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退職勧奨(退職勧告)とは? 拒否できる? 会社都合との違いなど

2025年11月26日
  • 不当解雇・退職勧奨
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退職勧奨(退職勧告)とは? 拒否できる? 会社都合との違いなど

突然、上司や人事から「退職してほしい」と告げられたら、驚きや不安で頭が真っ白になる方も多いでしょう。このような会社からの「退職を促されること」を「退職勧奨(退職勧告)」といいます。

退職勧奨はあくまで「会社からの提案」であり、必ず応じなければならないものではありません。しかし、拒否した場合や応じた場合には、それぞれ異なるリスクや影響があるため、正しい知識をもとに冷静に判断することが大切です。

今回は、退職勧奨の意味や会社都合退職との違い、拒否することはできるのか、納得できない場合の対処法についてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、退職勧奨(退職勧告)とは? 会社都合との違い

退職勧奨は、解雇や自己都合退職と混同されやすい制度です。
しかし、法的な位置づけや労働者への影響は大きく異なります

以下では、退職勧奨の基本的な意味と特徴、会社都合退職との違い、従業員側・企業側それぞれのメリット・デメリットについて説明します。

  1. (1)退職勧奨は、あくまで提案であって強制ではない

    退職勧奨とは、会社が従業員に対して「退職してほしい」と提案する行為です。

    これはあくまで会社からのお願いであり、法的拘束力はありません
    従業員が同意しなければ成立しないため、強制的に従業員を辞めさせる「解雇」とは異なります。

    退職勧奨は、人員整理や業績悪化など会社側の事情で行われることが多く、解雇よりも比較的柔らかい印象を与えるため、従業員とのトラブル回避を目的に使われることがあります。

    退職勧奨は、解雇や会社都合退職と混同されやすい制度です。
    それぞれの制度の違いは以下のとおりです。

  2. (2)解雇と退職勧奨との違い

    「解雇」とは、雇用契約を終了させる会社の一方的な意思表示のことをいいます。
    客観的合理性と社会的相当性が認められれば、労働者の意向に関わらず強制的に会社を辞めさせられてしまいます

    一方、「退職勧奨」は、会社側からの退職の提案に過ぎませんので、労働者の同意がなければ辞めさせられることはありません。

    このように強制力の有無という点で解雇と退職勧奨は異なります

  3. (3)会社都合退職と退職勧奨の違い

    「会社都合退職」とは、会社側の都合により労働者との雇用契約を終了することをいいます。

    「退職」という用語が含まれていますが、解雇や退職勧奨による退職も含まれています。

    会社都合退職と自己都合退職とでは、一般的に会社都合退職の方が失業保険の給付の面で有利です。
    そのため、退職勧奨に応じて退職する際は、「会社都合退職」として扱うように求めていくことが重要です。

2、退職勧奨が会社都合退職として扱われる条件

会社都合退職として扱われる条件には、以下のようなものがあります。

【会社都合退職として扱われる条件】
  • 倒産などによって離職した場合
  • 解雇などにより離職した場合(自己の責めに帰すべき重大な事由に基づく解雇などは除く)
  • 自己都合退職であっても「特定理由離職者」に該当する場合

退職勧奨に応じても離職することは「解雇などにより離職した場合」に含まれますので、基本的には会社都合退職として扱われます。
そのため、退職時には、離職票に「会社都合」と記載されているかどうかを確認することが重要です。

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3、退職勧奨のメリット・デメリット(従業員側・企業側)

退職勧奨には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
退職勧奨に応じる際には、メリット・デメリットを踏まえて慎重に判断するようにしましょう。

【退職勧奨のメリット】
従業員側
  • 退職金や再就職支援を交渉できる
  • 失業給付を早く受け取ることができる
企業側
  • 解雇より法的リスクが低い
  • 条件や時期を柔軟に設定できる

【退職勧奨のデメリット】
従業員側
  • 拒否することで職場の人間関係が悪化する
  • 短期間での退職を迫られる場合がある
  • 次の職場が決まっていないと収入面での不安が生じる
企業側
  • 拒否されると計画が進まない
  • 条件交渉の負担がある

4、退職勧奨は拒否できる? 応じるべきかの判断ポイント

退職勧奨は法的拘束力のない提案ですので、労働者側には拒否する権利があります。
しかし、拒否には一定のリスクも伴います

以下では、拒否・応諾それぞれの影響、条件交渉の注意点、判断基準を説明します。

  1. (1)退職勧奨は拒否できる! 拒否した場合のリスクとメリット

    退職勧奨は合意がなければ成立しません。
    したがって、納得できない場合や今後も勤務を希望する場合は、会社側の提案を拒否しても構いません

    ・メリット
    退職勧奨を拒否すれば、収入や雇用を維持することができ、転職活動を自分のタイミングで進められるなどのメリットがありますので、生活基盤の安定につながります。

    ・リスク
    ただし、退職勧奨を拒否すると、上司や同僚との関係悪化や希望しない部署への異動・配置転換が行われるなどのリスクがあります。
  2. (2)退職勧奨に応じる場合の注意点・条件交渉の進め方

    退職勧奨に応じる場合は、提示条件を十分に確認し、書面で残すことが不可欠です。

    特に、

    • 退職理由
    • 退職日
    • 退職金の有無や金額
    • 失業保険の取り扱い
    • 再就職支援制度の有無など

    は必ず明文化しましょう。

    また、条件に納得するまでは退職の意思を示さず、「現時点では合意できない」という姿勢を保つことが交渉の基本です。
    会社都合として扱われるかどうかは、離職票の記載によって決まるため、この点も交渉の重要項目です。

  3. (3)退職勧奨に応じるか迷ったときの判断基準

    退職勧奨を受け入れるかどうかは、以下のポイントを踏まえて判断することが望ましいです。

    【退職勧奨に応じるかどうかの判断基準】
    ・その会社で今後も働き続けたいか
    業務内容や職場環境に改善の見込みがあるかを検討します。

    ・提示された条件が自分に有利か
    退職金や失業給付の条件、再就職支援など、経済的なメリットが明確かどうかを確認します。

    ・退職後の生活資金やキャリアプランに余裕があるか
    生活費や転職期間をカバーできる資金が確保できているかが重要です。

    これらの要素を冷静に比較し、じっくりと判断することが大切です。
    迷いがある場合は、専門機関や労働問題に詳しい弁護士に相談し、第三者の意見を参考にすることをおすすめします。

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5、退職勧奨に応じた場合の影響や手続きの流れ

退職勧奨に応じる場合、その後の生活や条件面の確認が重要です。
以下では、会社都合と自己都合の違い、会社都合扱いを得る交渉方法、手続きの流れを説明します。

  1. (1)会社都合退職と自己都合退職の違い

    ・会社都合退職の場合
    会社都合退職とは、前述のとおり、経営悪化や人員整理など会社の事情によって退職するケースを指します。

    この場合、雇用保険の失業給付は待機期間7日間の経過後から支給開始となり、自己都合退職よりも給付開始が早く、受給日数も長くなります
    そのため、転職活動中の生活資金面でも有利です。

    ・自己都合退職の場合
    一方、自己都合退職は、労働者本人の意思による退職を指し、給付開始までに約1か月〜3か月の給付制限期間があります。
    ※なお、令和7年4月1日に施行された雇用保険制度改正により、離職期間中や離職日前1年以内に教育訓練等を自ら受けた場合には、給付制限が解除されることになりました。

    受給日数も短く、退職直後の生活設計に影響します。
    退職勧奨に応じた場合でも、離職票に「自己都合」と記載されると、この不利益を受けるため、離職票の退職理由がどのように記載されているかの確認が必要です。


    退職理由 失業給付の待機期間・給付制限期間
    会社都合退職 経営悪化や人員整理など会社の事情によって退職 7日間
    自己都合退職 労働者本人の事情による退職 7日間の待機期間+給付制限期間1か月
    ※ただし、5年以内に3回以上、自己都合で退職している場合等は給付制限期間が3か月となる
  2. (2)会社都合退職として扱ってもらうには? 交渉のポイント

    退職勧奨に応じて退職する場合、通常、離職票の退職理由には「会社都合退職」として記載されます。

    しかし、会社によっては「会社都合退職」ではなく「自己都合退職」として記載されることもあるため、以下の点を意識して交渉することが大切です。

    【交渉の際のポイント】
    ・退職理由を「会社都合」と明記してもらう
    離職票や退職合意書に「会社都合退職」と記載するよう交渉します。

    ・勧奨の経緯を記録する
    面談内容や人員削減方針の説明、経営上の理由がわかる書類やメールを保存します。

    ・交渉は退職の意思表示前に行う
    一度自己都合で合意してしまうと、後から変更が難しくなります。

    この交渉によって、失業保険の給付に有利な条件を確保できる可能性が高まります

  3. (3)退職勧奨に応じたときの手続きの流れと必要書類

    退職勧奨に応じる場合は、次の流れで手続きを進めます。

    ① 面談・条件交渉
    まず、退職日、退職金の有無や金額、未払い残業代の精算、再就職支援の有無などを会社側と確認します。ここで退職理由が「会社都合」と記載されるかも重要な交渉ポイントです。口頭だけでなく、交渉内容はメモや録音で残しましょう

    ② 退職合意書の作成
    条件に合意したら、退職合意書を作成します。
    退職日、退職理由、金銭面等の条件、会社都合扱いである旨などを明文化し、双方が署名押印します。書面があれば、後日のトラブル防止につながります

    ③ 必要書類の受領
    退職時には、離職票、雇用保険被保険者証、源泉徴収票、年金手帳などを必ず受け取りましょうこれらは失業給付の申請や次の就職先で必要になります
    受領後は記載内容に誤りがないか確認し、特に、離職票の退職理由欄は必ずチェックしてください。

6、退職勧奨に納得できない! 違法な退職強要への対処法

退職勧奨でも、度を超えた圧力や嫌がらせは違法な「退職強要」となります。
以下では、違法性の判断ポイントと具体的な対処方法を解説します。

  1. (1)違法な退職勧奨(退職強要)とは? 判断のポイント

    退職勧奨そのものは違法ではありません。
    しかし、手段や態度が行き過ぎると違法行為に該当する可能性があります。

    退職勧奨が違法になる可能性のある代表的な事例は以下のとおりです。

    【退職勧奨が違法になる可能性のある代表的な事例】
    ・繰り返しの呼び出しや面談で精神的に追い詰める
    毎日のように面談を行い、退職を促す発言を繰り返す。

    ・職務を与えない、孤立させる
    席を外す、仕事を与えないなどして、職場に居づらくさせる。

    ・強制的に退職届を書かせる
    拒否しているにもかかわらず、その場で退職届を書かせる。
  2. (2)違法な退職勧奨(退職強要)をされたときの対処法

    退職強要を受けた場合は、以下のような対処法を検討しましょう。

    【退職強要を受けた場合の対処法】
    ・応じない意思を明確に伝える
    曖昧な態度は誤解を招くため、書面やメールで「退職に同意しない」旨を残しましょう。

    ・面談内容を録音、記録する
    日時・場所・発言内容を記録し、可能であればICレコーダーで録音します。

    ・自宅待機命令には業務指示を求める
    理由が不明な場合は、書面やメールで業務指示を出すよう要求します。

    ・退職金や解雇予告手当は安易に受け取らない
    これらを受け取ることで「退職合意」とみなされる可能性があるため、注意しましょう。

    ・社内窓口や労働基準監督署、弁護士に相談する
    外部機関への相談は、証拠収集や交渉の後押しになります。

    これらの行動により、退職強要の事実を裏付け、後の法的対応がしやすくなります

  3. (3)退職強要は会社に責任を問えるケースもある

    退職を強要されるような場合は、会社に対して慰謝料請求や損害賠償請求ができる可能性があります。

    また、退職の合意が不当と判断されれば、地位確認(職場復帰)請求をすることもできます。労働審判や民事訴訟では、録音・書面・メールなどの客観的証拠が極めて重要です。

    【退職強要を受けたら、弁護士に相談を!】
    違法な退職勧奨を受けたと感じたら、早期に証拠を確保し、労働問題に詳しい弁護士へ相談をおすすめします。

    弁護士に依頼するメリット 手間やストレスを減らせる!:面倒な手続きや会社側との交渉を自分の代わりに、ほぼ全て任せることが可能 会社から支払われる金額が多くなるかも!:残業代・和解金・慰謝料等が多く得られる可能性がある 弁護士のサポートで、交渉から手続きまで安心!:解決策がみつかる 証拠資料を法的に判断 証拠がない場合、集め方をアドバイス 会社はいい加減な対応ができなくなる 弁護士が代理人として会社と交渉 労働審判、訴訟(裁判)をサポート

    弁護士は、状況に合わせた法的な解決方法を提案しつつ、会社との交渉や訴訟の代理対応を行うことが可能です。より良い方法で解決できることが期待できるだけではなく、対応を一任することで、精神的負担を軽減することもできます。
    ※詳しくは、弁護士に依頼するメリットで解説しています。

7、違法な退職強要を受けた場合は、弁護士に相談を

退職勧奨は会社からの「提案」にすぎず、強制力はありません
応じるか拒否するかは、提示された条件や将来の生活設計を踏まえて冷静に判断することが大切です。

拒否する場合は、会社に対して明確な意思表示と記録を行い、応じる場合は退職理由や条件を必ず書面で残し、会社都合扱いになるよう交渉しましょう。

もし違法な退職強要を受けた場合は、証拠を確保し、労働基準監督署や弁護士など専門家へ早めに相談することが重要です。
不安な場合や対応に迷うときは、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
残業代請求、不当解雇・退職勧奨、同一労働同一賃金、退職サポート、労働災害、労働条件・ハラスメントに関するトラブルなど、幅広く労働者のお悩み解決をサポートします。ぜひお気軽に お問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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