労働組合とは、労働条件や労働環境の改善などを目的として労働者により結成される団体です。労働者個人では、改善が難しいような事項でも労働組合の団体交渉を利用すれば会社と対等な立場で交渉を進めることができます。
労働組合は労働者にとって非常に心強い団体ですが、会社によっては労働組合が存在しないこともあります。このような場合には、労働者が労働組合を作ることも可能です。
ただし、労働組合を作るにはいくつかの条件を満たさなければなりません。
今回は、労働組合の作り方や労働組合を結成するメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
労働組合とは、労働条件や労働環境の改善など、より良い職場環境を作ることを目的として、労働者により結成される団体です。
一般的に、労働者は使用者よりも弱い立場にあります。
そのため労働者個人では実現が難しい内容でも、労働組合の組織力を利用することで、労働条件の改善や良好な職場環境の整備などを実現できる可能性が高くなります。
このような労働組合には、憲法により以下のような権利が保障されています。
労働者には、憲法により団結権が保障されていますので、自由に労働組合を結成することができます。
ただし、労働委員会による救済手続等、労働組合法の保護を受けられる労働組合を結成するためには、以下のような条件を満たしていなければなりません(労働組合法2条)。
労働組合は、労働者が主体となって組織する団体ですので、使用者の利益代表者を労働組合に加入させることはできません。
使用者の利益代表者にあたる人とは、以下のような立場の人になります。
また、社長の指示に従って組織された団体については、主体性の要件を欠くため、労働組合としては認められません。
労働組合は、労働者が自主的に結成する組織ですので、使用者から経理上の援助を受けている場合には、労働組合として認められません。
経理上の援助にあたるものとしては、以下のようなものが挙げられます。
労働組合は、労働条件の維持・改善を図ることを主な目的としている必要があります。
そのため、従業員の親睦や政治活動などを主な目的として結成する団体は、労働組合としては認められません。
労働組合は、以下の事項を含む組合規約を定めて、公正かつ民主的な運営を確保することが条件となります(労働組合法5条2項)。
労働組合を作ることで解雇や降格などの不安がある方もいるかもしれません。
しかし、労働組合法では以下に挙げる行為を「不当労働行為」として禁止していますので、労働組合の結成により不利益を受ける心配はありません。
具体的には以下のような行為が禁止されています。
団体交渉は、憲法上保障されている権利ですので、正当な理由なく会社側は団体交渉の申し入れを拒否することはできず、団体交渉の拒否は、不当労働行為に該当します。
会社側は、労働組合の要望に応じる義務まではありませんが、交渉には応じたうえで労働組合の要望を十分に聞き、資料を交付し、説明を尽くすなど誠実に交渉する義務があります。
そのため、以下のような対応は、団体交渉の拒否にあたる可能性があります。
具体的には、以下のような行為が報復行為にあたります。
労働組合結成の基本的な流れは、以下のようになります。
労働組合は、労働者が2人以上集まれば、いつでも自由に結成することができます。
ひとりでは労働組合を結成することができませんので、まずは労働組合に加入してくれる仲間を集める必要があります。
「今の職場の課題を解消したい」という共通の思いを持つ仲間に声をかけてみるとよいでしょう。
労働組合の結成に必要なメンバーが集まったら、準備委員会を発足して、以下のような具体的な取り組みを進めていきます。
労働組合結成の意識が醸成され、基本的な知識が身についたら、結成大会に向けて以下のような準備を進めていきます。
上記の準備が整い、
・加入対象者全員の同意を得た
または
・加入対象者全員に呼びかけをし、過半数の同意を得た
タイミングで結成大会を開催します。
結成大会は、一般的に以下のような流れで進めていきます。
結成大会が終わると、その日から労働組合としての活動をスタートできます。
労働組合を結成したことを明らかにするために、会社に対して、労働組合結成通知書を送付します。
労働組合を結成するにあたっては、主に以下のような費用が発生します。
労働組合結成にかかる期間については、ケース・バイ・ケースですが、一般的には組合員となるメンバーが固まり、結成に必要な書類が整ってからおおよそ1~2か月程度が目安となります。
労働組合の結成・運営を弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。
会社側に顧問弁護士がいる場合、会社は日常的に法律上のアドバイスやサポートを受けていますので、労働組合が会社と対等に交渉するためには、労働組合側も法的な面からアドバイスやサポートを受ける必要があります。
弁護士に相談をすれば労働組合の運営に関して適切なアドバイスをもらうことができますので、会社からの不当な介入があったとしても適切に対応することができます。
労働組合の結成や労働組合に加入したことなどを理由に解雇や降格、減給などの処分を受けた場合には、不当労働行為にあたる可能性があります。
不当労働行為があった場合は、労働委員会に対して救済申し立てをすることができますが、結成したばかりの労働組合などにおいては、どのように対応すればよいかわからないことが考えられます。
弁護士に相談をすれば、不当労働行為が発生した場合の対応をサポートしてもらえますので、救済命令を出してもらうことができるでしょう。
労働組合には、集団として会社と労働条件などの改善について交渉する役割があります。
個人では難しい労働条件や労働環境の改善の申し入れも、労働組合であれば会社と対等な立場で交渉ができますので、要求を実現できる可能性が高いといえるでしょう。
ただし、労働組合法によって保護されるたには必要な条件を満たさなければならないため、労働組合を作ることを検討している場合には弁護士に相談することがおすすめです。
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