外資系企業では、労働者を退職させるために「退職パッケージ」が提示されることがあります。退職パッケージを受け入れるかどうかを判断する際には、弁護士のアドバイスをお求めください。
今回は、外資系企業による退職パッケージの概要や退職パッケージを提示された場合の対処法について、弁護士が提供できるサポート内容をベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
「退職パッケージ」とは、主に外資系企業が労働者に対して退職勧奨をする際、労働者が退職に合意することを条件に、労働者に提示する金銭等の条件のことをいいます。
退職パッケージのメリット
企業側が解雇に関する厳格な規制を回避しつつ、穏便に労働者との間で合意退職の成立を目指す点にあります。
退職パッケージの内容
主に退職金の支払いを内容としますが、そのほかにも転職支援や、会社都合退職とする等の退職の手続に関する条件が退職パッケージに含まれることもあります。
退職パッケージ(退職金)の金額に影響する主な要素としては、以下の例が挙げられます。
外資系企業は退職パッケージを提示する前に、候補者となる労働者に対して「PIP(Performance Improvement Plan)」の提出を求めるケースが多いです。
PIPには、労働者の業務パフォーマンスに関する問題点や、労働者がその改善のためにどのような取り組みを行うか等を記載することが求められます。
PIPの主たる目的は、成績不良の労働者のパフォーマンスを改善することです。
ただし、退職勧奨や解雇の前提として「十分な改善指導を行った」という実績を作りたいという会社の意向が存在するケースも散見されます。
退職パッケージを提示された外資系企業の労働者は、退職に応じるか否かの大まかな方針を決めたうえで、以下の要領にしたがって適切にご対応ください。
① まずは、退職パッケージの内容を細かく確認
まずは、会社から提示された退職パッケージの内容を正しく理解することが大切です。
書面等の内容をよく読んで、細かい部分まで退職条件を把握しましょう。
読解が難しい場合は、弁護士にアドバイスを求めることをおすすめします。
② 退職合意書にすぐにサインしない
会社は速やかに退職合意書へサインするよう求めてくることがありますが、会社の要求に従ってサインをするのは厳禁です。
会社から退職合意書にサインをするよう求められた場合には、その場で即答せず、必ず持ち帰って検討し、納得できる退職条件であることを確認できた場合にのみ、退職合意書にサインするようにしてください。
転職を視野に会社を辞めたい場合は、退職パッケージを受け入れて退職することも考えられます。
ただし、会社が提示する退職パッケージの条件が適正であるとは限りません。
日本の解雇規制が厳格であることを考慮すると、退職パッケージが労働者にとってよほどの好条件でない限り、増額等の交渉の余地があります。
などの場合には、適切な条件や適正額の退職パッケージを要求するためにも、弁護士を通じて交渉することをおすすめします。
弁護士に依頼した場合
弁護士は、日本の解雇規制を踏まえた相場観を考慮し、具体的な事情に応じて退職パッケージの適正水準を分析いたします。
実際の会社との交渉についても、弁護士が交渉窓口として対応いたしますので一任心理的なご負担も気にされる必要はありません。
退職パッケージを受け入れて退職するかどうかは、労働者が自由に決めることができます。
したがって、退職パッケージを拒否して会社に残ることも可能です。
その場合は、退職には応じないこと、退職合意書にサインしない旨の意思を明確に表示しましょう。
「退職パッケージを拒否すると解雇されるのではないか」と不安になるかもしれません。
しかし、日本の解雇規制は非常に厳格であり、安易な解雇は認められません(労働契約法第16条)。
後述するように、日本で働く外資系企業の労働者には、日本の労働法の規制が適用されます(法の適用に関する通則第7条、第8条、第12条)。
もし、会社から不当な解雇処分を受けた場合には、弁護士に依頼をして労働審判や訴訟において、解雇処分の無効を争うことも考えられます。
会社を辞めたくない場合には、解雇を恐れずに、決然と退職パッケージを拒否しましょう。
なお、会社が執拗に退職勧奨をしてくる場合は、違法な退職強要に該当する可能性もあります。
このような不当な取り扱いを受けた方は、お早めに弁護士までご相談ください。
外資系企業には、日本の労働法が適用されないというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、法の適用に関する通則法(以下「通則法」といいます。)の規定に基づき、日本で働く従業員には、日本の労働法の強行規定が適用されます。
外資系企業の従業員であったとしても、働いている場所が日本国内である場合には、労働契約に関する紛争について、日本の裁判所に裁判管轄が認められます(民事訴訟法第3条の4第2項)。
日本の裁判所で審理が行われる場合、労働契約に関する紛争の準拠法は、当事者が契約当時に選択した地の法となるのが原則です(通則法第7条)。
ただし、労働契約に関することは、原則、勤務地の法の強行規定も適用されることになっています(同法第12条第1項、第2項)。
したがって、日本で働く従業員に関する労働契約については、日本の労働法の強行規定が適用されます。
上記の規定により、外資系企業であっても、日本で働く従業員を解雇する際には、日本の厳しい解雇規制(解雇権濫用の法理等)をクリアしなければなりません。
外資系企業が退職パッケージを提供する主な目的は、各国で定められている解雇規制を回避することです。
労働者が退職パッケージを受け入れて退職する場合、それは解雇ではなく合意退職に当たるため、解雇規制が適用されません。
日本で働く従業員についても、退職パッケージの内容は当事者の合意によって自由に決めることができます。
ただし、あくまでも従業員が自発的に退職パッケージを受け入れることが大前提です。
強制的な退職勧奨が行われた場合には、実質的には解雇処分と同視できるものとして、厳格な解雇規制が適用される可能性があります。
外資系企業で働く従業員の方が退職パッケージを提示された場合、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、以下のような対応が可能です。
退職パッケージの金額は、当事者の合意によって決まります。
会社に対して、退職金の増額を要求することも可能です。
日本においては、解雇権濫用の法理(労働契約法第16条)に基づき、会社が従業員を解雇するためには、解雇について客観的に合理的な理由が認められ、社会通念上相当であると認められる必要があります。
したがって、解雇が認められるためのハードルは極めて高いことから、従業員は、退職パッケージの増額を求めるに当たって有利な立場で交渉をすることができます。
弁護士は、退職パッケージの適正額を分析した上で、従業員としての立場を最大限に生かし、法的な観点から、会社に対して退職パッケージの増額を求めることになります。
強制にわたる退職勧奨が行われた場合や、退職パッケージを拒否したことを理由に解雇された場合には、すぐに弁護士へご相談ください。
弁護士は、強制的な退職勧奨や不当解雇の違法性を法的な観点から主張し、依頼者のご要望に応じて、復職や解決金の支払い等を求めます。
会社が誠実な対応を講じない場合は、労働審判や訴訟の法的手続を通じて、弁護士が依頼者の権利回復を図ります。
退職パッケージによる解雇トラブル以外にも、弁護士であれば対応できます。
たとえば、「今までの残業代を貰っていない」「役職者であることを理由に、残業代が支払われていない」等のトラブルです。
退職パッケージの増額交渉と併せて、残業代請求を行う、その他の労働トラブルを解決することも可能です。
もし、労働トラブルについてお悩みの方は、ぜひ弁護士に相談してみましょう。
外資系企業に勤めている方が退職パッケージを提示された場合には、退職合意書にサインする前に弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士は、退職パッケージの適正額を分析した上で、ご要望に応じて増額交渉等を代行させていただきます。
ベリーベスト法律事務所は、退職勧奨や解雇に関する労働者のご相談を随時受け付けております。労働事件に関する経験豊富な弁護士が、退職パッケージ交渉から労働審判・訴訟まで一貫してサポートいたします。
退職パッケージを提示された外資系企業従業員の方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
残業代請求、不当解雇・退職勧奨、同一労働同一賃金、退職サポート、労働災害、労働条件・ハラスメントに関するトラブルなど、幅広く労働者のお悩み解決をサポートします。ぜひお気軽に お問い合わせください。
1人で悩むより、弁護士に相談を
1人で悩むより、弁護士に相談を