帝国データバンクが発表している「全国企業倒産集計2022年上半期報」によると、倒産件数は上半期としては5年連続で減っています。しかし、減少傾向にあるとはいえ、令和4年1月から6月までの期間で全国で3045件の企業が倒産しているという現実があります。
(出典:帝国データバンク「全国企業倒産集計2022年上半期報」より)
会社が倒産してしまうかもしれないという状況であれば、将来への不安はもちろんですが、「まだ支払われていない給料はどうなるのか?」という目先の不安も抱えることになります。
このコラムでは、もし会社が倒産した際に未払いの給料を支払ってもらう方法や、会社が支払えなくなった場合に利用できる制度について解説します。
賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものは、会社に請求することができます。
解雇予告手当も対象
会社が倒産(※)すると、労働者は解雇されることになります。
そして、会社は労働者を解雇する場合、労働基準法第20条の定めにより少なくとも30日以上前にその予告をしなければなりません。
この時、解雇予告がなかった場合は、予告を欠いた日数に応じた平均賃金分の「解雇予告手当」の支払いが必要です。解雇予告手当も、未払の給料とともに請求が可能です。
(※いわゆる「倒産」には、法的手続による「法的倒産」と、法律上の手続外で行う「私的整理」があります。前者について、会社が無くなってしまう破産や特別清算などの「清算型」と、事業を立て直す民事再生や会社更生などの「再生型」があります。)
以下では、会社が清算される「破産」を対象に解説しています。
会社が破産すると、会社の資産を整理して債権者への支払いに充てる破産手続を行うことになります。この際、労働者に対する未払給料の支払いは、取引先など他の債権者への支払いよりも優先されます。
ただし、給料が「いつ発生したか」によって優先度が異なりますので注意が必要です。
会社の破産手続が始まった場合には、破産管財人から「破産手続が始まった」という通知を受けます。その通知に添付されている債権届出書に、「どのくらい未払給料があるのか」などの必要事項を記載し返送します。
その後、上記でお伝えした優先順位に従い、未払いの給料などが支払われることになります。
破産前であれば、会社の財産がなくなる前に、裁判所に対して会社財産の仮差押手続をする、労働組合を通して団体交渉をするといった手段を取ることも可能です。
状況に応じて最適な手段は変わってきますので、詳しくは弁護士に相談するのが望ましいでしょう。
国は、会社が破産し従業員の給料にあてる資産がない場合を想定した「賃金の支払の確保等に関する法律」という法律(以下「賃金支払確保法」といいます。)を制定しています。
賃金支払確保法に基づいて 作られた制度が「未払賃金立替払制度」です。
この制度は、独立行政法人労働者健康安全機構が実施している制度です。
この制度を利用すれば、未払給料のうち最大で80%が支払われます。
そして、未払総額の上限については、退職日の年齢により、
となっており、この金額の80%が立替払上限額となります。
破産手続の中で給料の全額が弁済されない場合には、この制度を利用しましょう。
ただし、この制度を利用できるのは、使用者・労働者ともに以下の条件を満たした場合に限られますので注意が必要です。
破産後に解雇となった労働者だけでなく、破産前に解雇されて給料が未払いになっている労働者も、この制度の利用対象になります。
未払賃金立替払制度の利用申請は、会社の倒産が「法律上の倒産」か「事実上の倒産」かによって異なります。
なお、未払賃金立替払制度には以下のような注意点もあります。
なるべく早めに、そして正確に申請し受給しましょう。
会社が破産してしまうという情報があり、対策を講じておきたいという場合には、、早めに弁護士に相談しましょう。
弁護士への相談には、以下の3つのメリットがあります。
弁護士に相談、破産手続の中で未払給料の優先的な支払いを受けるべきか、未払賃金立替払制度を利用するべきかの見通しが明確になります。
今後の方針が明確になれば、大きな不安を抱えることもなくなるでしょう。
未払残業代の請求には「残業があったこと」と「未払残業代の金額」を証明する必要があります。弁護士に相談すれば、証拠となる資料についての具体的なアドバイスが受けられるでしょう。
会社が保管しており労働者では入手ができないものがあれば、弁護士からの請求によって開示を受けられる可能性もあります。
未払給料の請求を会社と労働者個人が交渉するのは困難です。会社が誠実に対応してくれないケースも珍しくありません。
しかし、弁護士を交渉の代理人にして協議を進めていくことで、会社の迅速な対応も期待できます。会社が対応してくれない場合でも、裁判所の手続を利用して早期解決できる可能性があります。
会社が倒産しそうだと聞けば、未払給料や未払残業代が心配になるのは当然のことです。そのような場合は、なるべく早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください。
労働問題の経験豊富な弁護士が、お客さまの話をじっくりお伺いし、全力で対応させていただきます。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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