労働者が所定労働時間(会社の就業規則や契約で決められている基準の労働時間)を超えて働いた場合、残業代が発生するため、適切な金額をもらっていない場合には、未払いの残業代を請求することができます。残業代を請求するためには、「所定労働時間とは何か」を正しく理解し、計算しなければなりません。
特に、所定労働時間と法定労働時間とが異なる点には注意が必要です。労働時間に関するルールが分からない場合は、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。
本記事では所定労働時間について、法定労働時間とはどう違うのか、ケース別の残業代計算方法をベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
所定労働時間と法定労働時間は同じ場合もありますが、所定労働時間が法定労働時間を下回る場合もあります(なお、所定労働時間が法定労働時間を超えることは、原則として違法です)。
会社によって取り扱いが異なるため、所定労働時間が分からない場合には就業規則や労働契約を確認してみましょう。
なお、労働時間に当たるかどうかは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたか否かによって判断します。
たとえば、具体的な作業に従事していない手待時間でも、会社の指示があれば作業をしなければならない場合は労働時間に当たります。
所定労働時間を超えて仕事をしたときには残業代が発生しますが、それ以外にも残業代が発生するケースがあります。
具体的には、以下のいずれかに該当する労働時間については残業代が発生します。
法定内残業に対しては基本給に基づいた労働時間分賃金や就業規則に従った賃金が支払われますが、時間外労働・休日労働・深夜労働に対しては割増賃金が支払われます。
それぞれの割増率は下表のとおりです。
時間外労働 | 通常の労働時間の賃金×125% ※月60時間を超えて時間外労働をした場合は、通常の労働時間の賃金×150% |
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休日労働 | 通常の労働時間・労働日の賃金×135% |
深夜労働 | 通常の労働時間の賃金×125% |
時間外労働かつ深夜労働 | 通常の労働時間の賃金×150% ※月60時間を超える時間外労働は、通常の賃金×175% |
休日労働かつ深夜労働 | 通常の労働時間・労働日の賃金×160% |
残業代の金額は、以下の式によって計算します。
1時間当たりの基礎賃金が3000円の労働者につき、以下4つのケースの残業代を計算してみましょう。
時間外労働の割増率は、月60時間以内の部分については25%です。
したがって以下の式により、残業代の金額は7万5000円となります。
時間外労働の割増率は、月60時間以内の部分については25%ですが、月60時間を超えた場合、その部分は50%となります。
したがって以下の式により、残業代の金額は27万円となります。
時間外労働の割増率は、月60時間以内の部分については25%ですが、深夜労働にも当たる部分については50%となります。
したがって以下の式により、残業代の金額は22万8750円となります。
時間外労働の割増率は、月60時間以内は25%、月60時間を超える場合は50%ですが、深夜労働にも当たる場合には25%が加算されます(計算上は、月60時間以内の部分に加算しても、月60時間を超える部分に加算しても構いません)。
また、休日労働の割増率は35%です。
したがって以下の式により、残業代の金額は29万4000円となります。
会社に対して未払い残業代を請求する際には、以下の手順で対応しましょう。
未払い残業代請求に当たっては、まず弁護士に相談しましょう。
弁護士に依頼すれば、残業代の金額を正確に計算できます。また、会社との交渉や法的手続きにおいても、弁護士が法的な根拠に基づいて請求を行うことにより、労働者側にとって有利な解決を得られる可能性が高まります。
未払い残業代請求を成功させるには、残業の証拠を十分に確保することが大切です。
労働者が利用できる残業の証拠は、勤怠管理の方法や働き方などによって異なります。弁護士のアドバイスを受けながら、有力な証拠をできる限り豊富に収集しましょう。
残業の証拠がそろい、未払い残業代の計算が完了したら、会社に対して交渉を提案しましょう。話し合いがまとまれば、未払い残業代を早期かつ円満に回収できます。
会社が交渉に応じない場合は、弁護士名で内容証明郵便を送付することも検討しましょう。内容証明郵便を利用すれば、本気で請求するつもりであることを会社に伝えられるとともに、残業代請求権の消滅時効の完成を6か月間のばす効果があります(民法第150条)。
会社との交渉がまとまらない場合は、裁判所に対して労働審判を申し立てることも考えられます。
労働審判は、労使紛争を早期に解決することを目的とした法的手続きです。裁判官1名と労働審判員2名で構成される労働審判委員会が、調停または労働審判によって紛争解決を図ります。
労働審判の審理は原則として3回以内で終結するため、早期解決が期待できます。その一方で、短期間で審理が行われるため、初回の期日までに十分な準備を整えることが大切です。
労働審判を行ったが、どちらかから異議が申し立てられた場合は、自動的に訴訟となります。
また、労働審判を経ずに直接訴訟を提起することも可能です。双方の主張がかけ離れており、労働審判に対する異議申立てが想定される場合には、直ちに訴訟を提起することも検討すべきでしょう。
訴訟では、労働者側が残業代請求権の存在を証拠に基づいて立証しなければなりません。
残業をした事実を立証し得る証拠がそろっているかどうかが、訴訟の勝敗を分けるポイントになります。弁護士のサポートを受けながら、訴訟に向けて充実した準備を整えましょう。
法定内残業として所定労働時間を超えて働いた場合には基本給に応じた残業代が、さらに法定労働時間を超えて働いた場合には、通常の賃金に対して25%以上の割増賃金が発生します。
所定労働時間と法定労働時間は、会社によっては異なる場合がありますので、自社の規定をチェックした上で正確に残業代を計算しましょう。
勤務先の企業に対して未払い残業代を請求したい方は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士のサポートを受けることにより、適正額の残業代を迅速に回収できる可能性が高まります。
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