毎月の残業時間が100時間を超えている場合には、身体的にも精神的にも疲労の蓄積が生じ、過労死などのリスクが高くなります。厚生労働省が定めている、いわゆる「過労死ライン」を超えていますので、このような状況で働き続けるのは非常に危険だといえます。
また、長時間の残業が続いている場合には、未払いの残業代が発生している可能性が高くなりますので、適切に対処することが大切です。
今回は、残業が100時間以上となったときの問題点と対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
残業時間が100時間となっている場合には、過労死ラインを超えて違法である可能性が高いといえます。
過労死ラインとは、長時間の残業などの身体的および精神的な負荷により、過労死のリスクが高まる労働時間の目安です。厚生労働省では、「脳・心臓疾患の認定基準」(過労死ライン)として、以下のような基準を設けています。
このように、月の残業時間が100時間を超える場合には、厚生労働省が定める過労死ラインを超過しているおそれがあります。慢性的な長時間残業は、休養や睡眠の機会を奪い、疲労の蓄積をもたらします。
そのような状況が続くと、精神状態が悪化して「うつ病」を発症したり、重篤な健康被害(脳疾患、心臓病、精神疾患)を生じさせるリスクが高くなります。
労働基準法では、「1日8時間・1週40時間」を法定労働時間と定めており、36協定の締結・届け出がなければ、残業をすることはできないとされています。
36協定の締結・届け出があったとしても、「月45時間・年360時間が残業時間の上限」とされています。
臨時的な特別な事情があれば、これを超える残業をすることができますが、その場合でも以下の基準を守らなければなりません。
このような残業時間の上限規制に違反した場合には、会社の経営者に対して、6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
以下のようなケースでは、残業が100時間を超えていても違法性はありません。
ただし、違法性はないとしても、身体的負担は避けられませんので、業務を見直す必要があります。
管理監督者とは、会社内で重要な権限や地位を有しており、経営者と密接な立場にある人のことです。労働基準法上の管理監督者にあたる場合、労働時間、休憩、休日に関する規定は適用されませんので、残業が100時間を超えていたとしても違法性は認められません。
ただし、管理監督者に該当するかどうかは、部長、店長、マネジャーなどの肩書ではなく、職務内容などの実態を踏まえて判断することになります。
具体的には、以下のような基準を満たす場合には、労働基準法上の管理監督者にあたります。
民間企業の労働者であれば労働基準法が適用されますので、100時間を超える残業があった場合には、違法と判断される可能性が高いです。
しかし、国家公務員や一部の地方公務員の場合には、公務の円滑な運営が要求されることから、民間企業の労働者のように、労働基準法が適用されることはありません。
そのため、残業時間が100時間を超えていたとしても、労働基準法違反となることはありません。
ただし、国家公務員には、「超過勤務の上限等に関する措置」という残業規制がありますので、これに違反しないようにしなければなりません。
具体的には、原則として1か月45時間かつ1年360時間以内で、例外的にこれを超える場合でも、以下の範囲内にしなければなりません。
残業時間が100時間を超えている場合には、未払いの残業代が発生している可能性があります。
法定労働時間よりも長く働いた場合には、残業時間に応じた賃金が支払われなければなりません。それに加えて、会社には法律上割増賃金の支払い義務も課されています。
具体的な割増賃金の割増率は、以下のとおりです。
残業時間が月100時間を超える場合には、「月60時間を超える法定時間外労働」に対する割増率が適用されますので、未払いの残業代が発生している場合には、高額になっている可能性があります。
残業代を請求するのは、労働者として当然の権利ですので、未払いの残業代が発生しているとわかったら、会社に対して、しっかりと請求していくことが大切です。
みなし残業制度とは、あらかじめ一定時間分の残業を見込んで、月の残業時間にかかわらず、一定額の残業代を支払う制度です。
みなし残業代制度は、会社としても残業代計算が楽になりますし、労働者としても残業が少なかったとしても一定の残業代がもらえますのでお互いにメリットのある制度といえます。
しかし、みなし残業代制度は、残業代の支払いを不要とする制度ではありません。
みなし残業として予定されている残業時間を超えた場合には、会社は別途残業代の支払いをしなければ違法となります。
みなし残業代制度では、時間外労働の上限規制に合わせて、月45時間までの範囲でみなし残業時間を設定するのが一般的ですので、月100時間以上残業しているのに、残業代が一切ないという場合には、違法である可能性が高いでしょう。
長時間労働や残業代の未払いでお悩みの方は、以下のような対処法を検討しましょう。
月100時間を超える残業が発生している職場では、労働者の身体的・精神的ストレスも大きいでしょう。それが常態的なものである場合には、過労死のリスクが非常に高くなります。
そのまま現在の職場で働いていると、重大なリスクが発生する可能性が高いといえますので、長時間労働が改善されない場合には、退職という選択肢も検討する必要があります。
無理に働いて体調を崩してしまうよりも、健康的な状態のうちに早めに転職を決断するべきです。
なお、未払いの残業代がある場合には、退職時、そして退職後も会社に請求することができますので、忘れずに残業代請求を行うようにしましょう。
労働者個人の力では、会社に労働条件や労働環境の改善を求めても、真剣にとりあってもらえない、というケースも考えられます。
その場合には、労働組合に相談し組合を通じて交渉を行えば、労働者の正当な権利を実現する可能性が高まります。
また、労働組合がない場合には、労働基準監督署に相談することも検討しましょう。労働基準監督署は、労働基準法などの法令違反の取り締まりや監督を行う機関です。
違法な長時間労働が認められる場合には、指導や是正勧告などにより、労働条件や労働環境の改善が図られる可能性があります。
なお、健康被害を感じている場合には、労災が認定される可能性もありますので、労基署に相談してみるとよいでしょう。
会社に対して、未払い残業代の請求をお考えの方は、弁護士への相談をおすすめします。
弁護士は、労働者の代理人として会社と交渉をしたり、裁判手続きを行うことができます。労働者個人では会社が応じてくれないような事案でも、弁護士が代理人として交渉することにより、会社も交渉に応じてくれ、任意に支払いに応じてもらえる可能性が高くなります。
また、健康被害を感じている場合には、弁護士が労災申請のアドバイスを行うことができますので、長時間労働でお困りの方は、まずは弁護士にご相談ください。
残業が月100時間を超えている場合には、過労死ラインを超える過酷な労働環境であるといえます。このような労働環境では、過労死などのリスクが高くなりますので、長時間労働の改善を求めていくとともに、残業代の支払いがない場合にはきちんと請求することが大切です。
未払い残業代請求にあたっては、弁護士のサポートが不可欠となりますので、まずは、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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