雇用契約において、理屈の上では労働者と使用者(会社)は対等の立場とされています。
しかし、実際には資本を有する使用者側のほうが強い立場にあるといえるでしょう。特に、労働者の職能は仕事を続けていく中で最適化されていくものであるため、解雇されて別の使用者の下で再就職するとなれば、待遇面で不利になることも少なくありません。
加えて解雇は、労働者に対して収入の途絶という多大な影響を及ぼすものでもあります。そこで、解雇には法律上一定の制限が設けられ、それに反してなされた解雇は「不当解雇」として賃金や損害賠償などの請求根拠となり、和解金を獲得できる場合もあります。
今回は、使用者から不当解雇された場合の賃金、損害賠償の請求、和解金の獲得方法について解説します。
使用者から不当解雇された場合、賃金や損害賠償を請求し、和解金を獲得できる場合もあります。請求する内容や請求するための条件をみていきましょう。
「損害賠償」と「和解金」は似ていると思うかもしれませんが、厳密には異なるものです。
賃金、損害賠償請求や和解金の獲得のためには、労働者本人が「不当に解雇された」と思っているだけでは認められません。裁判所で解雇が無効であると認められる必要があります。
加えて、不法行為に基づく損害賠償を請求する場合には、故意過失等の不法行為の要件を充たす必要があります。
解雇の有効性の判断は、解雇の種類によっても異なるため、以下で詳述します。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労働契約法16条)とされています。
解雇には大きく分けて、普通解雇・整理解雇・懲戒解雇の3種類があります。
それぞれの解雇について、その特色や解雇の有効性判断について、解説します。
民法627条1項本文に基づく使用者からの解約の申入れが、使用者が労働者との雇用契約を一方的に解約する行為として、「普通解雇」といわれています。
一般的に、職務への適格性を欠く場合や勤務態度不良の場合などに行われるものです。
原則として解雇の30日前までに解雇を予告する必要があり、予告期間が30日に満たない場合は解雇予告手当の支払いを要します(労働基準法20条1項)。
普通解雇が有効と認められるためには、客観的に合理的な理由、社会通念上の相当性を要します(労働契約法16条)。それらが認められない場合には、不当解雇となります。
たとえば、複数回にわたる問題行動があり、配置換え、注意・指導、懲戒処分など使用者側が繰り返し働きかけた事実があるにもかかわらず、改善されないなどの事情があれば、解雇が有効であるとして認められる可能性があるでしょう。
整理解雇は、使用者が経営上の必要性のために行う解雇で、労働者に落ち度があったことを理由とした解雇ではない点に特色があります。したがって、要件も厳格に捉えられています。
具体的には、
等が挙げられます。
いずれかの要件を欠く場合、不当解雇と判断されます。
なお、昨今の裁判例では、要件として4つの要件全てを充たしているのか否かを判断するのではなく、それぞれの要件について、どの程度充たされているのかを検討し、4つの要件を総合考慮して解雇の有効性を判断している裁判例が散見されます。
どのような方法で判断するかということについて、個々の裁判官に一定の裁量があり、判断が分かれているところです。
労働者が重大な問題を起こした場合、それに対する使用者の懲戒処分として懲戒による解雇がなされます。これが懲戒解雇です。
懲戒解雇を行う際には、就業規則での定めが必要となります(最判平18.10.10労判861.5)。また、解雇の有効性の判断の際に、解雇理由、相当性が必要とされるのは、普通解雇と同様です。
加えて、懲戒解雇においては、相当性判断において、重度の違反事由が求められる傾向にあります。たとえば、横領や業務中の飲酒運転などの刑法違反や競業避止義務違反などです。
不当解雇による和解金の獲得には大きく2つの方法があります。
それぞれの方法と相場を確認し、より多額の和解金を獲得できるように準備をしましょう。
使用者から和解金を得るには、解雇自体を無効と主張して地位確認および賃金請求を行う方法と、労働者であることの地位確認を行わず復職を希望せずに、解雇無効であり不法行為にあたるとして、損害賠償請求を行う方法があります。
以上のとおり、不当解雇されたことを理由として、賃金、損害賠償請求を行う方法として、使用者の都合によって働けなかったとして、労働者としての地位にあることを主張し復職するまで期間の賃金を請求する方法や、不法行為に基づく損害賠償請求として将来分の一定期間の賃金相当額の損害、不当な仕打ちを受けたことや生活が不安定となったことで精神的苦痛を被ったとして慰謝料を請求する方法があります。
また、復職を希望しない場合でも、将来得られたであろう賃金について損害賠償請求をする場合、仮に不当解雇と裁判所が認めた場合でも、将来分の賃金が無制限に認められるわけではなく、次の就業までに必要な期間として、1~3か月分の賃金相当額の損害を認めている裁判例が多いです。
裁判や交渉でより多くの和解金を獲得するためには、解雇に合理的な理由や相当性がなく、判決を得ることが使用者にとって不利である、早期に解決することが使用者にとって利益がある等と使用者に理解させる必要があります。
そのためには、使用者がどのような理由で解雇したかを知る必要があります。
そこで、解雇の理由を明らかにさせるためには、解雇理由証明書という書面を使用者に請求します。これは法律上、使用者が労働者の請求に応じて発行しなければならないものであり、拒むことはできません(労働基準法22条1、2項)。
さらに解雇の不当性については、解雇言い渡しの際の録音データ、人事評価書や売り上げデータといった業績を証明するもの、タイムカードなどの勤怠記録、使用者の業績など、解雇の種類に応じた証拠集めを行います。
使用者に対して不当解雇を理由に賃金や損害賠償を請求し、和解金を獲得しようとする場合、個人で行うよりも弁護士に依頼することが望ましいといえます。
弁護士に依頼するメリットとしては、以下の点が挙げられます。
どのような証拠をどのようにして集め、どういった主張を行うかにより、交渉によって獲得できる和解金が増減するといっても過言ではありません。
弁護士は適切な証拠集めのアドバイスから最適な主張立証を行い、より高い和解金の獲得を目指します。
労働者個人が使用者と真正面から争おうとすれば、大変な手間や時間がかかります。
多くの資料や証拠が使用者側にあることも少なくありません。
弁護士に依頼することで、手間暇がかかることが多い、裁判や交渉の準備に必要な資料の開示の請求や証拠の収集などの手続きを一任することができます。
弁護士に一任することで、あなた自身は、再就職先探しなどに注力したり、ゆっくり体や心を癒やす時間を作ったりすることができるでしょう。
さらに、請求がどの程度認められるかはケース・バイ・ケースですが、弁護士が介入することで、過去の経験や判例から相場観に基づいた金額を設定できるため、交渉によって早期解決が図られることを期待できます。
冒頭でも触れたように、使用者側と労働者は必ずしも対等とはいえません。
労働者が単独で不当解雇を争おうとしても、使用者側が取り合ってくれず、泣き寝入りせざるを得ないというケースは珍しくないでしょう。
精神的につらい思いをする必要はありません。
弁護士に依頼すれば、使用者と対等な立場での交渉を行うことが可能となり、弁護士があなたに代わり窓口になるため、精神面の負担も軽減されます。
事実、個人では一切合意しなかった交渉が、弁護士が介入することによってスムーズに解決したケースは多々あります。
まずはひとりで抱え込まず、弁護士に相談することをおすすめします。
不当解雇を使用者と争う場合、使用者側は解雇に正当性がある旨の主張を行うケースが多いものです。中には、労働者の主張を退けようとするために、話し合いの場で労働者をおとしめたり、証拠の提示ができないような根拠がない主張を繰り返したりする使用者もいます。
そのような中で労働者個人が使用者と対等に交渉し、自らの主張を通そうとすることは非常に難しいことです。確かに、労働法は労働者を保護するものですが、労働者が正確に理解することは簡単なことではありません。
しかし、弁護士に相談すれば、証拠集めや交渉について法律に基づいた適切なアドバイスを受けることができます。さらに、弁護士に一任すれば、あなたが矢面に立つ必要さえなくなるでしょう。
もし、ご自身のケースが不当解雇に当たるのかどうかがわからない、使用者側に賃金、損害賠償請求を行い、和解金を獲得したいとお考えであれば、ベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。
労働問題への対応経験の豊富な弁護士が、懇切丁寧なサポートを行い、力強い味方となります。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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