近年、物価高騰などの影響をうけ、急激に経営が悪化した企業が従業員を解雇するケースが目立つようになりました。
ですが、いくら経営の悪化が理由とはいえ、突然解雇されたら「不当解雇だ!」と感じる方もいらっしゃるでしょう。実際に、解雇された社員が「解雇は不当だ」として、裁判所に仮処分を求めるというケースもあります。
会社から解雇を言い渡されたとき、「不当解雇だ!」と思っても、怒りや将来への不安など色々な感情が爆発して、パニックになってしまい、何をしてよいのかわからなくなることもあるのではないでしょうか。
不当解雇であれば、解雇は無効ですから会社を辞める必要はないですし、場合によっては損害賠償請求などの金銭の支払を請求することもできます。
そこで今回の記事では、不当解雇された場合に、労働者として行うべき手続きなどを流れに沿って解説します。不当解雇をされて悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
あなたが会社から解雇され、それが不当解雇だと感じたとき、まずするべきことは少し落ち着いて、本当に不当解雇なのか考えてみることではないでしょうか。
弁護士や役所に相談に行くべき不当解雇かどうかを見分けるために、まずは、解雇の種類や不当解雇かどうかを判断するためのポイントを解説します。
解雇と一口に言っても、解雇には種類があり、種類ごとに不当解雇かどうかを見分けるポイントは違ってきます。
解雇の種類は大きく下記の3つに分類されることを押さえましょう。
① 普通解雇
普通解雇とは、労働者としての義務を果たせないことを理由にする解雇です。
仕事上のスキル(能力や技術)が会社の要求に著しく不足する場合や、疾病などで長期にわたり職場復帰ができず、労務を提供できなくなった場合などに用いられます。
② 整理解雇
いわゆるリストラのことです。
会社の経営が悪化して、事業を継続するためには社員を解雇して人件費を削減するほかない事態になった場合などに用いられます。解雇を言い渡される労働者には何の落ち度がなくても解雇されてしまうことがあり得ることが特徴です。
③ 懲戒解雇
不正や非行など企業秩序に違反する行為をした労働者に対するペナルティ(罰)として行う解雇です。
このように解雇をする会社側の理由により、解雇の種類は分かれています。
それぞれの不当解雇の見分け方を詳しく説明します。
普通解雇は「客観的に合理的な理由」があり、解雇することが「社会通念上相当」でなければ無効(労働契約法16条)となるため、労働者が生活の糧を得る重要な手段である職を失わせるほどの理由が無ければ不当解雇になり、従業員としての地位は失いません。
普通解雇は、一般的に就業規則に定められた解雇事由に則って行われます。
そこでまずは、解雇理由が就業規則のどの部分に該当するのかを確認しましょう。
解雇理由が不明な場合は、解雇理由証明書の交付を求めます。
会社は、労働基準法上、労働者の求めに応じて解雇理由証明書の交付をする義務がありますので、求めても交付されない場合は、労働基準監督署や弁護士に相談するのもよいでしょう。
次に、理由が開示されたら、理由が就業規則に記載された解雇理由に該当する合理的なものかを検討します。解雇の理由が不合理だと考えるのであれば、不当解雇である可能性が高いと言えるでしょう。
仮に、解雇の理由が合理的なものであったとしても、解雇の理由は解雇するほどの重大なものか、他に解雇を回避する手段がないのか、労働者側に同情できる事情があるのかを検討します。
これらの事情が否定されるのであれば、不当解雇の可能性があるでしょう。
整理解雇では、整理解雇の四要件・要素により、不当解雇かどうかを判断することになります。
整理解雇の四要件・要素とは、
をいいます。
つまり、リストラをしなければならないほどの経営状況であり、役員報酬の削減、新規採用の抑制、希望退職者の募集をするなど、十分に解雇を避ける努力をしていなければなりませんし、リストラ対象の選別は合理的な基準に基づいて行われ、労働組合との協議や十分な説明がなされていることなどが問題となります。
懲戒解雇についても、まずは就業規則の懲戒事由に該当するような合理的な理由があると言えるかを判断することになります。
次に、就業規則に記載された処分の中から懲戒解雇が重すぎないか、出勤停止や減給処分などのより軽い処分が妥当するのではないかを判断していきます。
また、懲戒解雇される場合には、言い分をしっかりと聞いてもらえたのかも重要です。
懲戒解雇と言う重い処分を科すためには、言い分も聞き、事実関係を確認して慎重に判断することが必要になるのです。
以上のほかにも、法律で解雇が禁止されている主な場合として、次のものがあります。
ここでは、不当解雇を言い渡された場合にはどのような対処ができるのかについて、解説していきます。
不当解雇をされてしまった場合にも、会社に解雇を撤回してもらったり、裁判所に解雇が無効であることを前提に雇用契約が継続していることを認めてもらうなどすれば、働き続けることができます。
本来、不当解雇であれば、解雇は無効ですから働き続けることは当然のことです。
しかし、解雇を言い渡され、働くことが困難になった状況が続いてしまうと、自分の仕事は他の従業員に割り振られてしまい、地位も他の人が就いてしまうなど、従来の仕事を継続することが困難になってしまいます。
また、解雇を言い渡された後には賃金が支払われなくなるため、経済的に困窮してしまうことも多いでしょう。
そのため、不当解雇をされた場合には、速やかに労働基準監督署や専門家である弁護士に相談し、職場復帰のための協力を求めるべきです。
弁護士に依頼した場合には、交渉による職場復帰や、仮処分と言う裁判所を介した手続きによって、職場復帰を実現するためのサポートを受けることができます。
不当解雇は無効ですから、不当解雇された労働者は、従業員としての地位を有し続けることになり、会社の都合により働けなくなったのですから、職場復帰するまでの賃金を請求することができます。
さらに、不当解雇を行った会社の行為が、違法性が高く不法行為に該当する場合には、慰謝料も請求できる場合があります。
もっとも、慰謝料請求が認められるケースはあまり多くありませんので、不当解雇された場合の金銭請求のメインは、職場復帰するまでの賃金請求になります。
また、不当解雇をした会社側には、一度解雇を通告し、紛争になった従業員が職場復帰することにより問題が発生することを防ぐために、職場復帰を断念して欲しい事情があります。
そのため、職場復帰を断念する対価を支払う金銭解決を求めることも頻繁にみられますから、和解金や解決金の支払を受けられることもあります。
最後に、不当解雇を争うための方法や流れを解説します。
不当解雇を争うために証拠の準備は欠かせません。会社から受け取った書類はしっかりと保管してください。また、可能であれば、会社に説明を求めて必要な書類を要求してみることも良いでしょう。
もっとも、不当解雇の場合には、必要な資料を渡されないケースも多くみられます。
会社が重要な資料を渡さない場合には、弁護士に相談して、弁護士から資料の開示を要求してもらうなど、専門家に相談する手段もありますし、訴訟などが始まれば会社が提出してくることもありますので、証拠収集に時間をかけすぎないことも重要です。
通常は、不当解雇であることを前提に会社と交渉することになります。
自分一人で交渉することが困難な場合は、労働基準監督署や弁護士などの専門家のサポートを求めることも重要です。
不当解雇された直後は、感情的になることも多く、冷静な話し合いができない状況であれば、早めに専門家のサポートを依頼すると良いでしょう。
弁護士が解雇が不当である旨を会社に通知することにより、即座に解雇が撤回されて職場復帰をすることができる場合もあります。
交渉による解決が困難な場合には、労働審判やあっせん手続きの利用を考えることになります。
労働審判とは、労働審判委員会が労使の間に入り、和解の調整をしつつ、和解が成立しない場合には、裁判の判決に似た審判と言う判断を示して紛争解決を図る手続きになります。
あっせん手続きはより簡易に、和解の調整を行う手続きになります。
労働審判やあっせんでも紛争が解決しない場合や、訴訟に適した場合には、訴訟により争うことになります。
また、不当解雇を争い早期の職場復帰を実現する手続きである仮処分手続きを訴訟に先立って行えば、訴訟中も仮にではありますが勤務を継続することができる可能性があります。
訴訟では、和解により解決する場合もあれば、判決により解決する場合もあります。
判決となった場合には、不当解雇の主張が認められれば、雇用契約が継続していることが認められて職場復帰をすることができるだけでなく、解雇期間中の賃金の請求も認められます。
会社に解雇を告げられた場合、それは不当解雇にあたり無効である場合があります。
不当解雇であれば、職場復帰を要求しつつ、復職するまでの賃金を請求できますし、場合によっては慰謝料請求もできることがあります。
ただし、不当解雇をした会社が、簡単に復職や金銭請求に応じることはほとんどありませんし、不当解雇をするような会社と直接やり取りすることは大きなストレスになると思います。
さらに訴訟や労働審判など複雑な手続きについて調べることも大きな負担が伴います。そのため、不当解雇だと考えながらも、泣き寝入りしてしまうことすら多々あるのです。
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