業務上で必要な情報を意図的に伝えない、誹謗中傷を行う、不必要な作業を延々と行わせるなど、職場内でのいじめにはさまざまな形態があります。
その中でもリストラを目的とした職場いじめは、特に「リスハラ(リストラ・ハラスメント)」と呼ばれ、違法な退職勧奨と判断される可能性が高い行為です。
今回は、企業から現在リスハラを受けている場合、リスハラを受けて退職を選ばざるを得なかった場合に、損害賠償請求訴訟の提起など、企業に対して何らかの責任追及ができないかという疑問について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
リストラとは「Restructuring(リストラクチャリング)」、すなわち再構築です。
本来の意味は企業経営に関わらないものですが、日本では企業経営の場面で人員や経費の削減を行うといった方法により経営を立て直すことで、たとえば労働者に対して自主的な退職を促したり早期退職の募集を行ったりすることなども含みますが、一般的には経営立て直しのための解雇を指して使われることが多いでしょう。
本稿では、リストラを、経営立て直しのために解雇のほか労働者を退職させることを意味するものとして使用します。
リストラとしての解雇は、整理解雇と呼ばれます。この整理解雇は企業が無制約で行えるものではありません。普通解雇や懲戒解雇の場合とは異なり、落ち度のない労働者保護のため、特に厳格な基準が判例で示されています。
具体的には、以下4つの要件を基準に総合的に判断し、これらを満たしていないと、整理解雇は法的根拠のない不当解雇として無効となります。
たとえば、リストラをしたにもかかわらず別途求人広告を出している場合などは不当解雇として無効となる可能性が高いでしょう。
企業が労働者を整理解雇した場合、前記の4つの要件を基準にその有効性が厳しく判断されます。
もし当該労働者が不当解雇として争い、解雇が無効と判断された場合には、企業は労働者に対して不就労期間中の賃金補償などの義務を負うことになります。
他方、労働者から退職届の提出を受けて自主退職となった場合や労働者に退職勧奨をして合意退職が成立した場合には、企業は整理解雇の要件を備える必要がなくなり、上記のリスクを負うこともなくなります。
そこで企業は退職勧奨を行うなどして、労働者から退職届を提出させようとすることがあるようです。
その一環として生じるのが人員整理目的での職場いじめ、すなわちリスハラなのです。
リストラ目的での職場いじめには、以下のようなものがあります。
職場いじめは、態様によって刑法上の脅迫罪(刑法第222条)や強要罪(刑法第223条)に該当する可能性があります。たとえば、暴言などで脅して無理やり退職を迫るようないじめです。
また、言葉によるいじめの場合は名誉毀損(きそん)罪(刑法第230条)や侮辱罪(刑法第231条)となる可能性も否定できません。行為によっては、暴行罪(刑法208条)、傷害罪(刑法204条)や強制わいせつ(刑法第176条)などが問える可能性もあります。
民法上では不法行為(民法709条)に該当する可能性があり、損害賠償請求ができる可能性があるでしょう。
リストラを目的とした不当ないじめは、それ自体が不法行為ないし債務不履行(安全配慮義務違反)として慰謝料請求の対象となる可能性があります。
リストラを目的としたいじめがいくら不当だったとしても、具体的な被害を受けた事実を証明できなければ、慰謝料請求はできません。
被害者からの一方的な証言だけで慰謝料請求を認めては、思い込みや勘違い、事実無根の嫌がらせといったケースを排除できなくなるからです。
そこで、慰謝料請求が認められるためには被害を明確に示す証拠が必要となります。
証拠が全くない場合や証拠として弱く、いじめがあった事実を証明することができない場合には、慰謝料請求は認められません。
では、慰謝料請求に使える証拠とはどのようなものでしょうか。
職場いじめによる被害を示す証拠としては、あなた自身や周囲にいた方々の証言に加えて以下のようなものが挙げられます。
いつ、どこで、どのような被害を受けたのかを、裁判所にも伝えられるような記録や文書が必要です。
たとえば、退職勧奨が行き過ぎて胸ぐらをつかまれ殴られたといった場合は、殴られてアザになった部位の写真を撮り、病院へ行って診断書を出してもらうとよいでしょう。
上司や経営者から退職を迫られる際に暴言を吐かれた場合には、その暴言を録音しておくのが確実です。
退職する意思がないと伝えたにもかかわらず何度も退職を強要するなどの事実を示すメールや文書がある場合、それらの実物やデータを確保しておきましょう。
そのほか、手書きの日記などであったとしても、日付や被害の内容が具体的かつ詳細に記されていた場合は、有力な証拠となる場合もあります。
職場いじめだと思った場合には内容を細かく書き記しておくとよいでしょう。
リストラ目的のいじめを受けているときは、
いち早く弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談する利点としては、以下が挙げられます。
企業との裁判では、あなた自身がリストラ目的の職場いじめがあったことを証拠をもって立証しなければなりません。しかし、有力な証拠の見分け方は難しく、どうそろえればよいかもわからないことがあります。
相談を受けた弁護士は、何をどのように集めればよいのかを具体的にアドバイスできます。
確実な証拠を確保するための行動に取り掛かることができるでしょう。
前述のとおり、リストラを目的としたいじめ行為は刑法上の犯罪や不法行為に該当する可能性があります。また、退職勧奨もその態様によっては違法となります。
いじめにあってしまっている状況では、ご自身でその中止を求めることは困難でしょう。
弁護士がその違法性を指摘して中止を求めれば、退職勧奨やいじめ行為が中止される可能性が高まります。望まずに退職に追い込まれることを防げるかもしれません。
労働者が単独で企業と交渉しようとしても、相手をしてもらえないケースもあるでしょう。企業側の弁護士があなたへの対応を行うこともあります。そうなれば、あなた一人で立ち向かい、交渉することは困難ではないでしょうか。
しかし、弁護士に依頼すれば、あなた自身が矢面に立つ必要はありません。
弁護士に交渉を任せることによって、慰謝料請求の際に受ける精神的な負担が軽減されるとともに、あなた自身は次の仕事を探すことに専念するなど、効率的な行動が可能となります。
慰謝料請求は和解で終わることも少なくありません。和解できれば、事件を長引かせることなく、次の仕事へ切り替えることができる可能性が高いでしょう。
しかし、折り合うことができず、和解に至らないこともあります。
その場合、あらかじめ弁護士に依頼していれば、交渉の段階で「いざとなれば裁判を起こし、戦う用意がある」ということを示せます。
あらかじめ訴訟も辞さないという覚悟を示しつつ交渉することで、結果として慰謝料の増額が実現したり、早期解決の可能性を高めたりすることができるでしょう。
万が一、訴訟となったとしても、弁護士は訴訟代理人として企業側と争うことが可能です。裁判手続きは非常に複雑であるため、弁護士に一任することをおすすめします。
今回は、リストラを目的とした職場いじめ(リスハラ)を受けた場合に、慰謝料請求ができるか、その際に弁護士に依頼するメリットなどについて説明しました。
退職勧奨は、方法によっては違法性が認められるケースがあります。
特に、パワハラやセクハラによる退職勧奨は、刑法上の犯罪となることもあり得るでしょう。職場でリストラ目的のいじめを受けていて損害賠償請求を考えているのであれば、証拠を集めることがとても重要です。
職場いじめや退職勧奨に悩んでいるのであれば、まずはベリーベスト法律事務所の弁護士までご相談ください。親身に対応いたします。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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1人で悩むより、弁護士に相談を
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