職場の労働環境が悪く、改善を求めたいという場合、労働基準監督署へ相談するのはひとつのよい方法です。
しかし「相談してすぐに指導してくれると思ったのに動いてくれない」「話を聞いてくれただけで終わってしまった」など、相談したにもかかわらず期待していたような動きをしてくれないこともあるでしょう。そのような場合、労働基準監督署への告訴という手段を検討する方もいるかもしれません。
そこで、今回は、労働基準監督署へ告訴するメリットやデメリットをはじめ、告訴する場合の流れなどを解説していきます。
本ページはベリーベスト法律事務所のコラム記事です。
労働基準監督署(労働局、労働基準局)との間違いに、ご注意ください。
労働基準監督署の所在地はこちら
労働基準監督署とは、企業が法令に従い、労働条件や安全衛生の基準を守っているかどうか等を監督する機関です。厚生労働省の出先機関として、全国にあります。
主な役割として、法令違反をした企業への監督指導や是正勧告、各種届出の審査、労災の適用や給付などのほか、労働者からの相談対応も行っています。
相談できる内容としては、賃金の不払いや違法な残業、解雇や不当な処分、労災関係などが挙げられます。
労働基準監督署がなかなか動いてくれない理由のひとつに、相談の内容が、労働基準法等の違反とまではいえないということなどが考えられます。
労働基準監督署は企業に労働基準法等の違反があった場合等に取り締まり等をする機関ですので、例えばセクハラに遭ったといったような、労働基準法等に規定されていないようなトラブルについては、労働基準監督署が積極的に介入してくれない可能性があります。
また、労働基準監督官の人数は、平成28年度で3241名ですが、監督指導の対象となる事業場は400万以上にものぼります。
そのため、人員の関係で、違法性や緊急性が高い事案が優先されやすいという現実的な問題もあるでしょう。
少しでも早くご自身が抱えている労働問題の解決を目指すなら、まずはご自身の事案が労働基準法等違反に該当する事案であるかなど、本当に労働基準監督署へ相談するのが適切な事案なのかどうかを事前に検討することも大切です。
そのうえで、労働基準監督署へ相談するのが適切な事案であれば、法令違反の証拠を集める、何を相談したいのかを明確にしておくといった事前の準備をしておきましょう。
告訴とは、被害者が犯罪事実を申告し、訴追(加害者を刑事処罰するために、裁判所へ訴えること)を求めることをいいます。
司法警察員である労働基準監督官が告訴を受理すると捜査が開始されるため、労働基準監督署がなかなか動いてくれない場合には、告訴することも検討しましょう。
告訴するメリットとして、労働基準監督官が強制捜査や逮捕の権限を行使し、結果的に企業に刑罰を与えることができる可能性があります。
ただ、労働問題に関しては、極めて重大・悪質なケースを除き、いきなり逮捕するのではなく、まずは調査や是正指導を行い、なおも改善が見られないケースに限って厳しく対処するのが一般的です。
それでも、告訴によって労働基準監督署から企業に対して具体的な指導がなされるのなら、労働者にとって大きなメリットといえるでしょう。
デメリットは、告訴した者であると企業に知られ、不当な扱いを受けるおそれがある点です。
労働基準監督官へ匿名を希望する旨伝えれば、告訴した者が企業に知られないように労働基準監督署が配慮してくれる可能性はありますが、告訴の内容から告訴した人物が特定される可能性はあります。
告訴内容に告訴した人物しか知り得ないような情報が入っていれば、誰が告訴したのかは容易に想像できるからです。
もっとも、労働基準法第104条2項では、労働基準監督官への申告を理由にした不利益な取り扱いを禁止しています。申告を理由とした解雇はもちろん、減給や左遷といった取り扱いも法律違反に当たります。
なお、告訴を受理すれば、労働基準監督署に捜査義務が生じるため、必ずしも労働基準監督署が受理してくれるとは限りません。
証拠がない、または、法令違反といえるか微妙なケースでは、労働基準監督署に受理されない可能性が高い点は知っておきましょう。
労働基準監督署へ告訴する方法や告訴した後の流れを説明します。
まずは告訴状を作成します。
告訴の方法について、刑事訴訟法では口頭でもよいとされていますが、法令違反があった事実などを明確にするために、現実的には書面の提出が求められます。
告訴状に記載するべき内容や形式に決まりはありませんが、最低限、以下の項目は記載するべきでしょう。
次に、告訴状を提出します。提出先は、勤務先を管轄する労働基準監督署です。
通常、その場ですぐに告訴状が受理されることはありません。
上記のとおり、告訴状を受理すると、労働基準監督官は捜査をする義務が生じ、業務が増えることなどから、「検討する」などと言って受理しようとしないのが通常です。
場合によっては、労働基準監督署から告訴以外の方法で解決できないかと諭される可能性もあります。
また、企業の法律違反が疑われる場合でも、労働基準監督署はまず事実関係を確認するため、企業への立ち入り調査や、使用者および労働者への事情聴取、帳簿の確認などを行うのが一般的です。
法律違反が確認された場合には、重大・悪質な事案では送検(訴追の権限がある検察官へ事件を送ること)が、それ以外は文書による是正勧告、改善指導などが行われます。
その後、企業からの是正・改善報告もしくは再度の監督の実施がなされ、改善されていない場合に、告訴状が正式に受理されるという流れを経ることもあります。
告訴状を受理してもらい捜査してもらうためには、少なくとも告訴状の内容を適切に記載し、明確な証拠を手に入れることが重要です。
法律の知識を持たない一般の方がポイントを抑えてこれらの手続きを行うのは難しいともいえるため、告訴まで考えているようであれば、弁護士へ相談するのも賢明な方法といえます。
労働問題についての具体的な改善や解決を目指すのであれば、弁護士への相談が有効です。
企業の行為が法律に違反するのか、集めた証拠が法的に有効なのかといった判断は、簡単にできるものではありません。
昨今ではインターネットの普及もあり、法律の一般的な知識を調べることは可能ですが、間違った法解釈や古い情報が残っている場合も多々あります。
そのため、それらの情報をもとに労働者個人の力だけで問題を解決できるかというと、現実的には難しいといえます。
法令違反とまではいえない場合や、せっかく集めた証拠が意味のないものだった場合には、時間や労力を無駄にするだけでなく、企業からの厳しい視線が注がれ、職場に居づらくなるおそれもあります。
弁護士であれば、正しい知識と経験をもとに、違法性や証拠の有効性を判断できます。
問題の解決をする方法として、告訴や訴訟の提起などの法的手段だけでなく、交渉も挙げられます。労働者個人が交渉を求めても交渉のテーブルにすらつけないのが現実です。
この点、弁護士が労働者と企業の間に入って交渉をすると、法的手段を講じられた場合のリスクを考慮した企業側が柔軟な姿勢を示して、和解で決着するケースも少なくありません。結果的に早期解決が期待できます。
もちろん、交渉が決裂した場合も、弁護士に紛争解決を依頼しておけば、告訴や労働審判、訴訟などの対応も任せることができます。
労働基準監督署は、企業を監督、指導してくれる重要な機関であり、その存在によって労働者が安心して働きやすい環境が保たれているといえます。
賃金の未払いや解雇、労災関係などさまざまな項目に関して相談に乗ってもらえるため、まずは労働基準監督署を頼るのは間違っていません。
ただし、内容によっては、なかなか動いてもらえない場合があり、また、告訴状を受理してもらうのも簡単ではありません。
労働問題を解決するという目的において、弁護士へ相談するのも選択肢のひとつです。
不当解雇や賃金の未払いといった企業の法律違反に対し、対応を検討している方は、まずはお気軽にベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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