解雇が不当だと感じたときは、厚生労働省の出先機関である労働基準監督署や労働組合に相談することできます。
ただし、労働基準監督署には不当解雇を是正するよう指導する権限がないなど、対応できる範囲に限りがあります。また、労働組合が会社と交渉したとしても、交渉がまとまらなければ、さらなる措置をとるのは難しいのが現実です。
こうした点を踏まえると、不当解雇に際して具体的な問題の解決を期待するなら弁護士への相談をおすすめします。本コラムでは、不当解雇をめぐって会社と争う際に準備しておくべきことなどについて解説するとともに、弁護士に相談した方が良い理由についても詳しく説明します。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
などの状況であれば、早めに労働問題に詳しい機関・専門家に相談をするべきです。
とはいえ、会社から突然解雇を告げられても、どこに相談すれば良いのか迷う方も多いでしょう。
不当解雇を疑った場合に、相談に応じてもらえる窓口としては、労働基準監督署、労働組合、弁護士の3つがあげられます。
厚生労働省は、全国の労働基準監督署などに総合労働相談コーナーを設置しています。
総合労働相談コーナーでは、解雇を含めさまざまな労働問題を相談でき、会社の対応が労働基準法などに違反している疑いがあるときは相談コーナーから行政指導などの権限を有する担当部署に取り次いでもらえます。
明らかな法律違反が確認された場合は、労働基準監督署が是正を勧告するなど行政指導を行うケースもありますが、あくまでも会社に対して指導が行われるにとどまります。
労働組合も、突然解雇を言い渡されたようなケースにおいて、相談窓口となり得ます。
労働組合は会社と団体交渉ができ、会社は正当な理由なく団体交渉を拒むことはできません。
団体交渉の結果、会社が不当解雇を認め解雇を撤回する可能性もあります。
会社に労働組合がない場合
もっとも、全ての会社に労働組合があるわけではありません。
社内に労働組合がない場合は、合同労働組合への相談を検討してみましょう。
合同労働組合とは、会社内に置かれている労働組合とは別に、会社の枠を越えて個人で加入できる組合です。
一般には合同労組と呼ばれ、社外の合同労組でも会社と団体交渉することができます。
ただし、労働組合が迅速かつ効果的に対応してくれるかは、ケース・バイ・ケースでしょう。また、労働組合が会社と交渉しても、不当解雇の問題が必ず解決されるわけではない点に注意が必要です。
弁護士は、会社に解雇の撤回を求めるだけでなく、会社が応じない場合には訴訟を提起するなど、法的手続きによる解決もサポートできます。
あわせて、未払いの賃金があるようなケースでは、解雇の撤回とあわせて請求するなど、それぞれの具体的なケースに応じて柔軟な問題の解決を図れます。
弁護士に相談するメリットの詳細については、後述します。
労働基準監督署は、賃金や労働時間などをめぐる労働問題の相談に応じ、法律違反が確認されたときは行政指導などを行う国の出先機関です。
しかし労働基準監督署に相談すれば、あらゆる労働問題が解決されるわけではありません。
前述したとおり、労働基準監督署は解雇に関するトラブルについても相談に応じてくれますが、会社が下した解雇処分を不当と判断し、是正するよう指導したり、解雇を撤回するように交渉をするなどの対応はしてくれません。
他方、たとえば解雇予告手当が支払われていないといったケースでは、会社に対して指導をしてもらうことが可能です。
一方で、不当解雇について相談には応じてもらえるものの、具体的な対策を講じてもらうことは難しいでしょう。
労働基準監督署には事業所への立ち入りや指導を行う労働基準監督官がいますが、労働基準監督官が取り扱う案件は、「労働基準関係法令」で定められている範囲にとどまります。労働基準関連法令に労働契約法は含まれていないため、労働契約法で規定されている解雇の有効性については、評価することができないのです。
また、労働基準監督署は個人に関するトラブルについて、個別に対応してくれるわけではないという点も留意しておくべきと言えます。
不当解雇をめぐり会社と争うときは、どのような準備をしておくべきなのでしょうか。
会社から従業員へ解雇を通知する際は、口頭でも可能とされており、書面の作成は義務付けられていません。
ただし、会社が口頭で解雇を通知してきた場合は、解雇通知書や解雇理由証明書の発行を請求するべきです。
また、会社は従業員を解雇する際、少なくとも30日前に解雇予告をしなければならず、予告から解雇日までが30日に満たないときは解雇予告手当を支払う必要があります。
会社が解雇予告手当を支払わなければならないにもかかわらず支払っていない場合は、解雇通知書が後に同手当を請求する根拠になり得ます。
もっとも、会社には解雇通知書の作成義務がないため請求に応じない可能性もあります。
また、解雇通知書には決まった形式がないため、解雇理由が記載されていないことも想定されます。
そうした場合には、会社に解雇理由証明書を請求しましょう。
会社の解雇理由は不当解雇をめぐり争う際の重要なポイントとなるため、書面に残しておくことは非常に大切です。
次に、就業規則を手元に用意して内容を確認します。就業規則は常時10人以上の従業員がいる会社は作成が義務付けられており、どういった場合に従業員を解雇するのか、あらかじめ解雇理由を記しておかなければなりません。
解雇事由が就業規則に定められたものに該当しないような場合は、不当解雇の証明になる可能性があります。
会社と不当解雇をめぐり争うときは、退職を受け入れていると思われるような言動をとらないよう注意しましょう。
たとえば、会社から退職届を提出するよう求められても応じるべきではありません。
退職届を提出することで、自ら仕事を辞めることを願い出たと受け取られてしまうため、後に労働審判や民事訴訟などの法的手続きで問題の解決を図ろうとした際に、不利にはたらくおそれがあります。
同様の理由から、退職金を受け取ったりする行為も控えた方が良いでしょう。
また、今後の生活のためにやむを得ず失業手当の申請時に必要な離職票を請求したりする場合も、解雇を受け入れた訳ではないことを明確にしながら請求していくことが必要です。
前述したように、弁護士は会社に解雇の撤回を法的根拠に基づき要求、交渉をするだけではなく、会社が応じない場合は訴訟など法的手続きによる解決を目指し、全面的にサポートすることが可能です。
特に労働者にとって大きなメリットとなり得るのが、弁護士は代理人として会社との交渉窓口になってくれるという点です。
労働者が企業と交渉するのは、簡単なことではありません。個別に話し合いを申し入れても、応じてすらもらえないケースも少なくないでしょう。
しかし弁護士が代理人となることで、会社と直接やりとりをする必要はなくなるので、精神的な負担が軽減されるだけではなく、会社側が交渉に応じることにも期待できます。
不当解雇の撤回を求めるケースでは、会社に復帰したいのか、退職するものの未払いの賃金支払いや損害賠償を請求したいのかなど、希望する対応はそれぞれ異なります。
弁護士は、個別の具体的事情にあわせた対応策を検討しアドバイスするだけではなく、問題が解決するまで徹底的にサポートしてもらえるので、非常に心強い存在になると言えます。
会社から突然解雇を告げられた場合は、冷静に考え判断するのは難しいかもしれません。
しかし、仕事を失えば、その後の生活に大きな影響を及ぼすことになります。
解雇事由に納得できない場合や不当解雇を疑う場合は、まずは落ち着いて弁護士への相談などを検討することをおすすめします。
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