ご相談に至った経緯
Aさんは、51歳で運送会社で営業所所長(所長歴3年)という肩書で在職していました。
M&Aで社長が代わり、会社の経営方針に納得できないことから退職しました。
Aさんは営業所長という管理職でありましたが、長時間労働を強いられてきたことから残業代を請求できるのではと思い、ご相談いただきました。
ご相談内容
Aさんは、運送会社で営業所所長(所長歴3年)という肩書で在職していたことから、一見すると管理職であるから、残業代が認められないのではないかと考えられます。
しかし、Aさんの実際の業務内容を聞いているとAさんは営業所長であるものの、業務の遂行方法については、会社から事細かに決められており、管理職としての裁量や権限はほとんどありませんでした。
そこで、弁護士はAさんが労働基準法における管理職に当たらないと考え、残業代請求をすることにしました。
ベリーベストの対応とその結果
■証拠の開示を請求するも、会社側は残業代の支払いを拒否
まずは、相手方の会社に対して、残業代請求の催告とAさんの勤務記録が把握できるタイムカード等の書類の開示を求め、内容証明郵便を送付しました。
数日後、相手方の会社からは、Aさんは営業所長であり、労働基準法における管理監督者に該当するので、残業代は発生せず、支払いには応じないとの回答がありました。
■会社が残業代を支払う可能性がないと判断し、訴訟へ
この相手方の会社の回答内容は予想していたものでありましたから、すぐにAさんと打ち合わせをした上で、交渉では相手方の会社が残業代を支払う可能性がないと判断し、訴訟提起をすることになりました。
訴訟においても、相手方の会社はAさんが、労働基準法における管理監督者に該当するので、残業代は発生しないと主張していました。
裁判所からもAさんが管理監督者に該当するか否かは微妙な事案であると心証がなされていました。
■弁護士の主張により、裁判で和解が成立
そこで、弁護士は相手方の会社の主張の矛盾点やAさんがいわゆる名ばかり管理職であり、権限がほとんどないことを丁寧に主張し、裁判所を説得しました。
その結果、裁判所はAさんが管理監督者でないことを前提とした和解案を提示し、相手方の会社も裁判所の和解案に応じることになり、和解が成立しました。
■解決のポイント
肩書などから管理職に当たると見えても実際の業務内容を詳細にお聞きし、丁寧に主張をすれば、労働基準法上の管理監督者には該当しないことを裁判所が認めてくれることがあり得ますので、肩書が管理職に見えるからといって残業代請求を諦める必要はありません。