長時間の残業は、身体的・精神的な健康に深刻な悪影響をおよぼすため、退職を検討される方もいるでしょう。
「連続3か月以上、月45時間以上の残業をした」「1か月、100時間以上の残業をした」などの事実がある場合、労働基準法第36条に規定されている残業時間の上限を超えるため、会社都合の退職が認められることがあります。
今回は残業の多さを理由にした退職をテーマにベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
「自己都合退職」とは、その名のとおり労働者自身の都合によって自主的に退職することです。スキルアップのため、結婚のため、療養のためなど、多くのケースが自己都合退職に該当します。
他方、「会社都合退職」とは、業績不振によるリストラ、倒産、早期退職制度を利用して退職した場合などを指します。
両者の大きな違いとして、主に失業手当への影響が挙げられます。
失業手当は、正式には基本手当といい、雇用保険から支給される、再就職までの生活を支える手当です
勤続年数や年齢のほか、「どのような理由で退職したのか」によって、支給開始時期および支給日数が変わります。
退職理由によって異なる失業手当の支給時期などの違いについて知っておきましょう。
一般に、残業の多さを理由に辞めると自己都合退職として処理されてしまうケースがほとんどです。これには会社側の都合が関係しています。
残業の多さを理由とする会社都合退職者が存在することは、周囲から「ブラック企業なのでは?」といった印象をもたれてしまい、会社イメージを損ないかねません。
また、国からもらえるさまざまな助成金(雇用調整助成金など)についても、一定期間に会社都合による解雇等をしていないことなど、受給するためには様々な要件があります。
そのため、会社としては、助成金を受け取るためにも、自己都合退職として処理したほうが都合がよいのです。
しかし、残業が多かったことは会社の責任でしょう。
そのため、一定の要件に該当すると、残業を理由とする退職でも「会社都合退職」とすることができます。
残業時間の長さを理由として会社都合退職とされる要件は、退職直前の6ヶ月において下記のいずれかに該当するケースです。
残業時間の長さを理由として会社都合退職とされる要件
上記は労働基準法第36条に規定されている残業時間の上限ともつながっています。
つまり会社が法律違反を犯しているため、会社都合退職になるのです。
残業以外にも会社都合退職が認められるケースがあります。
具体的な一例は以下のとおりです。
残業を理由に退職することになったが離職票に自己都合退職と書かれてしまった場合、ハローワークに申し出る必要があります。
ただし、ハローワークとしても実際の状況を確認しなければなりませんので、申し出るだけでなく、証拠を提示することが大切です。
タイムカードと実際の労働時間が一致しているのであれば、退職前6ヶ月分のタイムカードをコピーするか、携帯電話のカメラ機能などを利用して撮影しておくとよいでしょう。
給与明細に時間外労働の項目があり、かつ実際の労働時間が正しく反映されているのであれば、それも証拠になります。
ただし、そもそもブラック企業では、タイムカードや給与明細が正しく記載されていないケースが少なくないようです。
その場合、実際の労働時間を反映している客観的な証拠を集める必要があります。
たとえば会社でパソコンを使う場合、ログイン、ログアウト情報から、何時から何時まで仕事をしていたのかを裏付けることができる可能性があります。
労働基準監督署の調査でサービス残業の有無を確認するときにも使われていますので、有効な方法のひとつといえるでしょう。
業務日誌なども、業務量が多く残業しなければならない状況だったことを示す資料として有効です。
そのほか、たとえば次のようなものも残業の事実を示す証拠となり得ます。
できる限り集めておきましょう。
残業の事実を示す証拠の例
残業代は、会社に在籍していなければ請求できないものではなく、会社を退職した後でも請求することは可能です。
しかし、残業代の請求に必要な資料は、在職中の方が手に入れるのが容易であることや、残業代請求にかかる時効が3年と比較的短いことから、在職中のできるだけ早い段階で証拠を集めて、残業代を請求することが理想的です。
もっとも、在籍中に請求すると会社から不利益な取り扱いを受ける可能性があります。また、無理に在籍して残業を続けることで体調を壊してしまうことも考えられます。
このような場合は、退職を優先して、その後に残業代請求をすることも考えられます。
30代・Aさんは、食料品店の店長でした。連日、朝から深夜までの長時間労働にもかかわらず、管理監督者であるとして、会社から残業代は支払われていませんでした。
しかし、店長という職が必ずしも管理監督者に該当するわけではありません。ベリーベスト労働問題専門チームの弁護士は、調査の上、法律上Aさんは管理監督者にあたらないと判断。会社に対して、未払残業代を支払うよう交渉を行いました。支払いを拒否した会社でしたが、最終的には訴訟で627万円の支払いが認められることになりました。
退職を優先するなどして証拠の収集が難しくなった場合には、弁護士への依頼が有力な選択肢となり得ます。
弁護士に依頼することで、弁護士から会社に対して残業代の請求に必要な資料の提出を求めることができますし、複雑な残業代の計算や、支払いに関する会社との交渉も弁護士に任せることができます。
また、3年の時効が迫っている残業代を請求するのであれば、あらかじめ催告により時効の進行を止めておく必要がありますが、弁護士ならば、内容証明郵便の送付などによる催告も素早く行えます。
さらに、残業代の未払い状況が悪質で不法行為に該当する場合には、未払い分の残業だけではなく損害賠償を請求することもできます。
例えば、広島高裁平成19年9月4日判決では、「従業員の出退勤時刻を把握する手段を整備して時間外勤務の有無を現場管理者が確認できるようにするとともに,時間外勤務がある場合には,その請求が円滑に行われるような制度を整えるべき義務を怠ったと評することができる」として残業代を支払わなかったことについて不法行為が成立するとしています。
もっとも、不法行為による損害賠償請求を一般の方が行うことは容易ではありませんので、弁護士に依頼することをおすすめします。
なお、この場合の時効の期間は3年です。
今回は残業を理由とした退職に着目し、会社都合退職となる要件や証拠の種類、未払いの残業代について解説しました。事実として長時間の残業があったとしても、自己都合退職として処理されてしまうと失業手当が優遇されません。
会社都合退職として処理してもらうためには適切な証拠が必要となるため、集めやすい退職前から残業の証拠を集めておくのが良いでしょう。
退職を検討しているが、集めるべき証拠やその集め方が分からない方、すでに退職しているが未払い残業代を請求したい方は、弁護士へ相談することをおすすめします。
適切なアドバイスができるだけでなく、依頼を受けた弁護士はあなたの代理人として未払い残業代の請求や、解決に向けた交渉を行うことができます。
ベリーベスト法律事務所でもご相談をお受けしています。
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