新型コロナウイルス感染拡大の影響による解雇、いわゆる「コロナ解雇」が急増しています。
労働者の地位は法律で保護されており、会社は恣意(しい)的に労働者を解雇したり、退職を強要したりすることはできません。業績不振が理由で人員を減らす整理解雇でも、要件を満たさなければ不当解雇となる可能性があります。
今回は会社から解雇の言い渡しや退職勧奨を受けた方に向けて、不当解雇の判断基準や退職勧奨が続く場合の対応方法、失業保険への影響などについて解説します。
新型コロナウイルスの感染拡大を理由に解雇を言い渡された場合、それは不当解雇の可能性があります。
解雇には、以下の3種類があります。
業績不振を理由にする解雇は、「整理解雇」に該当します。
労働契約法第16条は、解雇権の濫用を禁止しています。
労働契約法第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
有効性が認められない解雇を「不当解雇」といいます。
不当解雇であるかどうかについて、3種類の解雇には合理性・相当性を判断する基準があります。
3種類ある解雇の中でも、会社側の一方的な理由により行われる整理解雇は、厳格に次の4つの要件が満たす必要があります。
整理解雇が有効だと認められる要件は厳しく、売り上げ減少などの理由だけでは不当解雇と判断される可能性があります。
不当解雇であれば解雇の無効を主張したり、撤回を求めることができ、解雇が無効であると認められた場合は、解雇された日以降の賃金、場合によっては慰謝料などを請求することができます。
解雇の有効性について会社と争う場合には、不当解雇であるという証拠を集めて、残しておくことが重要です。以下のような証拠を集めておきましょう。
解雇には厳しい要件があるため、退職勧奨を巧妙に利用し、人員整理を進める会社も存在します。新型コロナウイルスによる業績悪化などを理由に、会社から退職推奨をされた場合はどのように行動するべきなのか見ていきましょう。
「退職勧奨」とは、簡単に言えば、会社から「辞めてくれないか」とお願いされることです。
退職勧奨には法的な強制力はなく、会社を辞めるかどうかは労働者自身で判断することができます。
退職勧奨に応じる義務はありませんので、勤務し続けたいのであれば「退職するつもりはない」という意思表示をしましょう。
退職勧奨に応じる場合でも、その場で退職届を提出する、退職同意書にサインするなどの行動は避けましょう。
まずは、退職事由が会社都合退職なのか自己都合退職なのかを確認します。
会社都合退職のほうが、失業保険の受給要件・内容が有利になります。
しかし国から助成金を受給している会社は、会社都合による退職者をだすと助成金が不支給となる場合や返還を求められる場合があるので、会社都合とすることに応じない可能性があります。
その場合は、退職勧奨の様子を録音・録画したものなど、退職勧奨である証拠を残しておきましょう。
退職勧奨に応じないという意思表示をしたのに、退職勧奨が繰り返されるケースもあります。しつこく面談を繰り返す、汚い言葉で罵倒する、配置転換などの嫌がらせをするなどの行為によって退職を迫られた場合は「退職強要」となる可能性が高いでしょう。
退職強要は不法行為として損害賠償を請求できる可能性があります。行為の態様によっては、刑法223条の強要罪に問われる可能性もあるでしょう。
退職勧奨を繰り返される場合には、録音や動画などの証拠を残しておくことが大切です。
もし、退職勧奨に耐えられずに退職してしまった場合には、失業保険の受給に影響はあるのでしょうか。
いわゆる失業保険・失業手当は、失業者の生活を安定させるために雇用保険から支給される手当のことで、正式には基本手当といいます。
解雇や倒産などの会社都合で退職した人は「特定受給資格者」として、自己都合で退職した人と比べて失業保険の支給開始時期や給付日数などが優遇されています。
退職勧奨による退職も会社都合退職となり、特定受給資格者に該当します。
しかし退職時に交付される離職票の退職事由を自己都合とされているケースは少なくありません。
その場合は、会社に直接訂正を求めるか、ハローワークに退職勧奨の経緯などを説明し、会社に対して事実確認をしてもらいます。退職勧奨の事実が認められれば会社都合に変更してもらえる可能性があるでしょう。
変更してもらえなかった場合は、証拠をもとに雇用保険審査官に審査請求をすることもできます。
会社都合か自己都合かで、失業保険の受給要件および給付内容は以下のように異なります。
給付日数は、会社都合の場合は年齢と雇用保険の被保険者であった期間、自己都合の場合は雇用保険の被保険者であった期間によって区分されます。
新型コロナウイルスの影響による不当解雇や退職勧奨のトラブルは、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すると次のようなサポートを得られます。
突然解雇を言い渡された場合、法律や労働問題についての知識がないために、解雇をそのまま受け入れてしまう可能性があります。
弁護士なら法律や判例の知識をもとに、その解雇が不当解雇にあたるとして争う余地があるかどうかを判断できます。
また、今後どのような方法で会社と交渉していくのか、その場合に必要な証拠は何かなど、法的知識と経験にもとづいた適切なアドバイスを受けられるでしょう。
今まで働いてきた会社と交渉するのは、なかなか難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。会社から言いくるめられてしまったり、会社が交渉に応じないこともあるでしょう。
しかし、弁護士が介入すれば、正しい知識をもとに有利に交渉を進めることができます。
また、会社が重大な労働問題だと認識し、交渉に応じる可能性が高まります。
不当解雇や悪質な退職勧奨を受けた場合でも、弁護士が交渉することで、解雇日以降の賃金や和解金、慰謝料、退職金の上乗せの請求を行い、金銭的な解決を図ることができるでしょう。
労働審判や裁判で争うことになると多くの時間や労力が必要となり、精神的な負担も大きくなります。弁護士なら訴訟代理人としてサポートできますので、ご自身の負担は大きく軽減されるでしょう。
整理解雇や退職勧奨への対応方法などについて解説しました。
解雇や退職勧奨のトラブルは、精神的にも経済的にも大きな負担となるので、早い段階から弁護士に相談することをおすすめします。
不当解雇やしつこい退職勧奨など、コロナ禍における労働問題でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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