休日出勤をしているのに、給料がまったく増えない……。職場における「タダ働き」に悩んでいる場合、どうすればいいのでしょうか。
法律で定められた休日に労働をしているのに、会社から残業代(休日手当)が支払われていなければ違法の可能性があります。
本コラムでは、休日出勤が多い人が知っておきたい、休日労働のルールや残業代の計算方法、未払い賃金の請求方法について、詳しく解説します。
まずは「休日出勤」の定義と、残業代(休日手当)の考え方について解説します。
「休日出勤」とは、一般的に会社が休日と定めた日に出勤して労働することを意味します。
休日出勤そのものは、労働基準法を順守して行われていれば問題はありません。
しかし、会社が労働者に休日出勤をさせて、労働基準法で定められた賃金や残業代をきちんと支払っていない場合は、違法となる可能性があります。
労働基準法では、労働時間と休日について次のように定めています。
そして第37条では、
には、割増賃金が発生すると規定しています。
休日出勤に対する割増賃金は、一般的に「休日出勤手当」「休日手当」などと呼ばれますが、基本的には法定外の労働に対する手当ということで、残業代の一種といえます。
休日出勤について違法なタダ働きとなるケースは、大きく分けて次の2つのケースが考えられるでしょう。
ひとくちに「休日」といっても、すべてが法律に定められた休日とはいえません。
前述した、労働基準法で定められている休日は「法定休日」と呼ばれます。
一方、週休2日制のうちのどちらか1日のように、法定休日以外で会社が設けている休日は「法定外休日」といいます。
という点が2つの休日の違いです。
休日出勤に関しては、労働基準法ではどのような規定が設けられているのでしょうか。
詳しく説明します。
労働基準法第36条では、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数代表と会社が協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出れば、法定休日に労働させることができると定めています。
つまり、労使で36協定を結び、残業代(休日手当)として割増賃金を支払えば、法定休日に労働をさせることは違法ではないということです。
法定休日に出勤した場合の割増率は、1.35倍以上です。
法定外休日に休日出勤をさせても、休日割増賃金は発生しません。
ただし、本来、労働義務がない日に働いているため、労働時間分の残業代を請求できます。
また、その週の労働時間が「週40時間」に達してしまう場合は、36協定が必要となりますし、割増賃金の対象にもなります。
会社は、40時間を超えた分について、通常の賃金の1.25倍以上の割増賃金を支払わなければなりません。
管理監督者の地位にある人は、その業務の性質などから一般の社員と同様の労働時間の管理をするのは適さないとして、労働時間や休日に関する規定から除外されています(労働基準法第41条2号)。
管理監督者が一般の従業員にとっての法定休日に労働しても、休日労働をしたことにはならないため、36協定は不要ですし、休日手当も支払われません。
ただし、管理監督者イコール管理職ではない点に注意が必要です。
管理職として扱われている場合でも、
などの条件を満たしていなければ、法律上、管理監督者とは認められません。
管理監督者について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
あらかじめ法定休日と定められていた日を労働日とし、その代わりにほかの労働日を休日にするのが「振替休日」です。
もともとの法定休日は労働日の扱いになっているので、その日に労働しても割増賃金の対象にはなりません。
反対に、法定休日に勤務をしてから、事後的に、代わりとなる休日が決められた場合には、「代休」となります。代休の場合には、休日労働をした事実はなくならないため、36協定の締結が必要ですし、休日割増賃金の支払いも必要です。
なお、法定休日を変更し、振替休日を設けるためには、あらかじめ就業規則などで休日振替制度を規定しておく必要があります。
休日手当の不払いが発生しやすいケースと、本来支払われるべき残業代の計算方法について解説します。
休日に研修やイベントなどへの参加をする場合には注意が必要です。
たとえば、休日に開催される研修やイベントが、任意の参加であれば休日労働にはあたりませんが、強制参加の場合や欠席にペナルティーがある場合などは休日労働として認められる可能性があります。
この場合、休日手当が支払われていなければ違法です。
また、上司からの明示的な休日労働の指示がなかったとしても、明らかに平日の勤務時間内に終わらない仕事量で、やむを得ずに、休日に出勤して仕事をした場合や自宅に持ち帰って仕事をした場合も、休日労働に該当する可能性があります。
では、残業代(休日手当)は具体的にどのように算出するのでしょうか。計算方法について説明します。
一般的な残業代は、次の計算式で算出できます。
「1時間あたりの賃金」は、月給制の場合、「月給(家族、通勤、住宅の諸手当などは含まない)」÷「1年間における1か月の平均所定労働時間」で計算します。
たとえば、各種手当を除いた月給が20万円、1か月の平均所定労働時間が160時間のケースで、残業代(休日手当)を計算してみましょう。
1日の労働が法定労働時間(8時間)を超えない場合・超える場合の両方のケースで確認します。
法定休日の場合、深夜に労働しない限り、労働時間にかかわらず割増率は1.35倍以上です。1日の労働時間が8時間を超えても、時間外労働の割増率(1.25倍以上)を加えた1.6倍とはならないため注意が必要です。
法定外休日の場合についても、残業代を請求できますが、週40時間を超えていない残業時間については、割増はありません。
たとえば、上記と同じ条件の人が、法定外休日の前までに週35時間働いていたケースでは以下のようになります。
休日出勤をしたにもかかわらず、きちんと手当が支払われていなければ、会社に請求するべきでしょう。
そこで、未払い賃金(残業代)はどのように請求するかについて解説します。
休日出勤に関して未払い賃金、残業代がある場合、まずは労働者個人が会社と直接交渉して支払いを求めます。
しかし、会社という組織に個人が対抗するのは簡単ではありません。
未払い賃金トラブルは、都道府県労働局の紛争調整委員会や総合労働相談コーナー、地方公共団体の労働委員会などを利用することも検討できますが、弁護士に相談するのも一案でしょう。
交渉で解決に至らなかった場合は、労働審判や訴訟の提起により、解決を目指すことになります。
未払いの休日手当の請求には、休日に労働をしたことを客観的に示す証拠が不可欠です。
タイムカードや出勤簿、携帯電話の発信記録や上司とのやりとりを示すメール、会社の建物の出入記録なども証拠になり得ます。
また、雇用契約書や就業規則、給与明細なども、賃金がどのように支払われていたかを示す証拠として必要です。
労働者が個人で残業代を請求しても、残念ながら会社が誠意ある対応をしてくれるとは限りません。また、請求にあたっては、正しく残業代を計算する必要がありますが、計算は複雑で手間もかかります。
その点、労働問題の対応実績が豊富にある弁護士ならば、労働基準法についての豊富な知識をもとに、証拠集めのアドバイスや未払い賃金の計算を正確に行うことが可能です。
また、弁護士が代理人となることで、会社側交渉に応じるというケースも少なくありません。
結果として、自分だけで取り組むよりも、会社から短期間で確実な支払いを受けることが期待できるでしょう。
業務量が多く、ほぼ休みなく出勤しなければならないにもかかわらず、割増賃金が支払われていないとすれば、違法の可能性があります。
支払われるべき休日手当がきちんと支給されているか、一度チェックしてみることをおすすめします。
休日手当の未払いが疑われ、会社に請求するべきかお悩みの方は、労働問題の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にぜひ、ご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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