残業をしたはずなのに残業代が出ない場合、会社が労働基準法違反をしている可能性があります。
もし正当な残業代の支払いを受けられていない場合には、速やかに弁護士にご相談のうえで、会社に対する残業代請求の準備に着手しましょう。
今回は、会社から残業代が出ない場合に、労働基準法違反の有無を確かめるためのチェックポイントや、会社に残業代を請求するための方法等をベリーベスト法律事務所の弁護士がお伝えします。
会社から適正な残業代が出ない場合、会社が労働基準法違反に該当する可能性があります。
まずは、残業代に関する労働基準法のルールについて、基本的なことを確認しておきましょう。
労働基準法上、従業員が受け取る賃金は「労働時間」に対して発生します。
「労働時間」とは、労働者が「使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいい(最高裁平成12年3月9日判決)、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないと判断されます(最高裁平成14年2月28日判決)。
会社のオフィス等に勤務している時間だけでなく、テレワークなどの時間も労働時間にカウントされます。
また、会社からの明確な作業指示がなくても、業務量に鑑みて客観的に必要と認められる作業時間については、労働時間に含まれる可能性が高いでしょう。
労働契約や就業規則では、「所定労働時間」が定められています。
いわゆる「基本給」は、所定労働時間に対して支給される賃金のことです。
もし所定労働時間を超えて労働者を働かせた場合、使用者は労働者に対して残業代を支給しなければなりません。
使用者が労働者を働かせることができるのは、原則として法定労働時間が上限となります(労働基準法第32条第1項、第2項)。
法定労働時間は、1日当たり8時間・1週間当たり40時間とされています。
使用者が法定労働時間を超えた時間も労働者を働いてもらいたい場合には、労働組合等との間で労使協定(三六協定)を締結しなければなりません。
さらに、法定労働時間を超える労働に対しては、労働基準法の規定に従い、通常の賃金に対して割増賃金率を乗じた賃金が支払われます。
各残業時間に対する割増賃金率は、以下のとおりです。
残業の種類 | 割増賃金率 |
---|---|
法定内残業(所定労働時間を超えているが、法定労働時間の範囲である) | 100% |
時間外労働(法定労働時間を超える残業である) | 125%もしくは150% ※150%は、大企業の場合で1か月当たり60時間を超える部分に適用 |
所定労働時間であるが、深夜労働(午後10時~午前5時)である場合 | 25% |
休日労働(法定休日の労働) | 135% |
法定内残業であり、深夜労働である場合 | 125% |
時間外労働であり、深夜労働である場合 | 150%もしくは175% ※175%は、大企業の場合で、1か月当たり60時間を超える部分に適用 |
休日労働であり、深夜労働である場合 | 160% |
労働者の雇用形態によっては、労働基準法その他の法律に基づき、使用者が残業代の支払い義務を負わないケースもあります。
ただし、各制度が適切に運用されていない場合には、労働基準法の原則どおり、残業代が発生するケースもあるので注意が必要です。
労働基準法では、以下3つの形態の「みなし労働時間制(裁量労働制)」が認められています。
「みなし労働時間制(裁量労働制)」では、実際の労働時間にかかわらず賃金が支給されます。
そのため、残業をしたからといって、賃金が増えるわけではありません。
「固定残業代制」とは、毎月の賃金の中に、あらかじめ固定残業時間分の残業代を含めて支給する制度を言います。
固定残業代制が採用されている場合、固定残業時間に達するまでは、追加で残業代が支給されることはありません。
ただし、固定残業代制を適用するためには、固定残業代を除いた基本給の額が判別可能であることが必要です。固定残業時間を超過した場合には、残業代が追加で発生する点に注意しましょう。
「管理監督者」とは、「監督若しくは管理の地位にある者」(労働基準法41条2号)すなわち、事業経営の管理者的立場にある者又はこれと一体をなす者のことです。
管理監督者には、法定労働時間、法定休日、休憩の規定に関する労働基準法規制が適用されません。ただし、管理監督者であっても、深夜早朝の割増賃金は支払われなければなりません。
ただし、権限・待遇・時間的裁量などの観点から、経営者と一体的な立場にあるとは評価できない「名ばかり管理職」については、残業代の支払い義務が発生する点に注意が必要です。
また、経営者や管理監督者の活動と一体不可分の職務を行う秘書なども、「機密事務取扱者」として、残業代の支給対象外となります。
守衛・学校の用務員・団地の管理人・専属運転手など、手待ち時間が長い業務に従事する労働者は、使用者が労働基準監督署の許可を受けた場合に限り、残業代の支給対象外となります(労働基準法41条3号)。
公立学校の「教育職員」(校長、副校長、教頭、教諭、講師など)は、学校に対して残業代を請求することができないとされています(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法第3条第2項)。
この種の事業では、対象が自然物であり、業務が天候、気象その他季節等の自然条件に強く左右される原始産業であるため、労働時間や休憩・休日を人事的に厳格に画一的に規制することが困難であり、適当でないという業務の特殊性に着目して、労働時間規制の適用除外となっております(労働基準法41条1号)。
会社によっては、残業代を支払いたくないなどの理由で、残業時間を少なく抑えるための独自ルールを設けているケースがあります。
以下のルールは、いずれも労働基準法に違反しているものです。
ご自身が勤務している会社でいずれかのルールが導入されている場合には、未払い残業代の請求をご検討ください。
残業代は、客観的な労働時間に応じて、1分単位で支給する必要があります。
タイムカードを不正打刻させて、残業代が出ないようにする会社の行為は、労働基準法違反に当たります。
労働を行う場所にかかわらず、会社の指揮命令下で業務を行っている時間については、残業代が発生します。
したがって、在宅勤務や持ち帰り残業には残業代を支給しないという取り扱いは、明らかに労働基準法に違反しています。
勤務時間後に引き続き働く「残業」だけでなく、勤務時間前に働く「早朝出勤」についても、使用者の指揮監督下にある限り、同様に残業代支給の対象です。
使用者の指揮監督下での早朝出勤に対して残業代が出ない取り扱いになっているとしたら、労働基準法違反です。
会社に未払い残業代を請求するには、きちんと残業の証拠をそろえたうえで、会社との協議や法的手続きに臨むことが大切です。
弁護士にご相談いただくことで、スムーズに残業代請求に着手できます。
残業の証拠を十分に確保して提示すれば、会社は不利な立場を悟り、残業代を任意に支払うかもしれません。
また、労働審判・訴訟となった際にも、残業の証拠がそろっていれば、労働者側の主張が認められる可能性が高まります。
残業の証拠としては、以下に挙げるようにさまざまな資料が考えられます。
幅広い視点で証拠を集め、残業代の請求を適切に進めましょう。
残業代請求の手続きには、以下の3つがあります。
残業代請求の相談先としては、労働組合や労働基準監督署、弁護士が挙げられます。
労働組合は、団体交渉を通じて残業代の請求ができますが、その前提として労働組合の加入が必要ですし、会社に労働組合がない場合は、ご自身でユニオンを探して加入しなければなりません。
労働基準監督署は、あくまでも監督官庁としての立場で会社を規制するに過ぎず、未払い残業代の回収に直接協力してくれるわけではありません。
これに対して弁護士は、労働者の代理人として、会社に対する残業代請求を一括してサポートいたします。
弁護士の法的知見を活用すれば、強大な組織である会社に対しても、対等以上に渡り合うことが可能です。
残業代が出ないことに悩んでいる労働者の方は、お早めに弁護士までご相談ください。
会社から残業代が出ない場合、労働基準法違反の疑いがあります。
一部の労働者を除いて、ほとんどの労働者が残業代の支給対象ですので、残業代が出ないことに疑問を持った場合には、一度弁護士にご相談いただくのがおすすめです。
ベリーベスト法律事務所は、残業代が出ないことなどにお悩みの労働者に向けて、随時法律相談を受け付けております。
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