会社の上司や先輩からのパワハラによって、退職を考えている方もいるかもしれません。日常的にパワハラを受けていると心身ともに多大なストレスがかかりますので、退職をして環境を変えるということも必要な選択肢となります。
このようなパワハラによる退職の場合には、会社都合を理由とする退職にできる可能性があり、また、会社に対して、慰謝料を請求することができる可能性もあります。少しでも有利な条件で退職するためにも、パワハラを理由に退職する場合の対処法を知っておくことが大切です。
今回は、パワハラを理由に退職する場合の対処法や注意点について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
パワハラを理由に退職する場合には、会社都合退職と自己都合退職のどちらの理由になるのでしょうか。
退職理由には、「会社都合退職」、「自己都合退職」という2種類があり、失業保険の受給にあたってさまざまな違いが生じます。
失業保険の受給において会社都合退職と自己都合退職を比較すると、一般的に会社都合退職のほうが有利とされています。
パワハラを理由に退職する場合には、原則として会社都合退職として扱われることになります。
ただし、離職証明書に「会社都合退職」、「自己都合退職」のいずれかを記載するのは会社側ですので、会社がパワハラを認めていなければ、自己都合退職と扱われてしまう可能性もあります。
退職理由は、会社都合退職にしたほうが失業保険の受給の面では有利となります。
そのため、パワハラで退職をする場合には、会社都合退職扱いにしてもらえるように伝えることが大切です。
なお、会社都合退職という退職理由だと、転職時に退職理由を詳しく聞かれる可能性があるというデメリットもありますので注意が必要です。
パワハラを理由とする退職を考えた場合には、以下の4つの準備をしておきましょう。
会社でパワハラの被害を受けている場合には、職場内の相談窓口に相談をするのもひとつの手段です。会社にはパワハラを防止する義務がありますので、相談をした結果、職場環境が改善される可能性もあります。
また、職場内の相談窓口だけではなく、労働局、労働基準監督署、労働条件相談ほっとライン、弁護士といった外部の相談窓口を利用することも有効です。
これらの相談窓口を利用することによって、解決方法や具体的な対処法についてアドバイスしてもらうことができます。
会社との交渉や、裁判になった場合には、労働者側でパワハラの立証をしなければなりません。そのため、パワハラで退職をする場合には、パワハラの証拠を集めることが重要です。
パワハラの証拠としては、以下のようなものが挙げられます。
証拠の集め方などについては、詳しくはこちらで解説しています。
パワハラ防止法の施行により、会社にはパワハラ防止の対策が義務付けられるようになりました。
また、就業規則等にも、パワハラに関する措置を定めなければならないとされています。
そのため、就業規則を確認することによって、会社が加害者に対して適切な措置をとったのかどうかを把握することができます。
また、会社に対して退職金や未払いの残業代を請求する場合にも、就業規則で支払いのルールなどを確認しておくことが必要になります。
中には、将来を見据えて、会社に勤めながら転職活動をしている方もいらっしゃると思いますが、会社に転職することを伝えると、パワハラがエスカレートする可能性があります。
転職や退職は労働者個人の自由であり、会社に伝える義務はありません。
会社側とトラブルにならないためにも、あえて伝えないというのも1つの手です。
ですが、転職先の入社日が決まっており、どうしても現在勤めている会社に事情を伝えて、退職日の調整などの相談をしなければならないなどのケースも考えられます。
もし伝えた場合に、パワハラがエスカレートするようであれば、その言動を録音するなどして、証拠に取っておくとよいでしょう。
パワハラで会社から退職を強要された場合には、以下のような対処法が考えられます。
会社から退職を強要されたとしても、会社を辞めるつもりがないのであれば退職勧奨には応じてはいけません。
会社による退職勧奨は、あくまでも労働者に対して退職をすすめるというものでしかなく、退職を強制させるまでの効力はありません。
そのため、退職する予定がない場合には、会社に対して、「退職するつもりはない」とはっきりと伝えるようにしましょう。
退職する意思がないことを、会社に対して明確に示しているにもかかわらず、繰り返し執拗(しつよう)に退職勧奨が行われた場合には、退職の強要として違法な退職勧奨となり、退職の無効の主張や慰謝料請求をすることができる可能性もあります。
パワハラをするような会社ではこれ以上働けないという場合には、退職勧奨に応じて退職するというのもひとつの方法です。
退職勧奨に応じて退職する場合には、退職理由を会社都合退職にするように交渉することはもちろんのこと、退職金の上乗せなど、少しでも有利な条件で退職ができるよう交渉することが大切です。
退職勧奨をする会社側の意図としては、解雇するまでの事情がないため労働者自ら退職をしてほしいという考えがありますので、交渉に応じてくれる可能性も高いといえます。
パワハラによって心身ともに疲弊した結果、すぐにでも会社を辞めたくて自己都合退職で退職をしてしまったという方もいるかもしれません。
離職証明書に「自己都合退職」と記載していたとしても、その内容に異議がある場合には、ハローワークに申し出をすることによって、自己都合退職から会社都合退職に変更してもらえる可能性もあります。
退職理由の変更を認めてもらうためには、会社からパワハラを受けたという証拠が必要になりますので、退職前に必ず証拠を集めておくようにしましょう。
パワハラで退職することになった場合には、会社に対して、以下のものを請求することができる可能性があります。
パワハラによって精神的苦痛を被った場合には、パワハラによる慰謝料を請求することができます。パワハラの慰謝料は、パワハラを行った加害者本人だけでなく、加害者を雇用する会社に対しても請求することができます。
ただし、慰謝料を請求するためには、労働者側でパワハラがあったということを証拠によって立証しなければなりません。
会社に退職金制度がある場合には、退職時に退職金を請求することができます。
パワハラを受けたからといって退職金が増額できるわけではありませんが、会社都合による退職であった場合には、退職金の割り増しを請求することができる可能性もあります。
そのため、就業規則で退職金の有無や条件を確認するようにしましょう。
パワハラによってサービス残業を強いられていたという場合には、未払いの残業代を請求することができます。
パワハラと同様に残業代を請求する場合も、労働者側で残業をしたことを証拠によって証明しなければなりませんので、退職前にしっかりと証拠を集めておくことが大切です。
パワハラをはじめとする労働トラブルでお悩みの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。
パワハラに該当するかどうかは法的判断が必要になりますので、法律の知識がない方では正確な判断が難しい事項となります。
また、パワハラに該当する可能性があったとしても、それを立証するための証拠がなければ、パワハラを理由に会社を訴えることはできません。
まずは、弁護士に相談をしてパワハラに該当するかどうかを判断してもらい、パワハラに該当する可能性がある場合には、どのような証拠が必要になるのかのアドバイスを受けるようにしましょう。
弁護士に依頼をすればパワハラに関する会社との対応をすべて弁護士に任せることができます。
パワハラを受けた会社と交渉をしなければならないというのは、被害者である労働者にとっては大きな負担となりますが、弁護士に対応を任せれば、精神的な負担は大幅に軽減されるといえるでしょう。
退職する際に会社都合退職としてもらう場合や、退職勧奨に応じて退職する際に退職金の上乗せを要求する場合には、会社との交渉が必要となります。
会社は労働者よりも強い立場にあることが一般的ですので、労働者個人で交渉することには限界があるかもしれません。
弁護士は法律の専門家ですので、法律に基づき、会社と対等な立場で交渉を進めていくことができます。
日常的にパワハラが行われている会社では、パワハラ以外にも長時間労働や不当解雇といった問題が生じることが考えられます。
弁護士であればパワハラ以外の労働問題についても適切に対応することができますので、弁護士に依頼をすれば、すべての労働問題を解決に導いてくれます。
パワハラを理由に退職に追い込まれた場合には、会社都合退職扱いにしてもらうことができるだけでなく、慰謝料や未払いの残業代も請求できる可能性があります。
ですが、労働問題をスムーズに解決するためには、しっかりと証拠を揃え、事前準備・計画を立てることが大切です。そのため、まずは弁護士にご相談ください。
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