厚生労働省が公表したデータによると、令和4年度の総合労働相談コーナーなどに寄せられた総合労働相談の件数は124万8368件で、15年連続の100万件超えを記録しました。
こうした労働に関するトラブルが発生した際に、多くの方が相談先としてまず頭に浮かべるのが「労働基準監督署」でしょう。 もし、会社から不当解雇を受けてしまい、不服を訴えたいと考えている場合でも、まずは労働基準監督署への相談を検討してみるのもよろしいでしょう。
しかし、不当解雇の問題について労働基準監督署がどこまで対応してくれるのか気になるかと思います。そこで、本コラムでは労働基準監督署の役割や機能を中心に、不当解雇トラブルの解決方法について弁護士が解説します。
(出典:厚生労働省ホームページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00132.html)
一般的に、労働トラブルを解決してくれる機関というイメージの労働基準監督署ですが、実はどんなトラブルにでも対応できるわけではありません。
まずは労働基準監督署の役割と不当解雇の相談を受付けてくれるかどうかについて解説します。
労働基準監督署は、厚生労働省の出先機関として全国に設置されている機関です。
主な役割は「労働基準法などの法令に基づいて事業者などを監督すること」で、労働者が抱える解雇・残業・ハラスメント・賃金などの各種問題への相談や申告に対応しています。
不当だと考えられる解雇について「まず労働基準監督署に相談してみる」という対応は間違いではありません。
ただし、不当解雇の内容によっては労働基準監督署では解決が望めないこともあります。
労働基準監督署は、労働基準法、労働安全衛生法や最低賃金法等に基づいて事業者に対する改善指導をおこなう機関ですので、これらの法令の違反事例では、会社に対して是正勧告や指導を行うことがあります。
しかし、不当解雇の事例には、これらの法令違反ではなく、労働契約法や民法に反する場合が多く存在します。このような事案に対して労働基準監督署は、相談には応じても、解雇の撤回や金銭解決などの最終的な解決を図るべく是正勧告や指導はできません。
したがって、労働基準監督署では、労働基準法に規定される解雇予告が解雇予定日の30日前におこなわれているかどうかの確認や、労働者に解雇予告手当を支払わせるなど、限定的な対応しかできず、不当解雇された従業員の救済の必要を十分満たすものではないのが実情です。
そこで、不当解雇に関するトラブルについて、ますは労働基準監督署に相談すること自体が有益であることは否定しませんが、そこでは最終的な解決が図られない場合が多いことも心得ておくべきでしょう。
労働基準監督署において対応可能な部分についてご説明いたします。
労働者を解雇する場合、事業者は30日以上前に解雇を予告しなくてはいけません。
事前の予告なしで解雇をおこなう場合、事業者は30日分以上の平均賃金を「解雇予告手当」として支払う義務があります。
この決まりは労働基準法第20条によって定められていて、30日未満内での解雇予告しか行わず、しかも解雇予告手当が未払いというのであれば労働基準法違反です。
解雇トラブルで解雇予告や解雇予告手当が支払われない場合は労働基準法違反となるため、労働基準監督署は会社に対して是正勧告ができます。
もっとも、たとえ労働基準監督署では解決できない場合であっても、労働相談を受けることで、解決方法について一般的なアドバイスが受けられます。
ご自身が経験された解雇が、労働関連の法令に照らして適法であるのかを判断するいい材料になるでしょう。
ところで、通常、不当解雇トラブルの解決方法といえば、次の3つが考えられます。
会社が、労働基準法の定めに反して解雇が無効である場合、あるいは、労働契約法に反して、会社が解雇権を濫用し、客観的合理性と社会的相当性を欠く解雇を行ったと認められる場合は、解雇自体が無効になります。
解雇の無効が認められると、まだ元の会社に在籍していることになります。
これまでの生活を維持することを第一に目指すのであれば、解雇無効を主張して、従業員としての地位の確認を会社に求め、復職を目指すことになるでしょう。
解雇の無効が認められた場合には、その時点でまだ従業員の地位にあるわけですから、解雇以降未払いとなっている給与について、その支払いを会社に求めることができます。
未払賃金の請求は、通常、(1)の従業員の地位の確認と一緒に行います。
また、たとえ解雇無効が認められたとしても、自分を解雇したような「会社には戻りたくない」と考えられる場合も多いでしょう。
そこで、あくまでも会社との合意退職に応じることの見返りとして、会社に退職一時金の支払いを請求することが考えられます。その退職一時金によって当面の生計を維持しながら、再就職先を探すことになります。
そこで、まずは、解雇無効を主張して、従業員の地位の確認と未払賃金の支払いを会社に求めながら、交渉の途中で和解策として金銭解決を提案する、という手段を講じることがよくあります。
会社から不当解雇を受けてお困りであれば、弁護士に相談するのがより効果的であると考えます。労働基準監督署は、労働基準法に基づく指導や対応が基本であるため、個別の労働契約上のトラブルには十分に応じられないケースがあることは上のとおりです。
一方、弁護士は、適用法令の範囲に縛られることなく、労働に関するあらゆる法律知識をもって、依頼主の不利益を回避するように様々な手段を講じることが可能です。
弁護士に依頼された場合には、会社との直接交渉に留まらず、さらに労働審判や訴訟等の法的手段に訴えることによって、最終的な解決を目指すことができます。
退職を前提に再就職先を探すご方針であれば、元の会社との交渉や裁判所の手続きなどに多くの時間をかけている余裕はあまりないでしょう。
慣れない法律的な手続きを弁護士に一任されることで、ご自身は、就職活動など新たな出発に向けた準備に集中できます。
また、急に解雇されれば、不安が大きく、会社と直接話したくない、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
弁護士に依頼をすれば、弁護士が代理人として会社と交渉をするので、精神的負担も軽くなるでしょう。
不当解雇を理由に、会社への復職や未払賃金の支払いをご希望されるのであれば、労働問題に関する解決実績が豊富な弁護士に相談・依頼されることをおすすめいたします。
不当解雇に関するお悩みは、ベリーベスト法律事務所にぜひお任せください。
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