会社によっては夜間勤務や夜間残業をしなければならないところもあるでしょう。労働基準法では、午後10時から翌午前5時までの労働を夜間勤務と定義して、会社に対して、深夜労働の割増賃金の支払いを義務付けています。
夜間勤務は、時間外労働や休日労働が重複することもあるなど残業代計算が複雑になりますので、基本的なルールをしっかりと身につけておくことが大切です。
今回は、夜間勤務の定義、残業代・休日の計算方法や注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
夜間勤務とは、法律上どのように定義されているのでしょうか。
以下では、夜間勤務に関する基本事項を説明します。
夜間勤務とは、一般的に夜間に勤務することを指す言葉で、法律用語ではありません。
労働基準法では、午後10時から翌午前5時までの時間帯に働くことを「深夜労働」と定義しており、この深夜労働のことを「夜間勤務」と呼ぶこともあります。
本コラムでは、夜間勤務を深夜労働のこととして説明します。
なお、夜間勤務をする場合、日をまたいで働くことになりますが、法律上、このような二暦日にわたる勤務については、始業時刻の属する日の労働として、一日としてカウントする扱いになっています。
夜間勤務は、労働者であれば誰でもできるというわけではありません。
法律上、「年少者」と「妊産婦」については夜間勤務が禁止または制限されています。
① 年少者
労働基準法では、18歳未満の年少者に夜間勤務させることを原則として禁止しています(労働基準法61条1項)。
ただし、以下のようなケースであれば例外的に年少者でも夜間勤務をすることができます。
② 妊産婦
妊産婦とは、妊娠中および産後1年を経過していない女性をいいます。
妊産婦から請求があった場合、夜間勤務をさせることはできません。
夜間勤務は、24時間営業のコンビニエンスストア、インターネットカフェや深夜も営業している飲食店、カラオケ店、レンタル店などで行われることが多いです。
また、24時間稼働する工場や夜間の警備を行う警備員なども夜間勤務の多い職業として知られています。
その他にも、看護師、介護士、トラック運転手なども夜間勤務が多く発生します。
このように、さまざまな職業で夜間勤務がされていますので、「自分のことかも」と思ったら、きちんと夜間勤務の割増残業代をもらっているか確認するようにしましょう。
夜間勤務の残業代はどのように計算すればよいのでしょうか。
以下では、夜間勤務の残業代の基本的な計算方法と具体的な計算例を説明します。
残業代は、以下のような計算式に基づいて計算します。
なお、上記の月給には以下のような手当は含まれませんので注意が必要です。
手当についての注意点
ただし、上記の名称であれば何でも基礎賃金から除外出来るわけではありません。
家族の人数に関係なく支給される家族手当、通勤距離に関係なく一律に支給される通勤手当、住居に要する費用に関係なく住居形態ごとに一律支給される住居手当等は、除外できない可能性があります。
② 割増賃金率
割増賃金率は、残業時間に応じて、以下のように定められています。
夜間勤務の場合、時間外労働と深夜労働が重複することがありますが、その場合、50%以上の割増率が適用されます。
また、休日労働と深夜労働が重複する場合は、60%以上の割増率が適用されます。
③ 残業時間
夜間勤務時の残業代計算にあたっては、時間を区別して計算しなければなりません。
このような条件で働く労働者がある日に午前10時から翌午前0時まで働いたとします。この場合の夜間勤務の残業代は、以下のように計算します。
労働時間 | 種類 | 計算方法 | 賃金 |
---|---|---|---|
10:00~19:00 | 所定労働時間 | 1200円×8時間 | 9600円 |
19:00~22:00 | 時間外労働時間 | 1200円×1.25×3時間 | 4500円 |
22:00~0:00 | 深夜労働+時間外労働 | 1200円×1.5×2時間 | 3600円 |
夜間勤務をする場合、以下の点を押さえておきましょう。
夜間勤務は、深夜労働の割増賃金が適用されますが、時間外労働や休日労働が重複することもあり、残業代の割増率や残業代の計算方法が複雑です。
そのため、残業代の計算過程で誤りが生じることで、残業代の未払いが生じる可能性があります。
特に、夜間勤務をメインで働いている人ほどその傾向が強いため、夜間勤務が長い方は、きちんと残業代が支払われているかをチェックすることが大切です。
労働安全衛生法では、年に1回の定期健康診断のほか、一定の要件を満たす労働者に対して、年2回の健康診断の受診を義務付けています。
夜間勤務を常態として週に1回以上または月に4回以上行っている労働者は、年2回の健康診断の受診が必要となります。
夜間勤務をする労働者に対して、法律上必要な健康診断を受診させなかった場合には、労働安全衛生法違反となり、事業者に対して、50万円以下の罰金が科されます。
夜勤から日勤で連続勤務すること自体は違法ではありません。
しかし、このような働き方をしていると36協定の上限を超えた労働時間(残業時間)になることがあり、その場合は法律違反となる可能性があります。
また、労働基準法では週1日または4週に4日の法定休日をあたえることを義務付けています。
夜勤明けに休みを与える場合、暦日(午前0時から午後12時までの24時間)単位で休ませる必要がありますので、夜勤明けの土曜日を休みとして、日曜日に出勤させるようなケースでは休日を与えたことにはなりません。
このように夜間勤務は、シフトの組み方によっては違法な働き方になっていることもありますので、注意が必要です。
管理監督者には時間外労働や休日労働などの労働基準法の規制が適用されません。
しかし、夜間勤務の割増賃金については、支払ってもらうことが可能です。
「管理監督者だから」などを理由として、深夜労働分の割増賃金が支払われていなければ、会社に対して請求することができます。
なお、「管理職」と「管理監督者」とは異なる概念です。
課長や部長といった管理職であれば管理監督者だから割増賃金を払わなくていい、と会社も勘違いしているケースが散見されます。
未払い残業代の請求をお考えの方は弁護士に相談することをおすすめします。
残業代計算は、とても複雑な計算方法になりますので、知識や経験がない方では正確な残業代計算は困難です。
会社からきちんと残業代が支払われているかをチェックするには、弁護士のサポートが必要になりますので、 まずは弁護士に相談するようにしましょう。
弁護士であれば、実際の残業代計算から未払い残業代の請求まですべてサポートしてくれますので、ご自身の負担はほとんどありません。
夜間勤務で働いている方は、夜勤と日勤の連続勤務により法律上要求されている休日が付与されていない可能性もあります。
法定休日は、法律上保障された労働者の権利ですので、適切に休日が付与されていない場合には、会社に対して休日を付与するよう求めていくことができます。
また、法定休日に働いている場合は、休日労働に対する割増賃金を請求することができます。
弁護士に依頼すれば、これらの対応もすべて任せることが可能です。
会社に対して未払い残業代を請求する場合、まずは会社との話し合いをする必要があります。しかし、労働者個人で話し合いを求めて、真摯に対応してくれず、適当にはぐらかされてしまうケースも少なくありません。
弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として会社と交渉することができますので、会社も真摯に対応してくれる可能性が高くなります。
万が一、交渉が決裂したとしても、 弁護士に依頼していれば労働審判や裁判にも引き続き対応してもらうことができます。
夜間勤務は、午後10時から午前5時までの労働時間であると労働基準法で定められています。
夜間勤務は、割増賃金が発生する時間帯と割増率が変わる時間帯があるため、計算が複雑になることから、正確に計算をするには、弁護士のサポートが不可欠です。
割増された給与が支払われているか不安な方や未払い残業代の請求を検討している方は、 ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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