あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支給する「みなし残業制(固定残業代制)」は、多くの企業で導入されています。
しかし、制度の運用が適正に行われていない企業も存在し、労働基準法違反となるケースも少なくありません。実際の残業時間に対して適切な賃金が支払われていない場合、未払い残業代を請求できる可能性があります。
本記事では、みなし残業制が違法になるケースや、おかしいと感じた場合の対処法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
みなし残業制がおかしいのではないかと感じた場合は、以下の項目を確認してみましょう。
1つでも「いいえ」の項目がある場合は要注意!
みなし残業制が不適切に運用されており、未払い残業代を請求できる可能性があると考えられます。
| 基本給の金額が明示されているか(固定残業代と分けて記載されている) | はい | いいえ |
|---|---|---|
| 固定残業代の金額が具体的に明示されているか | はい | いいえ |
| 月45時間超の固定残業時間が設定されているか | はい | いいえ |
| 固定残業時間を超えた残業について、固定残業代とは別に割増賃金が支払われているか | はい | いいえ |
| 固定残業代の基本給の額が低過ぎないか(最低賃金を下回っていないか) | はい | いいえ |
| 勤怠管理システムやタイムカードにより、残業時間が正確に記録されているか | はい | いいえ |
| みなし残業制について、労働契約や就業規則に明記されているか | はい | いいえ |
このチェックリストで「おかしい」と感じる項目があった方は、次章でみなし残業制の仕組みや、どのような場合に違法となるのかを確認してみましょう。
「みなし残業制(固定残業代制)」が有効であるためには、裁判例上、いくつかの要件を満たす必要があると考えられています。
不適切な形で運用されている場合は労働基準法違反となり、未払い残業代を請求できる可能性があります。
「みなし残業制」とは、一定時間分の残業代を、あらかじめ固定で支給する制度です。
「固定残業代制」とも呼ばれています。
みなし残業制で働く人には、固定残業時間に対応する残業代(=固定残業代)が、実際の残業時間にかかわらず毎月必ず支払われます。
たとえば固定残業時間が40時間であれば、40時間分の固定残業代を必ず受け取れます。
実際の残業時間が40時間を下回っていても、固定残業代全額を受け取ることができます。
その一方で、実際の残業時間が固定残業時間を超えた場合には、超過分の残業代を追加で受け取れます。この点は誤解している人が多いので要注意です。
たとえば固定残業時間が40時間で、実際の残業時間が45時間だった場合は、固定残業代に加えて5時間分の残業代を受け取ることができます。
使用者がみなし残業制を導入するに際し、労働者(従業員)に対して以下の事項を明示しなければ、みなし残業制が無効となる可能性があります。
上記の事項を明示していない場合は、みなし残業制は無効と判断される可能性があり、無効と判断された場合、固定残業代の支給は残業代の支払いとして認められません。
この場合、労働者は使用者に対し、実際の残業時間に応じた残業代全額を請求できる可能性があります。
また、労働者に対して明示した内容とは異なる取り扱いをしている場合も、残業代の未払いなどの労働基準法違反に当たります。
たとえば以下のようなケースでは、みなし残業制が不適切または違法と判断される可能性が高いでしょう。
労働者に時間外労働や休日労働をさせるためには、労使間で「36協定」を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
みなし残業制において定められる固定残業時間は、36協定に基づく時間外労働・休日労働の上限の範囲内で定めるのが適切と考えられます。
たとえば、36協定で定めた時間外労働の原則的な上限(月45時間)を超えて、固定残業時間を月100時間と定めるのは不適切と判断される可能性が高いです。
このような場合には、法定を超える部分の固定残業時間が無効と判断され、その超過分について未払い残業代を請求できる可能性があります。
みなし残業制が不適切に運用されており、未払い残業代が発生している可能性があると感じた場合には、以下の手順で対応しましょう。
まずは労働問題に精通した弁護士への相談を検討しましょう。
弁護士は未払い残業代請求のサポートを行っています。
証拠収集・内容証明郵便の送付・和解交渉・労働審判・訴訟など、必要な手続き全般を任せることができるので安心です。
特に、会社側が請求に応じない場合や、残業代の算定に争いがある場合は、法的知識と交渉力を持つ弁護士に依頼することで、より適切な解決が期待できます。
早い段階で相談することで、時効や証拠喪失のリスクを防げる可能性もあります。
弁護士に依頼するメリットはこちらで詳しく解説しています。
未払い残業代を請求するには、実際に残業を行っていたことを示す客観的な証拠を確保することが非常に重要です。
請求額の根拠としても使用されるため、証拠の有無が解決の成否を左右する場合があります。
以下のような資料が、残業の証拠として有効とされます。
できる限り多くの証拠を集めましょう。
証拠が一部しか残っていない場合でも、弁護士が補足的に主張・立証できるケースがあります。「証拠がないから無理」と思わず、まずはご相談ください。
残業の証拠を確保し、請求する未払い残業代の額が計算できたら、会社に対して内容証明郵便で請求書を送付するのが一般的な対応方法です。
残業代請求権は、発生してから3年が経過すると時効によって消滅します。
内容証明郵便が会社に到達すれば、その時点から消滅時効の完成が6か月間猶予されます。早い段階で内容証明郵便を送付することが大切です。
和解合意書の作成を忘れずに
内容証明郵便に対して会社から返信があったら、未払い残業代の支払いについて和解交渉を行います。合意が得られたら、その内容をまとめた和解合意書を締結して、確実な支払いを受けるための証拠として保管することが大切です。
会社が未払い残業代の支払いに応じないときは、労働基準法違反の疑いがあるとして、労働基準監督署に申告することが可能です。
申告を受けた労働基準監督署は、提出された申告内容に基づいて事業場に対して調査を行い、労働基準法違反の事実を認めた場合は是正勧告を行います。
是正勧告がなされれば、未払い残業代は速やかに支払われるケースが多いです。
ただし、労働基準監督署の対応には時間がかかるケースが多いうえに、必ず対応してもらえるとは限りません。
早期の解決や確実な請求を希望する場合
弁護士への相談・依頼もあわせて検討するとよいでしょう。
会社との任意の交渉で解決に至らない場合は、法的手段として「労働審判」または「訴訟」の利用を検討することになります。
労働審判と訴訟は、どちらも法律上の検討が必要であることに加えて、かなりの時間と労力を要します。
確実かつ有利に進めるために、弁護士のサポートを受けて、十分な準備を整えたうえで対応しましょう。
みなし残業制でも、固定残業時間を超えた労働に対しては、超過分の残業代(割増賃金)を請求する権利があります。超過分の残業代が適切に支払われていないときは、弁護士のサポートを受けながら会社に請求しましょう。
ベリーベスト法律事務所では、みなし残業制に関する多数のご相談を受け、残業代の獲得に成功した事例が多くあります。実際の解決事例をいくつかご紹介します。
相談者は、退職前に長期間の時間外労働に従事していたにもかかわらず、会社から適正な割増賃金を受け取っていませんでした。
会社は、固定残業代さえ支払えば割増賃金を支払う必要はないと主張し、支払いを拒否しました。
ベリーベスト法律事務所の弁護士が就業実態と給与明細等を精査した結果、
といった点から、制度そのものが労働基準法上無効となる可能性が高いと判断しました。
和解交渉において弁護士が上記の事実を主張したところ、会社側は追加残業代の支払義務を認め、400万円の残業代を獲得することに成功しました。
相談者は、教育関連企業で長時間残業や休日出勤を重ねていたにもかかわらず、残業代を一切受け取っていませんでした。
退職を機に、未払い残業代請求についてベリーベスト法律事務所へご相談いただきました。
ベリーベスト法律事務所の弁護士は、相談者が持参したタイムカードのデータを検討したところ、残業の事実を立証できる可能性が高いと判断しました。
また、就業規則に記載されたみなし残業の定めについても、必要な明示事項が欠けており無効である可能性が高いことも分かりました。
会社側は当初、残業代を200万円までしか支払えないと主張しましたが、弁護士は過去の裁判例を引用して上記の各点を主張し、粘り強く反論しました。
最終的に、当初の提示額よりも2倍近く高い約360万円の残業代を獲得することができました。
みなし残業制の運用がおかしいと感じたら、雇用契約書や就業規則に記載された条件と労働の実態を照らし合わせて、適切に残業代が支払われているかどうかを確認しましょう。
みなし残業制について運用が不適切な場合、固定残業代の制度が無効と判断され、未払い残業代を請求できるかもしれません。
泣き寝入りをせず、残業の証拠をできる限り確保したうえで、早めに弁護士へご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、未払い残業代請求に関するご相談を随時受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
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