残業をした場合には、残業時間に応じて残業代が支払われるということは多くの方が認識していますが、実際にどのような計算方法によって残業代が支払われるのかを理解している方は少ないでしょう。
残業代計算の基本的なルールを理解することによって、残業代の未払いを回避することができます。
今回は、基礎賃金を用いた残業代の計算方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
残業代の計算では、「基礎賃金」というものが用いられます。
基礎賃金と基本給ではどのような違いがあるのでしょうか。以下で、詳しく解説します。
基本給に残業手当や役職手当などの各種手当、通勤交通費、インセンティブなどが含まれたお金が毎月の給与として支払われます。
残業代を計算する場合には、基礎賃金が用いられますので、基礎賃金を計算することが残業代計算の第一歩となります。
毎月の給与には、基本給のほかにも残業手当、家族手当、通勤手当などさまざまな手当が含まれていますが、すべての手当が基礎賃金に含まれるわけではありません。
労働者の個人的事情に基づき支払われる手当については、労働との間に直接的な関係がないため、基礎賃金の基礎からは除外されます。
基礎賃金は、残業代や休日手当の計算に用いられるものですので、残業手当、休日手当が除外されるのは当然として、以下のような手当についても基礎賃金からは除外されます。
これらの除外対象の手当に該当するかどうかは、手当の名称だけではなく実態に即して判断することがポイントです。
残業代は、「残業代=基礎賃金×残業時間×割増率」によって計算をするのが基本です。
以下では、残業代計算に必要となる各項目について説明します。
基礎賃金とは、既に説明したとおり、基本給に一部を除いた各種手当を加えて計算をした、1時間あたりの賃金額のことをいいます。
時給制の場合には、時給額がそのまま基礎賃金になりますので、計算は簡単ですが、月給制の場合には、1か月あたりの賃金額を1か月の所定労働時間で割ることによって、基礎賃金を算出する必要があります。
具体的には、以下のような計算式によって、1時間あたりの基礎賃金を計算します。
なお、1年間の所定労働日数については、会社によって異なってきますので、会社の就業規則を確認するようにしましょう。
残業時間については、法外残業と法内残業を分けて計算する必要があります。
労働基準法では、1日8時間、1週40時間を法定労働時間と定めていますので、それを超えて働いた場合が法外残業となります。
法外残業をした場合には、後述する割増率によって増額された割増賃金の支払いが必要です。
たとえば、所定労働時間が6時間と定められている会社で、1日7時間働いたとしても、法定労働時間の範囲内ですので、1時間分が法内残業となります。
法内残業をした場合には、通常の1時間あたりの賃金を支払う必要がありますが、割増賃金の支払いは不要です。
法外残業をした場合には、所定の割増率によって増額をした割増賃金が支払われます。
法外残業の割増率は、25%以上とされています。
なお、法外残業と深夜労働が重なる場合には、深夜労働の割増率である25%以上も適用されますので、合計で50%以上の割増率が適用されます。
また、深夜労働と休日労働が重なる場合には、休日労働の割増率である35%以上も適用されますので、合計で60%以上の割増率が適用されます。
なお、休日労働となる日については、休日労働の割増率である35%以上のみが適用されますので、1日8時間を超えて働いたとしても、法外残業の割増率と重なることはなく、35%以上のままです。
ただし、上記の計算方法は、あくまでも基本的な残業代の計算方法となります。
雇用形態や給与形態によっては、残業代計算の方法が異なる場合もありますので注意が必要です。
以下のような雇用形態・給与形態がとられている場合には、一般的な残業代計算よりも複雑な計算が必要になります。
固定残業代とは、実際の残業時間にかかわらず、一定時間分残業したものとみなして、毎月一定額の残業代を支払う制度のことをいいます。
固定残業代は、定額残業代やみなし残業代とも呼ばれることもあります。
固定残業代が支払われている場合には、一定時間分の残業代については既に支払い済みですので、あらためて残業代を計算する必要はありません。
しかし、固定残業代が支払われていたとしても、一定時間を超える残業をした場合には、固定残業代とは別に残業代を請求することが可能です。
仮に固定残業代が形式的に支払われている場合でも、固定残業代部分と通常の労働時間に対する賃金部分が明確に区別されていない場合には、固定残業代として支払われている賃金についても、残業代計算の基礎賃金に含めて計算をすることになります。
裁量労働制とは、実際の労働時間ではなく、あらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度のことをいいます。
裁量労働制がとられている場合には、実際の労働時間ではなくみなし労働時間が残業代計算の基礎となります。
そのため、裁量労働制で残業代が発生するのは、みなし労働時間として法定労働時間を超える時間が設定されている場合に限られます。
年俸制とは、労働者の成果や業績に応じて、年単位で賃金総額を決定する制度のことをいいます。従来の年功序列型の給与体系ではなく、成果主義や実力主義に基づく給与体系です。
年俸制では、1年間の給与総額があらかじめ決定されることから、残業代が発生しないと誤解している方も多いですが、年俸制であっても残業代を請求することは可能です。
年俸制では、基本給ではなく年俸額をベースにして基礎賃金を計算することになります。
正確な残業代が知りたいという方は、まずは、弁護士にご相談ください。
近年は、多様化する働き方に合わせて、さまざまな雇用形態や給与形態がとられるようになってきています。
固定残業代、裁量労働制、年俸制など通常とは異なる雇用形態や給与形態がとられている場合、基本給の考え方や残業代の計算方法が複雑になり、法的知識がなければ、正確に残業代を計算することは難しい場合もあるでしょう。
弁護士であれば、雇用形態や給与形態に応じて、正確な残業代を細かく計算することができますので、ひとりでは残業代計算ができないという場合には、まずは、弁護士にご相談ください。
弁護士による残業代計算の結果、未払いの残業代が発生していることがわかった場合には、会社に対して、未払いの残業代を請求することが可能です。
弁護士に依頼をすれば、労働者本人に代わって弁護士が会社への残業代請求や会社との交渉を行うことができますので、会社と交渉をしなければならないという精神的負担を大幅に軽減することができます。
会社との話し合いで解決することができなかったとしても、弁護士に依頼をしていれば、その後の労働審判や訴訟の対応も引き続き任せることができますので、安心です。
残業代を計算する場合には、基本給に一部を除く各種手当を加えた1時間あたりの基礎賃金を用いて計算を行います。
基本的な残業代の計算方法でも、法的知識がなければ正確な計算が難しいものといえますので、固定残業代、裁量労働制、年俸制などの複雑な雇用形態や給与形態がとられている場合には、その計算はさらに複雑なものとなります。
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