職に合意してしまうと、争うことが困難に。絶対に断ろう
コロナで解雇されたけど納得がいかない場合、1番注意しなければならないのは、退職届や退職合意書など、退職する意思を示すような書類にサインをしてしまうことです。
これだけは絶対にしないようにしてください。
会社は後々の争いを避けるために退職届や退職合意書を書かせようとすることがありますが、解雇は会社からの一方的な解約ですので、労働者が書面にサインをする必要はありません。
こういった書類にサインをしてしまうと、退職することを認めたものと扱われ後に争うことが困難になってしまうので、サインを求められたらきっぱり断りましょう。
② 解雇予告手当は受け取ってもいいの?
また、解雇に伴い解雇予告手当が支払われることがありますが、それを受け取ったことをもって「解雇を受け入れた」と主張されることもあります。
返還する必要まではありませんが、会社に対して解雇後の賃金として受け取った旨を告げておくと良いでしょう。
解雇を争うとしても、会社がすぐに解雇を撤回して復職をすることができることはあまりありません。そうすると解雇が法律上無効だとしても収入が途絶えてしまうことに変わりはありません。
そんな場合、どうすればいいのでしょうか。
① 雇用保険(失業手当)
そのようなときは、雇用保険(失業手当)の受給を検討しましょう。
解雇の場合は、1年間に6か月以上雇用保険に加入していれば受給できる可能性があります。
詳しくはハローワークに確認してみてください。
② 仮給付
なお、解雇を争う場合に雇用保険(失業手当)を受給するのは矛盾するのではないかと考える方もいるかもしれませんが、仮給付といって、「仮に」受給するということも可能な場合があります。
③ 未払賃金立替払制度
会社が法律上または事実上倒産してしまい、賃金が支払われていない場合には、未払賃金立替払制度という制度を利用することができるかもしれません。
最大で未払賃金の8割の額が立替払されます。
解雇は労働者の職業人生や生活に非常に大きな影響を与えるものであり、決して簡単になされていいことではありません。
コロナで解雇をされてしまった方やそのご家族の皆さま、本当に解雇されなくてはならない状況なのか、今一度考えてみましょう。
ベリーベスト法律事務所では、コロナによる解雇を含め、労働問題の相談を幅広くお受けしています。
相談者の皆さまにとってどういった解決が可能なのか、一緒に考えましょう。ぜひ一度ご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
残業代請求、不当解雇・退職勧奨、同一労働同一賃金、退職サポート、労働災害、労働条件・ハラスメントに関するトラブルなど、幅広く労働者のお悩み解決をサポートします。ぜひお気軽に お問い合わせください。
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