会社側によるタイムカードの改ざんは、私文書変造罪や労働基準法違反として処罰の対象となる行為です。
タイムカードの改ざんが行われると、支払われる賃金が本来よりも少なくなることになるため、労働者は不利益を被ります。このような行為が判明した場合には、速やかに弁護士へ相談して、会社に対して未払い賃金の支払いを請求しましょう。
本コラムでは、タイムカードの改ざんに関する問題点や対処法、相談先、未払い賃金の請求方法などについて、ベリーベスト法律事務所 労働問題専門チームの弁護士が解説します。
タイムカードの改ざんは、労働者側の不正打刻(代理打刻等)に限らず、会社側によって行われるケースもあるでしょう。
労働者が記録したタイムカードを会社側が改ざんする行為は、犯罪に該当する可能性があります。
改ざんされたタイムカードに基づいて支払われる賃金は、本来の金額よりも少なくなってしまうため、労働者としては、会社側の不適切な労務管理を見逃さずに指摘しなければなりません。
会社側によるタイムカードの改ざんについては、以下の犯罪が成立する可能性があります。
タイムカードの改ざんが平然と当たり前のように行われる職場であるときは、過酷な労働環境であるケースが多いです。
本来支払われるはずの賃金が支払われないという金銭面の不利益だけでなく、肉体面・精神面で、マイナスの影響を受ける可能性もあるでしょう。
タイムカードの改ざんは、「あって当然のこと」ではありません。
会社側による改ざんが判明したら見逃さずに指摘し、是正を求めましょう。
会社側によるタイムカードの改ざんは、一例として以下のような形で行われることがあります。
ともに働く同僚などがこのような改ざんを受け入れているとき、同じように「仕方のないことだ」と受容する必要はありません。
会社側にタイムカードを改ざんされた場合には、以下の対応を行い、本来の労働時間に基づく賃金の支払いを請求しましょう。
各対応方法について、詳しく解説していきます。
会社側には、労働契約上の付随義務として、特段の事情がない限り、労働者の開示要求に応じてタイムカード等を開示する義務があるとした裁判例があります(大阪地裁平成22年7月15日判決)。
この裁判例があることを踏まえると、タイムカードの改ざんが疑われる場合には、会社に対して積極的にタイムカードの開示を請求するのが良いでしょう。
会社側がタイムカードの開示請求に応じない場合には、訴訟手続きに関連して、以下の方法を通じて開示を求めることができます。
労働時間は、タイムカード以外にも以下のような証拠を用いて立証できる可能性があります。
入手可能な証拠をできる限り集めて、未払い賃金請求に備えましょう。
残業代請求の証拠について、詳しくは下記のコラムをご覧ください。
会社側によるタイムカードの改ざんが判明した場合には、労働基準監督署または弁護士にご相談ください。
労働基準監督署は、労働基準法等の遵守状況について、事業場を監督する行政官庁です。
会社側によるタイムカードの改ざんは労働基準法違反に当たるため、労働者はその事実を労働基準監督官に申告できます(同法第104条第1項)。
申告を受けた労働基準監督署は、事業場に対して臨検(立ち入り調査)を行うことがあります。そこで違反が発見された場合は、是正勧告がなされます。
是正勧告に従わない場合は刑事訴追される可能性があるので、タイムカード改ざんを含む労働基準法違反の速やかな是正が期待できるでしょう。
しかし、この是正勧告に従わない会社も存在します。
弁護士は、紛争解決を取り扱う法律の専門家です。
会社側によってタイムカードの改ざんが行われている場合は、未払い賃金が発生している可能性があります。そのようなとき、弁護士は労働者のために、未払い賃金の請求に必要な対応の大部分を代理して行うことが可能です。
弁護士が法的根拠に基づいて請求を行うことにより、適正額の未払い賃金の支払いを受けられる可能性が高まります。
また、弁護士に対応を一任することで、労力・時間・ストレスを軽減できる点も大きなメリットです。
タイムカードの改ざんに伴う未払い賃金請求をご検討中の方は、弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼するメリットについては、詳しくはこちらで解説しています。
会社に対する未払い賃金(未払い残業代)の請求は、以下の手順で行うのが一般的です。
会社との間で、未払い賃金の精算について交渉します。
未払い賃金の発生根拠を明示して交渉すれば、適正な条件で和解できる可能性が高まります。
会社側には、内容証明郵便で請求書を送付するのがよいでしょう。
そうすることで、賃金請求権の消滅時効の完成が6か月間猶予されます(民法第150条第1項)。
会社との交渉がまとまらない場合は、裁判所に労働審判を申し立てることが考えられます。
労働審判は、労使紛争を迅速に解決することを目的とした法的手続きです。
労働審判委員会(裁判官1名・労働審判員2名)による、調停または労働審判で紛争解決を図ります。
労働審判の審理は原則として3回以内で終結するため、迅速な解決が期待できます。
交渉や労働審判で解決ができなかった場合、未払い賃金請求を含む労使紛争は、最終的に訴訟(裁判)で解決を図ることになります。
労働審判に対して異議が申し立てられれば自動的に訴訟へ移行するほか、労働審判を経ずに最初から訴訟を提起することも可能です。
訴訟では、未払い賃金請求権の存在を労働者側が立証しなければなりません。
タイムカードを含めて、労働時間に関する客観的な証拠を提出できるかどうかがポイントになります。
未払い賃金請求権は、当該賃金を請求できるときから3年間が経過すると時効により消滅します(労働基準法第115条、附則第143条第3項)。
未払い賃金の時効消滅を避けるためにも、早めに弁護士へご相談ください。
残業代の時効について、詳しくは下記のコラムをご覧ください。
会社側によるタイムカードの改ざんは、犯罪にも該当し得る違法行為です。
タイムカードの改ざんが発覚した場合には、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。
タイムカードの改ざんに伴って未払い賃金を請求する際には、労働時間に関する証拠を集めるなど、十分な事前準備が求められます。
準備万端で未払い賃金請求を行うためには、弁護士のサポートを受けるのが安心です。
ベリーベスト法律事務所は、未払い賃金請求に関するご相談を随時受け付けております。会社側によるタイムカードの改ざんが発覚した場合には、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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