過酷な長時間労働を毎月のように行っている場合、過労死のリスクが高まってしまいます。
厚生労働省が定める労災認定基準では、いわゆる「過労死ライン」が定められています。過労死ラインを越える、またはそれに近い長時間労働をしている方は、お早めに労働基準監督署や弁護士へご相談ください。
この記事では、長時間労働の「過労死ライン」や、会社に長時間労働の残業代を請求する方法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
過剰な長時間労働は、従業員の過労死リスクを高めることで知られています。
長時間労働の危険水域の目安となるのが、いわゆる「過労死ライン」です。
まずは過労死とは何なのか、過労死ラインとされている長時間労働はどの程度のものかについて、基本的なポイントを確認しておきましょう。
過労死等防止対策推進法では、以下の死亡等を「過労死等」と定義しています(同法2条)。
一般に「過労死」と呼ばれるのは、上記のうち①と②です。
業務上の強い負荷によって、身体に変調を来した結果、脳卒中や心筋梗塞などによって死亡してしまうケースが「過労死」の代表例です。
また、業務上のプレッシャーによって精神を病んでしまい、結果的に自殺してしまったケースも、同じく「過労死」に該当します。
特に長時間労働が常態化しているようなケースは、業務上の強い負荷が認められる典型例です。
そのため各企業には、長時間労働を抑制する取り組みが求められています。
長時間労働が過労死につながるリスクは、労働時間が長ければ長いほど高くなります。
厚生労働省では、2021年9月に脳・心臓疾患の労災認定基準を改正し、長時間労働と過労死の関係性について、新たな基準を公表しました。
同基準によれば、長時間労働の時間数と期間に応じて、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が、以下のように変化するとされています。
(参考:血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について(厚生労働省))
上記の基準からは、いわゆる「過労死ライン」のポイントは以下の2点と読み取ることができます。
しかし、2~6か月の時間外労働が1か月平均45時間を超える場合にも、労働時間が長時間化するにつれて、業務と発症との関連性が徐々に強まるとされている点に注意が必要です。
なお、労働基準法36条においても、上記の基準を反映した時間外労働の制限の規定が置かれています。
また、2021年9月に改正された新・労災認定基準では、業務と発症との関連性について、単純に労働時間だけで判断するのではなく、それ以外の負荷要因と総合評価を行ったうえで労災認定を行うことを明確化しています。
その際、労働時間以外の負荷要因として、以下の点が考慮されます。
過剰な長時間労働を強いられており、過労死してしまうのではないかと心配な場合には、労働基準監督署や弁護士に相談することをお勧めします。
労働基準監督署と弁護士では、以下のような点が異なりますので、状況に合わせて相談をしてみましょう。
労働基準監督署は、各会社が労働基準法を順守しているかどうかを監視・監督する機関です。
労働基準法違反の疑いがある会社に対しては、臨検(立ち入り調査)等を実施したうえで、行政指導や刑事処分を行います。
労働基準監督署の行政指導等が行われれば、労働基準法に違反する長時間労働が解消されることが期待できるでしょう。
ただし、労働基準監督署は労働者の代理人ではなく、あくまでも監督官庁としての立場で行動するに過ぎません。
そのため、残業代請求などを通じて、労働者個人の被害を直接回復することは依頼できないので注意しましょう。
弁護士は、労働者の代理人として、会社に対して権利を主張するためのサポートを行います。
たとえば、違法な長時間労働の指示を止めるように求めたり、未払いとなっている残業代の支払いを請求したりすることができます。
労働者自身で会社に立ち向かうことが難しくても、弁護士の知識と経験を活用すれば、会社と対等に渡り合えます。
労働基準監督署とは異なり、弁護士の場合は、労働者のために直接的・具体的なサポートを行える点が大きな特徴です。
ご自身やご家族が過剰な長時間労働を強いられている場合には、お早めに弁護士までご相談ください。
相談先について説明をしましたが、過労死を心配するほど働いている方ご本人は、そもそも長時間労働で相談に行く時間を取ることができなかったり、仕事に追われ、過労死寸前の状況であっても相談をしてみようと思う精神的な余裕もないものです。
そういった場合には、まずはご家族の方が代わりに相談し、労働基準監督署や弁護士から聞いた話を伝え、具体的な相談するように促すとよいでしょう。
ご本人が、「自分の労働状況はおかしい」と気付くきっかけになるかもしれません。
毎月のように長時間労働を行っているケースでは、残業代の未払いが発生していることもよくあります。
違法な長時間労働からの解放を目指すとともに、これまでの残業については、きちんと残業代の請求を行いましょう。
会社に対して残業代を請求するには、以下の対応が必要になります。
残業代請求権の存在を立証するため、残業の証拠を集める必要があります。
残業の証拠としては、主に以下のものが挙げられます。
タイムカードなどの客観的な記録を集められなくても、上記のように、他にも残業の証拠となるものはいろいろあります。
弁護士のアドバイスを受けつつ、十分な証拠を集めておきましょう。
証拠が手元にない場合・集め方が分からない場合
もし、ご本人で証拠を収集することが難しいと感じるような場合であっても、諦めてしまう必要はありません。
そのような時には、弁護士に対して会社で労働時間がどのように管理されているのかを説明し、証拠の収集方法についても相談してみましょう。
残業の証拠から残業時間数を把握できたら、労働基準法の規定に基づき、残業代の金額を計算します。
残業代の金額は、以下の計算式によって求められます。
割増率(労働基準法第37条、第138条)
法定内残業 (法定労働時間の範囲内の残業) |
100% ※割り増しなし |
---|---|
時間外労働 (法定労働時間を超える残業) |
125% ※大企業の場合、月60時間を超える部分は150%(中小企業も、令和5年4月1日以降は同様に150%となります。) |
休日労働 (法定休日の労働) |
135% |
深夜労働 (午後10時から午前5時までの労働) |
125% |
時間外労働かつ深夜労働 | 150% ※大企業の場合、月60時間を超える時間外労働の部分は175% (中小企業も、令和5年4月1日以降は同様に175%となります。) |
休日労働かつ深夜労働 | 160% |
以下の設例を用いて、残業代の金額を計算してみましょう。
残業代の割増率は、法定内残業が100%(割り増しなし)、時間外労働が125%、休日労働が135%です。
これを用いて残業代を計算すると、以下のようになります。
これはあくまで一例です。
実際の残業代の計算方法は、勤務状況・雇用契約の内容しだいで、もっと複雑になるケースもあります。
法的知識のない方が計算することはハードルが高いので、正確な残業代を知りたい場合は、弁護士に相談してみるといいでしょう。
残業代の請求は、まずは会社との協議によって行うのが一般的ですが、会社がすんなり応じてくれるとは限りません。
もし会社から支払いを拒否された場合には、労働審判や訴訟などの法的措置の活用も検討する必要があります。
弁護士にご依頼いただければ、法的措置の活用も視野に入れつつ、適切な方法を用いて、適正な残業代の請求をサポートいたします。
違法な長時間労働が横行し、過労死を心配するほどの職場であれば、残業代の未払い以外にもさまざまな問題が発生していることが多いでしょう。
たとえば、
といった場合には、法的に会社の責任を追及できる可能性があります。
また、
ということで悩んでいる方もいるかもしれません。
このような場合に、弁護士は退職をサポートすることもできます。
会社によって不当な扱いを受けた場合には、速やかに弁護士までご相談ください。
弁護士であれば、残業代請求と合わせて様々な労働問題をまとめて解決するための方法をご提案することができます。
「過労死」という言葉が頭をよぎるほどの長時間労働が続いているなら、弁護士にご相談いただき、労働環境の改善を図りましょう。
また、これまでの残業に対して正当な賃金を支払ってもらうため、残業代請求についても弁護士がサポートいたします。
ベリーベスト法律事務所では、違法な長時間労働の改善や、残業代請求などのご相談を随時受け付けております。
ご自身やご家族が違法な長時間労働を強いられている場合は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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