近年、日本だけではなく世界的に医療従事者の人手不足は深刻化しており、医師だけではなく、看護師の方も長時間労働を余儀なくされています。
しかし、業務負担や労働時間が大幅に増えているにもかかわらず、残業代が支払われていないケースもあるようです。
残業代の未払いは違法であり、未払分の支払を病院に請求することが可能です。本コラムでは、看護師の残業代が発生するケースや、未払い残業代があった場合の請求方法について解説します。
といったことは看護師の方であれば、日常的に行っているのではないでしょうか。
患者のケアに必要な始業前・就業後の仕事をこなし、技術向上のため業務時間外に研修に参加するということは、「命を預かる仕事だから当たり前だ」と感じていらっしゃるかもしれません。
しかし、業務時間外に働いたにもかかわらず、それに対して残業代が支払われていないのであれば、それは違法であり、残業代の請求ができる可能性があります。
なぜなら、労働基準法では、原則として「1日8時間、週40時間」を超えて働いた場合には残業代が発生する、と定められているからです。
もちろん、看護師の方にもこの法律は適用されています。
また、災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合には、使用者は、法定の労働時間を超えて、または法定の休日に労働させることができます(労働基準法第33条第1項)。
災害で多数の負傷者が出た場合や、感染症の大流行などの影響により、看護師などの医療従事者が、このような特別に認められる残業に従事するケースは多いと思われます。
労働時間が1日8時間、週40時間を超えれば、基本的には残業代が発生しますが、職場にいる時間がすべて労働時間なのかというと、そうではありません。
看護師の場合、労働時間として認められるのは、どのように仕事をした時なのでしょうか。
まずは、労働時間の判断基準を押さえておきましょう。
厚生労働省のガイドラインなどでは、判例・裁判例を踏まえ、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と示しています。
そのため、患者に対応している時間以外でも、実質的に病院から業務への従事を求められている場合は、労働時間と判断されます。
労働時間としてカウントされる可能性があるケースを、具体的に挙げてみましょう。
① 具体的なケース
たとえば、以下のような場合です。
これらは、病院側の都合や指示で対応しなくてはならないことですので、原則として「業務」として扱われるべきものです。定時後にこれらのことをしていたら、残業代も発生している可能性があります。
「心あたりがある!」と思った方は、残業代請求について検討してみると良いでしょう。
② 状況により判断が異なる場合も。迷ったら弁護士へ相談を
ただし、研修の場合は、参加が「強制」だったのか「任意」だったのか、などによって、業務時間として扱われるか判断が異なります。また、状況により個別に判断が必要なケースもあります。
「こんな場合は労働時間に入るの?」「残業代はもらえるの?」と判断に迷ったら、弁護士に相談してみると良いでしょう。
弁護士であれば、あなたの具体的なケースについて、労働時間に該当するかどうか、つまり「使用者の指揮命令下に置かれている時間」であるかどうかを法的な観点から的確に判断できます。
労働時間は「1日8時間、週40時間」が基本である旨、上記で解説しました。
しかし、ここで、「うちの病院は、1日8時間以上働くことが義務づけられているが、それは違法なのでは?」といった、疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。
結論から言うと、労使間でいわゆる「三六(サブロク)協定」を結んでいる場合には、違法とはなりません。
以下で三六協定と残業代の関係について解説します。
労働基準法第32条は、労働時間について「休憩時間を除き、1日8時間、週40時間」を超えてはならないとしています。これを「法定労働時間」といい、基本的には看護師にも適用されています。
しかし、病院などで働く看護師全員が1日8時間までで帰宅してしまえば、経営が成り立たなくなるケースは少なくないでしょう。
そこで労働基準法第36条は、使用者と労働者の過半数を代表する者または労働者の過半数で組織する労働組合が協定を結び、行政へ届け出ることを条件に、法定労働時間を超えて残業させることができると定めています。
労働者と病院の間に三六協定が結ばれている場合には、協定を結んだことを掲示したり、書類を渡したりして、労働者に周知しなければなりません。まずは、ご自身の勤務先の状況を確認してみましょう。
なお、上述のとおり、災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合には、法定労働時間を延⾧して労働させることも可能になりうるため(労働基準法第33条第1項)、看護師などの医療従事者の場合には、三六協定の上限を超えた残業をしているケースもあると思われます。
勤務先と労働組合等との間で合意があれば、「1日8時間、週40時間」を超える勤務時間が認められていますが、「1日8時間、週40時間」を超えて労働者を働かせた場合には、使用者は労働者に対して通常賃金の25%以上の割増で残業代を支払う義務があります(労働基準法第37条)。
労働基準法第33条第1項により、災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合に法定労働時間を延⾧した場合も同様です。
なお、あなたの病院が、就業規則等で、法定労働時間よりも短い労働時間(所定労働時間)を定めていた場合は、所定労働時間を超えた労働につき残業代を請求できます。
そして、法定労働時間を超えた部分については、25%の割増での残業代の支払が認められます。
実際の労働時間に対し、残業代が十分に支払われていない可能性がある場合、どうすればよいのでしょうか。
病院に残業代を請求するために必要なことについて、順を追って見ていきましょう。
未払い残業代を請求するためには、残業をしたことの証明が不可欠です。
まずは「残業の証拠」を集めなければなりません。
雇用契約書や就業規則、タイムカード、出勤簿などのほか、業務用パソコンのログイン・ログアウトの記録、上長と電話やメールでやり取りした記録などは証拠として認められる可能性があります。
残業した時間に応じて、未払いになっている可能性がある残業代の総額がいくらになるか計算し、請求額を明らかにします。
残業代の証拠と請求額を提示し、病院側に未払い残業代を請求します。
病院側に請求しても応じない場合、労働基準監督署に申告することも考えられるでしょう。病院に違法行為があったと認められると、是正するよう行政指導をしてもらえます。
ただし指導に法的強制力はないため、必ず未払い残業代が支払われるとは限りません。
話し合いで解決できなかった場合は、労働審判の申し立てという選択肢があります。
労働審判は、使用者と労働者個人の労働トラブルについて、原則3回以内の期日で審理を行う制度です。通常の裁判と比べて迅速な対応や調停による解決が期待できます。
いずれの手段でも解決に至らなかった場合は、裁判を提起することも可能です。
また、最初から裁判を提起することも可能です。
適切に残業代が支払われていない場合、病院に対して残業代を請求することができることはここまで説明しました。
しかし、残業代請求には時効があるため、残業代を請求したいとお考えなら、なるべく早めに準備をする必要があります。
未払い残業代の請求権は、発生してから2年(※)で消滅しますので、その点、心にとめておきましょう。
※令和2年4月以降に発生したものは3年
残業代請求の時効について、詳しくはこちらの「2020年4月から、残業代請求の時効が3年に!残業代請求はどう変わる?」のコラムをご覧ください。
未払い残業代の請求には、専門的な知識やさまざまな手続きが必要となるため、忙しい看護師の方が、ひとりで対応するのはなかなか難しいケースも少なくありません。
こちらでは、残業代請求を弁護士に相談するメリットについてご紹介します。
ご相談者さまがお持ちの資料について、有用な証拠かどうか判断することが可能です。
残業代の証拠をお持ちでない場合についても、具体的にどのような証拠が必要か、弁護士がアドバイスします。
場合によっては、弁護士が勤務時間の情報を開示するよう病院に対して請求することも可能です。
看護師の方は、夜勤などにより変則的な働き方をするケースは少なくありませんので、ほかの職種と比べて残業代の計算が複雑になることもあります。
これまで未払いとなっている残業代を、割増率を含めて正確に総額を算出するのは、なかなか骨の折れる作業でしょう。
しかし弁護士であれば、複雑な残業代も法的知識にもとづき正確に計算することが可能です。
病院に残業代を請求し、円満に解決できれば問題ありませんが、ご自身のみで対応するとまともに取り合ってもらえず、交渉がうまく進まないというケースは少なくありません。
弁護士であれば、代理人として病院と交渉することが可能ですし、なによりご自身で対応するよりも、弁護士が交渉した方が相手にプレッシャーを与え、真剣に取り合ってもらえる可能性も高まります。
また、交渉をご自身で行う場合、相当なストレスが発生するところ、弁護士に依頼すれば、そのような心理的負担が軽減されます。
話し合いや交渉が難航し、労働審判や裁判を提起する場合でも、そのまま弁護士に対応を依頼できるので安心です。
必要書類の作成から、裁判所への手続きや法廷での主張、証拠の提出などを行い、ご相談者さまの残業代請求をしっかりサポートします。
看護師は長時間労働や残業が発生しやすい職業であるのに加え、サービス残業が常態化している病院も少なくありません。しかし法定(所定)労働時間を超えて働いた分は、残業代としてきちんと支払われなければなりません。
ご自身の労働時間に見合う残業代が支払われていない場合は、おひとりで悩まず、労働問題の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所までご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
残業代請求、不当解雇・退職勧奨、同一労働同一賃金、退職サポート、労働災害、労働条件・ハラスメントに関するトラブルなど、幅広く労働者のお悩み解決をサポートします。ぜひお気軽に お問い合わせください。
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