サービス残業も立派な残業であり、その分の残業代について法律上は1分単位で請求可能です。法律上は、残業をすれば1分単位で残業代がもらえるのが基本です。
しかし、「残業代を支払ってください」と会社に請求するためには証拠が必要であり、また従業員の立場ではなかなか難しいこともあるでしょう。
今回は、未払いの残業代を請求するための証拠集めから残業代の計算方法、実際に会社との交渉や法的手続きをする場合の流れについて解説していきます。
所定の就業時間を超過して働いている場合には、本来ならば残業代が支給されるはずです。
しかし、労働者に対してさまざまな理由をつけて「残業代は支払わない」と主張している会社もあるのが事実です。
具体的には、以下のように主張して、労働者に残業代を支給しない、いわゆる「サービス残業」を行わせているケースがあります。
たとえば、定時にタイムカードに打刻させてその後、残業させる、仕事を自宅に持ち帰らせて仕事をさせるなどして、表面上は残業が無いように見せかけることや、支払う残業代に上限を設ける、本来なら1分単位で支払うべき残業代の端数を切り捨てるといったケースです。
さらに残業代の支給の必要がない、いわゆる「名ばかり管理職」にしてしまうというケースもあります。
残業代は以下の流れで請求することになります。
残業代の請求にあたっては、残業をしていた証拠を従業員側が揃えなければなりません。また、正しい残業代を計算するための資料も必要になります。
残業していたことを証明する証拠としては、タイムカードや出勤簿のコピー、パソコンの起動履歴などが挙げられるでしょう。
自分が残業をしていた証拠とは別に、会社が残業代を支払っていなかったことを証明する証拠も必要です。たとえば、労働時間が書かれている給与明細などを用意しましょう。
これらの証拠については、会社に対して提出するよう請求していくことになります。
また、労働審判や訴訟をする場合には、会社の登記簿謄本の取り寄せも必要になります。
上記証拠と同様、雇用契約書、就業規則を準備し、正確な残業代の計算を行います。
残業代等は、以下の計算式の通りです。
労働者の「1時間当たりの賃金」をどう計算するべきか分からない、という方もいらっしゃるでしょう。この1時間当たりの賃金は、ご自身がどういった雇用形態で働いているかに寄りますので、以下を参考に計算してみましょう。
① 「労働者一時間当たりの賃金」の計算方法とは
月給制の場合には、基本給与を「月平均所定労働時間数」で割り、「1時間当たりの賃金」を算定します。
「月平均所定労働時間数」は下記の算定式で算出します。
「月平均所定労働時間数」=(365日(うるう年の場合は366日)-1年間の休日数)×1日の所定労働時間数÷12
日給制で働いている場合には、日給を、1日の所定労働時間で割ります。
② 割増率
残業をした時間帯や時間数によって、賃金の割増率が変わることにも注意が必要です。割増賃金率は以下の通りです。
労働の種類 | 賃金割増率 |
---|---|
時間外労働(法定労働時間を超えた場合) | 25%割増 |
時間外労働(1ヵ月60時間を超えた場合) ※適用猶予の場合有 ※代替休暇取得の場合は25%の割増無 |
50%割増 |
深夜労働(午後10時から午前5時までに労働した場合) | 25%割増 |
休日労働(法定休日に労働した場合) | 35%割増 |
時間外労働(法定労働時間を超えた場合)+深夜労働 | 50%割増 |
時間外労働(1ヵ月60時間を超えた場合)+深夜労働 | 75%割増 |
休日労働+深夜労働 | 60%割増 |
※時間外労働+休日労働は、休日労働の場合には時間外労働の割増率は適用されませんので、35%もしくは60%割増のままです。
未払いの残業代を支払ってもらうためには、会社と交渉しなければなりません。しかし、その前に行うべきことがあります。それは、内容証明郵便を送ることです。こうすることにより、会社が「従業員から請求を受けていない」と言い逃れすることを防ぐことができます。
内容証明郵便を送るところからの具体的な流れとしては以下の通りです。
内容証明郵便とは、郵便局がどんな文章が誰から誰に送られたか証明しつつ、文書を送ってくれるサービスです。このサービスを使うことにより、会社に対して残業代請求をしたことを証明します。
内容としては、会社の住所や自分の名前、請求の内容などを記載します。
詳しくは、弁護士に相談するとよいでしょう。
なお、内容証明郵便は法的な書面ではありませんが、公的な体裁を伴った文書であることから、内容を確認した会社が、この時点で未払いの残業代を支払う可能性もあります。
内容証明郵便で未払いの残業代を請求する旨送ったら、次は会社と実際に交渉する段階に入ります。この際、ご自身で会社と交渉することも可能ですが、ご自身だけで交渉をしようとすると、会社が取り合わない可能性もあります。
そのような場合は、弁護士に依頼し、交渉を代理してもらうことをおすすめします。
弁護士であれば、法的な根拠を持って適切に交渉を進めることができるからです。
会社との交渉が不調に終わった場合には、法的な手続きをし、会社に未払いの残業代を支払うよう請求します。この場合の法的手続きとしては、労働審判と裁判の2つが挙げられます。最初から裁判をすることも可能ですが、裁判所には労働審判という制度もあります。
労働審判とは、裁判所の労働審判委員会(裁判官1名と審判員2名で構成)が双方の話を聞き、そのトラブルの事情に即した解決の道を探す手続きです。裁判を起こした場合には解決まで半年~1年以上かかるケースもありますが、審判は原則3回までで解決を図ることから、トラブルの迅速な解決が見込めます。
もし、審判結果に不服がある場合には、裁判に移行することも可能です。
なお、この労働審判もご自身で行うことが可能ですが、未払いの残業代の計算を適切にすることや、法的根拠に基づいた主張を行いたいのであれば、未払い残業代を請求したいと思った時から弁護士に依頼することおすすめします。
裁判をすることになった場合には、双方が証拠を裁判所に提出し、自分の主張を裁判所に対して行います。裁判所は証拠を調べたり、証人の話を聞いたりしたのち、裁判所の判断として判決を出します。判決前に裁判所が和解をすすめることもあります。
上でも述べましたが、裁判になった場合、解決するまでに半年~1年という長い期間がかかることもあります。裁判で勝訴を得るには、入念な準備や証拠集めが必要です。
この点、残業代を支払ってもらいたいと思った時から弁護士に依頼しておけば、裁判となった場合にも、集めておいた適切な証拠をもとに、自身の主張を適切に行うことができます。裁判となった場合に弁護士の依頼を考えるのではなく、残業代請求を思い立ったらすぐに弁護士に依頼することを検討しましょう。
残業代を請求する場合、在籍の有無は関係ないため、退職後であっても、残業代請求はできます。ただし、残業代請求には時効があるため、いつまでも請求することがきるわけではありません。
2022年現在、残業代請求の時効は3年となっています。
2020年に改正労働基準法が施行し、残業代請求の時効が5年となりましたが、それでは長すぎるという企業側の反対もあり、当面は3年となりました。
詳しくは下記のコラムで解説しています。
2020年4月から、残業代請求の時効が3年に!残業代請求はどう変わる?
繰り返しになりますが、サービス残業も立派な残業ですので、残業代を請求することが可能です。
未払いの残業代を請求したい、とお考えでしたら、まずは弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、正確な残業代の計算から裁判の代理まで可能です。またベリーベスト法律事務所では残業代のご相談は、何度でも相談無料です。
ぜひ一度当事務所にご連絡ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
残業代請求、不当解雇・退職勧奨、同一労働同一賃金、退職サポート、労働災害、労働条件・ハラスメントに関するトラブルなど、幅広く労働者のお悩み解決をサポートします。ぜひお気軽に お問い合わせください。
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