「残業代は何時間から発生するのか?」残業代のルールを知らない方で、このような疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。正確なルールを知らないために、正しく残業代が支払われているのかどうか分からない方もいらっしゃるかと思います。
実は残業代は、所定労働時間を1分でも超えれば発生します。正しい方法で残業代を計算した上で、きちんと残業代が支払われていないことが分かった場合は、弁護士のサポートを受けて未払い残業代を請求しましょう。
本記事では、残業に関する基本的なルールや、残業代の計算方法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
実際の労働時間に比べて、残業代がカットされているように感じている方はいらっしゃいませんか。
残業代の計算や支給を不適切な方法で行っている企業は、実のところたくさんあります。正しいルールに基づいて残業代を計算し、支給漏れがあれば企業に対して未払い残業代を請求しましょう。
まずは残業に関する基本的なルールを解説します。
会社が定める所定労働時間(後述)を1分でも超えれば、残業代が発生します。
また、休日に働いた場合にも、1分単位で残業代が発生します。
例外的に、以下の場合には残業代の切り捨てが認められますが(昭和63年3月14日基発第150号)、その他の理由で残業代を切り捨てることはできません。
残業代を計算する際の基準として知っておくべきなのが、「所定労働時間」と「法定労働時間」です。
残業代を計算する上では、「法定休日」と「法定外休日」の区別についても知っておく必要があります。
法定休日を1週間に1日付与する場合において、1週間に2日以上の休日を設けるときは、そのうちいずれか1日のみが法定休日となり、その他の休日は法定外休日となります。
どの休日が法定休日に当たるのか
どの休日が法定休日に当たるのかは、以下の要領によって決まります。
法定休日に労働した場合は休日労働となりますが、法定外休日に労働した場合は法定内残業または時間外労働となります。
残業代が発生する労働(=残業)は、以下の種類に分類されます。
法定内残業を除く残業については、下表の割増率による割増賃金が適用されます。
残業の種類 | 割増率 |
---|---|
法定内残業 | - |
時間外労働 | 25%以上(月60時間を超える時間外労働については50%以上※) |
休日労働 | 35%以上 |
深夜労働 | 25%以上 |
時間外労働かつ深夜労働 | 50%以上(月60時間を超える時間外労働については75%以上※) |
休日労働かつ深夜労働 | 60%以上 |
休日労働の場合の割増賃金の考え方
なお、休日労働となる場合は、休日労働の割増のみが適用され、1日8時間を超えても重ねて時間外労働の割増が適用されることはありません。
使用者が労働者に対して時間外労働または休日労働を指示するためには、事業場ごとに労働者側との間で「36協定」を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません。
36協定では、時間外労働・休日労働を指示できる場合や、上限時間・上限日数などのルールを定めることができます。
使用者が労働者に、時間外労働や休日労働を指示する際には、36協定の制限を守らなければなりません。
以下の労働者については、労働時間や休日などの法規制が適用されず、残業代が発生しません。ご自身が当てはまるかどうか確認しましょう。
前述のとおり、残業代は原則として1分単位で計算します。
残業代計算の方法は、以下のとおりです。
なお、上記は原則的な計算方法であり、特殊な勤務形態で働く労働者には異なる計算方法が適用される場合がある点にご注意ください。
もし、正確な残業代を知りたい場合は、弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
「1時間当たりの基礎賃金」は、残業代の「時給」に相当します。
月給制で働く労働者の1時間当たりの基礎賃金は、以下の式で求めます。
(例)
1か月の総賃金(上記手当を除く)が32万円、月平均所定労働時間が160時間の場合
1時間当たりの基礎賃金
=32万円÷160時間
=2000円
残業時間は、「法定内残業」「時間外労働」「休日労働」「深夜労働」に分類して集計しましょう。
なお、深夜労働とその他の労働は重複も認められています。
残業時間の集計に当たっては、残業の証拠を確保することが大切です。
勤怠管理システムやタイムカードの記録など、客観的な証拠をできる限り集めましょう。
最終的な残業代の金額は、以下の式によって計算します。
(例)
1時間当たりの基礎賃金を2000円とした場合、
法定内残業:20時間
時間外労働:30時間(うち深夜労働10時間)
休日労働:10時間
残業代
=2000円×(20時間+1.25×20時間+1.5×10時間+1.35×10時間)
=14万7000円
未払い残業代を請求する際の手続きの流れは、大まかに以下のとおりです。
未払い残業代請求の成功率を高めるためには、上記の手続きを一括して弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士に相談すれば、証拠集めの段階からアドバイスを受けることができ、漏れなく残業代を回収できる可能性が高くなります。
未払い残業代を請求できる権利は、発生から3年間が経過すると時効によって消滅してしまいます(労働基準法第115条、附則第143条第3項)。
残業代の未払いが生じているのではないかと疑っている方は、お早めに弁護士へご相談ください。
弁護士であれば、残業代の証拠集めの段階からアドバイスができるというメリットを紹介しましたが、弁護士に依頼するメリットはそれ以外もあります。
未払いの残業代の請求はお客さまご自身でも可能です。
しかし、会社が「労働者が何か言っているだけだ」と侮って、話し合いのテーブルにつかない、相手にしないということもあります。
この点、弁護士であれば、会社も対応せざるを得ません。
また、交渉が始まってからも法的知識を基に交渉できるため、未払い残業代をしっかり取り返せる可能性が高くなります。
また、交渉が不調に終わった場合は、労働審判や裁判といった法的手続きを取ることになりますが、その場合も弁護士であれば代理人となることができます。
1章や2章で解説しましたが、正しく残業代の金額を計算するには、残業代に関する法的知識が必要です。
また、残業代はお客さまの働き方によっても変化します。
たとえば固定残業代制で働いていれば、その制度の特徴を考慮したうえで、残業代計算をしたり交渉をしたりする必要があります。
この点、弁護士であれば、正しい残業代計算が可能です。
残業代の計算が難しいと感じた場合には弁護士に任せることも検討しましょう。
残業代は、所定労働時間を1分でも超えた場合に発生します。
また、休日の労働や深夜の労働にも、労働基準法に基づいて手当が発生します。
未払い残業代は、発生から3年が経過するまで請求可能です。
在職中だけでなく、退職後であっても請求できます。
残業代等を漏れなく回収するためには、残業時間を適切に集計した上で、正しいルールに基づいて金額を計算することが大切です。
弁護士のサポートを受けながら、会社に未払い残業代を請求しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、残業代請求についてのご相談を随時受け付けております。
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