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残業代請求の弁護士コラム

会社にタイムカード・勤怠を改ざんされた! 残業代請求できる?

2024年08月26日
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会社にタイムカード・勤怠を改ざんされた! 残業代請求できる?

会社側によるタイムカードの改ざんは、私文書変造罪や労働基準法違反として処罰の対象となる行為です。

タイムカードの改ざんが行われると、支払われる賃金が本来よりも少なくなることになるため、労働者は不利益を被ります。このような行為が判明した場合には、速やかに弁護士へ相談して、会社に対して未払い賃金の支払いを請求しましょう。

本コラムでは、タイムカードの改ざんに関する問題点や対処法、相談先、未払い賃金の請求方法などについて、ベリーベスト法律事務所 労働問題専門チームの弁護士が解説します。

1、タイムカード改ざんに関する問題点

タイムカードの改ざんは、労働者側の不正打刻(代理打刻等)に限らず、会社側によって行われるケースもあるでしょう。

労働者が記録したタイムカードを会社側が改ざんする行為は、犯罪に該当する可能性があります。

改ざんされたタイムカードに基づいて支払われる賃金は、本来の金額よりも少なくなってしまうため、労働者としては、会社側の不適切な労務管理を見逃さずに指摘しなければなりません。

  1. (1)タイムカードの改ざんについて成立する犯罪

    会社側によるタイムカードの改ざんについては、以下の犯罪が成立する可能性があります。

    ① 私文書変造罪
    労働者が作成した紙のタイムカードを改ざん(変造)した場合には、私文書変造罪が成立します。
    タイムカードに労働者の署名または押印がある場合は「有印私文書変造罪」が成立し、法定刑は3か月以上5年以下の懲役です。

    タイムカードに労働者の署名・押印がいずれもない場合は「無印私文書変造罪」が成立し、法定刑は1年以下の懲役または10万円以下の罰金です。

    ※刑法:第159条第2項、第3項
    ② 電磁的記録不正作出・供用罪
    電子的に作成されたタイムカード(勤怠管理システムの記録)を改ざんした場合には、電磁的記録不正作出・供用罪が成立します。
    法定刑は5年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

    ※刑法:第161条の2第1項、第3項
    ③ 労働基準法違反(賃金未払い)
    改ざんしたタイムカードの内容に基づき、本来支払うべき額よりも少ない額の賃金を支払った場合には、会社側は賃金未払いの労働基準法違反によって処罰されます。
    法定刑は30万円以下の罰金です。

    ※労働基準法:第37条、第119条第1号
  2. (2)タイムカードの改ざんによって労働者が被る不利益

    タイムカードの改ざんが平然と当たり前のように行われる職場であるときは、過酷な労働環境であるケースが多いです。

    本来支払われるはずの賃金が支払われないという金銭面の不利益だけでなく、肉体面・精神面で、マイナスの影響を受ける可能性もあるでしょう。

    タイムカードの改ざんは、「あって当然のこと」ではありません
    会社側による改ざんが判明したら見逃さずに指摘し、是正を求めましょう。

  3. (3)よくあるタイムカードの改ざん例

    会社側によるタイムカードの改ざんは、一例として以下のような形で行われることがあります。

    • 上司が労働者に指示して、本来の退勤時間よりも前倒しでタイムカードを打刻させる
    • 労働者が打刻したタイムカードを、後から別のものに差し替える
    • 勤怠管理システムに入力されたデータを改ざんし、残業時間を本来よりも短く偽装する
    など

    ともに働く同僚などがこのような改ざんを受け入れているとき、同じように「仕方のないことだ」と受容する必要はありません

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2、タイムカードを改ざんされた場合の対処法

会社側にタイムカードを改ざんされた場合には、以下の対応を行い、本来の労働時間に基づく賃金の支払いを請求しましょう。

  • ① 会社に対してタイムカードの開示を請求する
  • ② タイムカード以外の証拠を用いて労働時間を立証する
  • ③ 文書提出命令の申し立て

各対応方法について、詳しく解説していきます。

  1. (1)会社に対してタイムカードの開示を請求する

    会社側には、労働契約上の付随義務として、特段の事情がない限り、労働者の開示要求に応じてタイムカード等を開示する義務があるとした裁判例があります(大阪地裁平成22年7月15日判決)。

    この裁判例があることを踏まえると、タイムカードの改ざんが疑われる場合には、会社に対して積極的にタイムカードの開示を請求するのが良いでしょう。

    会社側がタイムカードの開示請求に応じない場合には、訴訟手続きに関連して、以下の方法を通じて開示を求めることができます。

    ① 訴えの提起前における照会
    会社に対して訴え(訴訟)の提起を予告する通知を書面で行えば、予告通知をした日から4か月以内に限り、タイムカードに関する情報の書面回答を求めることが可能です(民事訴訟法第132条の2)。
    ② 裁判長に対する求釈明
    訴訟において裁判長は、訴訟関係を明瞭にするため、事実上および法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発することができます(=釈明権、同法第149条第1項)。

    訴訟当事者は裁判長に対し、釈明権を行使して必要な発問をするよう求めることが可能です(同条第3項)。タイムカードについても、裁判長に対して釈明を求めれば、会社側に対して提出を促してもらえる可能性があります。
    ③ 文書提出命令の申し立て
    訴訟における書証の申し出は、文書の所持者に対する文書提出命令を申し立てて行うことが認められています(同法第219条、第221条)。

    未払賃金支払請求訴訟において、タイムカードは労働者と会社との間の法律関係について作成された文書であるため、文書提出義務の対象と考えられます(同法第220条第3号)。

    タイムカードが文書提出義務の対象であると判断した場合、裁判所は会社側に対して、タイムカードの提出を命じます(同法第223条第1項)。

    なおも会社がタイムカードの提出に応じない場合には、裁判所は労働時間等に関する労働者側の主張を真実と認めることが可能です(同法第224条第1項)。
  2. (2)タイムカード以外の証拠を用いて労働時間を立証する

    労働時間は、タイムカード以外にも以下のような証拠を用いて立証できる可能性があります。

    証拠の一例
    • 会社のシステムへのログイン履歴
    • オフィスの入退館履歴
    • 交通系ICカードの乗車履歴
    • 業務メールの送受信履歴
    • 業務日誌
    など

    入手可能な証拠をできる限り集めて、未払い賃金請求に備えましょう。
    残業代請求の証拠について、詳しくは下記のコラムをご覧ください。


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3、タイムカードの改ざんが判明した場合の相談先

会社側によるタイムカードの改ざんが判明した場合には、労働基準監督署または弁護士にご相談ください。

  1. (1)労働基準監督署

    労働基準監督署は、労働基準法等の遵守状況について、事業場を監督する行政官庁です。
    会社側によるタイムカードの改ざんは労働基準法違反に当たるため、労働者はその事実を労働基準監督官に申告できます(同法第104条第1項)。

    申告を受けた労働基準監督署は、事業場に対して臨検(立ち入り調査)を行うことがあります。そこで違反が発見された場合は、是正勧告がなされます

    是正勧告に従わない場合は刑事訴追される可能性があるので、タイムカード改ざんを含む労働基準法違反の速やかな是正が期待できるでしょう。

    しかし、この是正勧告に従わない会社も存在します

  2. (2)弁護士

    弁護士は、紛争解決を取り扱う法律の専門家です。

    会社側によってタイムカードの改ざんが行われている場合は、未払い賃金が発生している可能性があります。そのようなとき、弁護士は労働者のために、未払い賃金の請求に必要な対応の大部分を代理して行うことが可能です。

    弁護士が法的根拠に基づいて請求を行うことにより、適正額の未払い賃金の支払いを受けられる可能性が高まります
    また、弁護士に対応を一任することで、労力・時間・ストレスを軽減できる点も大きなメリットです。
    タイムカードの改ざんに伴う未払い賃金請求をご検討中の方は、弁護士にご相談ください。
    弁護士に依頼するメリットについては、詳しくはこちらで解説しています。

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4、未払い賃金・未払い残業代の請求方法

会社に対する未払い賃金(未払い残業代)の請求は、以下の手順で行うのが一般的です。

  1. (1)会社との交渉

    会社との間で、未払い賃金の精算について交渉します。
    未払い賃金の発生根拠を明示して交渉すれば、適正な条件で和解できる可能性が高まります。

    会社側には、内容証明郵便で請求書を送付するのがよいでしょう。
    そうすることで、賃金請求権の消滅時効の完成が6か月間猶予されます(民法第150条第1項)。

  2. (2)労働審判の申し立て

    会社との交渉がまとまらない場合は、裁判所に労働審判を申し立てることが考えられます。

    労働審判は、労使紛争を迅速に解決することを目的とした法的手続きです。
    労働審判委員会(裁判官1名・労働審判員2名)による、調停または労働審判で紛争解決を図ります。

    労働審判の審理は原則として3回以内で終結するため、迅速な解決が期待できます

  3. (3)訴訟(裁判)の提起

    交渉や労働審判で解決ができなかった場合、未払い賃金請求を含む労使紛争は、最終的に訴訟(裁判)で解決を図ることになります。
    労働審判に対して異議が申し立てられれば自動的に訴訟へ移行するほか、労働審判を経ずに最初から訴訟を提起することも可能です。

    訴訟では、未払い賃金請求権の存在を労働者側が立証しなければなりません
    タイムカードを含めて、労働時間に関する客観的な証拠を提出できるかどうかがポイントになります。

    未払い賃金請求権は、当該賃金を請求できるときから3年間が経過すると時効により消滅します(労働基準法第115条、附則第143条第3項)。
    未払い賃金の時効消滅を避けるためにも、早めに弁護士へご相談ください。

    残業代の時効について、詳しくは下記のコラムをご覧ください。


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5、まとめ

会社側によるタイムカードの改ざんは、犯罪にも該当し得る違法行為です
タイムカードの改ざんが発覚した場合には、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。

タイムカードの改ざんに伴って未払い賃金を請求する際には、労働時間に関する証拠を集めるなど、十分な事前準備が求められます。
準備万端で未払い賃金請求を行うためには、弁護士のサポートを受けるのが安心です。

ベリーベスト法律事務所は、未払い賃金請求に関するご相談を随時受け付けております。会社側によるタイムカードの改ざんが発覚した場合には、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

労働問題専門チームの弁護士が、問題解決のためにサポートいたします。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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