報道によると、近時、Twitterのイーロン・マスク新CEOが、主に経営上の理由で、従業員の大量解雇を進めているようですが、日本でも多くの従業員が解雇の対象となっているようです。
そして、いわゆるレイオフという形での解雇も進められているという情報もあります。
そこで、本コラムでは、いわゆるレイオフが日本において可能なのか、似たような制度としてどのようなものがあるのか、実際にレイオフ、解雇された場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
レイオフ(layoff)とは企業が業績悪化等を理由に、従業員を一時的に解雇することを指します。あくまで一時的な解雇という位置づけですので、業績が回復すれば従業員は再雇用されることになります。いわば、人件費を浮かせることで一時的な経営上の苦境をしのぐ手段であると言えるでしょう。
日本においては、解雇に関する規定を有する労働契約法も、労働基準法も、レイオフに関する規定は有しておらず、何か特殊なもののように思われるかもしれません。しかし、会社が一度解雇した従業員を再度雇用することや、解雇時に再雇用の約束をしたり、その可能性を示唆することが禁止されている訳ではありませんので、日本の法制度の下においてもレイオフが行われることは考えられます。そして、日本においてレイオフが行われる場合、労働者の立場としては、次のような点に注意すべきでしょう。
レイオフが行われると、再雇用の可能性が残されていても、あくまでいったんは解雇されてしまいます。
しかし、解雇である以上、上記2章(1)で述べたとおり、※労働契約法16条の定める解雇規制に服し、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は無効になります。分かりやすく言えば、誰もが納得できる理由があり、解雇という手段を取ることもやむを得ないと言える事情があって初めて解雇が有効になるということです。
そして、レイオフは経営上の理由で行われるものであり、このような解雇は、整理解雇と呼ばれていますが、能力不足、業務命令違反等の従業員側の落ち度なくして行われるものであるため、解雇の有効性はより厳しく判断されます。
具体的には、
といった観点から、客観的に合理的な理由の有無や、社会通念上相当であるかが判断されます。
したがって、レイオフに納得できない場合には、
※有期契約の途中での解雇の場合、労働契約法17条1項により、「やむを得ない事由」がなければ解雇は有効にならず、より強度の規制に服することになります。
レイオフがなされれば解雇されてしまいますので、従業員の身分は失われることになります。したがいまして、社会保険も無くなってしまいますので、場合によっては、健康保険の国民健康保険への切り替えや、家族の扶養に入る等の対応も必要になるかもしれませんので、注意しましょう。
レイオフによって一時的に解雇がなされても、経営が回復すれば、再雇用される可能性はあります。しかし、そもそも本当に再雇用がされるのか、されるとしてレイオフ前の労働条件で再雇用してもらえるのか、という点は疑問が残るところです。そこで、レイオフがなされる時点で、再雇用の可能性や、再雇用時に労働条件が維持されるのかについては会社側と確認しておきましょう。
レイオフ以外にも、いったん従業員が業務から離れることになったり、それまでの労働契約が形の上ではいったん終了するという制度もあります。
一般的に言われているリストラですが、これは上記3章(1)で述べた整理解雇に相当するものです。経営上の理由による解雇である点は、レイオフと同じですが、純粋な整理解雇には、再雇用の可能性がないことが特徴です。
労働契約上の賃金額は減額せず、現実に支払う賃金を減額して一時的に会社を休業するのが一時帰休と呼ばれるものです。こちらは、レイオフと同じく、雇用調整のために行われるものですが、減額した賃金が支払われ、従業員の身分もそのまま保持されるところに特徴があります。
労働条件の変更や、新しい労働条件での労働契約そのものの締結を持ちかけつつ、それが受け入れられない場合に労働契約の解約を行う等、労働条件の変更の申し込みと、従前の労働条件での労働契約の解約を一体として行い、労働条件の変更を達成しようとする手段が、一般的に変更解約告知と呼ばれています。変更解約告知が行われた場合、態様によっては、それまでの労働条件での労働契約自体が終了し、新しい労働条件での労働契約が始まるので、レイオフと同じく一度労働契約が終了する場合がありますが、レイオフのように、雇用されていない期間が発生する訳ではありません。
レイオフは、再雇用の可能性があるということを除けば、通常の解雇と何ら変わりありません。
そこで、以下で紹介する点に十分に気を付けることが必要です。
このコラムの中でも何度も申し上げておりますが、レイオフはあくまで解雇です。そして、解雇には厳しい要件が課されており、上記3章(1)でも述べたとおり、経営上の理由による整理解雇であればなおさらです。
したがって、レイオフによる解雇は簡単には有効になりませんので、上記3章(1)で述べた①~④のポイントに沿って、有効な解雇であるのか、可能な範囲で構わないので、確認してみましょう。
上記3章(2)で述べたとおり、レイオフが行われると、従業員はその身分を失ってしまいます。必要となる対応は人によって違うと思われますが、社会保険も切れてしまいますので、切り替え等が必要であれば、対応を急ぎましょう。
レイオフは、解雇後の再雇用の可能性があるものです。しかし、経営が回復しなければ、再雇用されないかもしれません。また、再雇用がなされたとしても、レイオフ前の労働条件で再雇用されるのかは不透明でしょう。したがって、再雇用そのものの条件はもちろん、再雇用後の労働条件についてもきちんと確認しておきましょう。
レイオフ、解雇が有効なのか、納得がいかないとして、どのように交渉等を進めて行けば良いのかは、専門的な法的判断等も必要となりますので、労働問題に詳しい弁護士へのご相談をおすすめいたします。
労働問題に詳しい弁護士であれば、整理解雇の有効性の判断や、交渉や、裁判、労働審判等の法的手続きの進め方も熟知しており、安心して会社への対応を任せることができるでしょう。
レイオフ、解雇を言い渡されて困っている方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
レイオフは、解雇を伴うものですので、従業員への大きな影響は避けられません。
ベリーベスト法律事務所は、労働問題に詳しい弁護士が多数在籍しており、個別の状況に合わせたサポートをご提供いたします。
また、冒頭でも述べたとおり、Twitter社によるレイオフが話題となっておりますが、会社によっては、資料が英語で書かれていたり、会社の交渉担当者が英語しか話せないということもあるでしょう。このような場合、英語による対応が可能な弁護士に相談する必要がありますが、ベリーベスト法律事務所には、英語の対応が可能な弁護士も在籍しております。
レイオフ、解雇を言い渡されてお困りの皆さまは、ベリーベスト法律事務所までぜひご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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