厚生労働省が公表している「雇用動向調査」の結果によると、令和4年中に離職した労働者の数は765万6700人で、そのうちの1.1%=約8万人の労働者が「事業者側の都合」という理由で離職しています。
もし、会社から解雇を言い渡されてしまった場合、その有効性を判断するにあたっては、解雇の理由が非常に重要です。理由を聞いても教えてもらえなかったり、納得できない不当な理由を伝えられたりすることがあるでしょう。
では、不当解雇である可能性が高い場合、どのように対処すればよいのか、ご存じでしょうか? 本コラムでは、不当解雇の撤回を求める方法や注意点を弁護士が解説します。
※厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/23-2/dl/kekka_gaiyo-01.pdf
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/23-2/dl/kekka_gaiyo-04.pdf
不当解雇の撤回を求めるには、大きく3つのステップがあります。
まず確認すべきは「解雇が正当なものであるのか」です。
そこで、会社に対して「解雇理由証明書」の提示を求めましょう。
労働基準法第22条1項によれば、退職をした労働者には、解雇理由を含む退職事由証明書の交付を求める権利があります。
また、同法22条2項によれば、解雇予告を受けた労働者は、退職の日までの間に解雇理由証明書の交付を求める権利があります。
いずれによる場合でも、会社(労働基準法上は「使用者」と呼ばれています。)は、解雇理由の開示には応じなければなりません。
労働者が不当解雇を訴えた場合、解雇の有効性については会社が立証責任を負いますが、当然、会社は解雇が有効であることを裏付ける自分たちに有利な証拠しか裁判所に提出しません。
ですので、解雇が不当であることを裏付ける証拠は、労働者が自ら収集して裁判所に提出する必要があります。
時間がたってしまえば証拠集めが難しくなってしまうので、早急に不当解雇の証拠を集めましょう。
解雇理由証明書のほか、労働契約書や就業規則、勤怠状況を明らかにするタイムカードや出勤簿などが証拠となります。
会社は解雇が有効であると主張することが一般的ですので、それが不当であると労働者が主張しても、誠意ある対応をしてくれるとは限りません。
労働基準監督署の相談窓口への相談のほか、労働トラブルの解決実績が豊富な弁護士事務所に相談することをおすすめします。
不当解雇にあたるケースなのか、争うにあたって証拠としてどのようなものが有用かなどのアドバイスが受けられます。
不当解雇トラブルを交渉によって解決できれば、それは最善の結果だといえるでしょう。
もちろん、裁判所に訴えて「解雇は無効」と判断してもらう方法もありますが、交渉によって解決することにはさまざまなメリットがあります。
まず、交渉によって不当解雇の撤回が得られる最大のメリットとして、煩雑な裁判所の手続きを回避できることが挙げられます。
裁判所の手続きによる場合、途中で和解が成立することも多くありますが、和解が成立しない場合には過去の判例に沿って判決が下されるため両者が納得できる円満な解決の可能性は低くなります。
しかし、交渉によって解決できれば、煩雑な裁判所の手続きを回避できるだけでなく解雇撤回を含めた柔軟な解決が期待できるでしょう。
裁判所に解雇の不当性を訴えた場合、判決が下されるまでに早くとも数か月の時間がかかってしまうものです。
他方、交渉によって解雇撤回を求める方法は、裁判所の手続きを利用しないため比較的早期の解決が期待できます。
また、裁判で争うことになれば弁護士のサポートが必須となります。
解決までに時間がかかるだけでなく、裁判所に提出する書類の作成や訴訟への出頭など多岐にわたって弁護士の援助を受けることになり、弁護士費用も交渉によって解決する場合に比べて高額になりがちです。
交渉によって解決できれば、時間・手間が大幅に軽減され、弁護士費用も抑えられます。
時間・手間・費用のすべての負担軽減と早期解決を望むのであれば交渉による解決が賢明です。
交渉によって不当解雇が撤回されれば、時間・手間・費用のすべての負担が軽減できるなどのメリットがあります。
これに対し、交渉で解決することのデメリットはほとんどありません。
強いて言うなら、交渉ではどちらの主張が正当かを判断する人がいないため、時間と手間をかけて交渉しても双方の意見が一致しない場合は裁判所の手続きによって解決をはかるほかなくなるため、交渉にかけた時間や手間が無駄になってしまうということでしょうか。
会社が即時解雇を言い渡した場合、会社は労働者に対して30日間分の解雇予告手当を支払う必要があります。
これを支払いたくない会社側が、解雇を撤回してそのあとに解雇予告の通知をし、30日後に再び解雇するというトラブルが考えられます。
解雇は会社が労働者に言い渡した時点で効力を発しますが、会社は労働者が撤回に同意しない限り、撤回をすることはできません。
会社都合で解雇を言い渡しておいて、さらに会社都合で撤回することは到底認められるものではないでしょう。
もし会社が解雇予告の手続きを踏まずに即時解雇を言い渡してきた場合は、解雇無効を主張するか、または解雇を有効として解雇予告手当の支払いを求めることになります。
不当解雇の撤回を求める場合、交渉による撤回か、裁判所に判断を委ねることになります。
ただし、自ら退職届を提出してしまったケースでは、退職することに同意したと取り扱われるため、解雇を撤回させることや復職することは困難になる点には要注意です。
悪質な会社では、ハラスメントや退職勧奨などの方法で事実上の解雇なのに自主退職へと追い込んで離職させるといったケースも散見されます。
自らが退職届を提出していると、たとえ裁判などで「実は本意ではなかった」と主張したとしても、その主張が認められる可能性は非常に低くなります。
自力での解決は非常に難しくなるので、弁護士や労働関係の相談窓口を活用してアドバイスを受けましょう。
不当解雇を受けてしまった場合、労働者自身が交渉しても撤回が認められる可能性は極めて低いと考えられます。可能な限り、弁護士のサポートを受けて対処するのが賢明でしょう。
弁護士への依頼といえば、裁判所の訴訟手続きの代理や刑事事件の弁護などをイメージしがちですが、解雇撤回を求めるような場合、代理人として会社と交渉してもらうことも可能です。
「自分の代わりに会社と交渉してもらう」というサポートについてイメージしていなかった方は、まずは弁護士に相談してどのような対処法があるのかのアドバイスを受けることをおすすめします。
不当解雇の撤回を求める交渉は、労働トラブルの解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にお任せください。
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