新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在宅勤務を導入した会社は少なくありません。
在宅勤務では勤務時間とプライベートな時間の切り分けが難しく、労働時間管理のあり方や残業代の算定方法などについて疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。「みなし残業制度」が導入されている場合も、在宅勤務が労働問題に発展しやすいケースのひとつです。
今回は、みなし残業制度の仕組みを説明するとともに、在宅勤務で未払い残業代が発生した場合の確認事項や請求方法などについて弁護士が解説します。
在宅勤務などのテレワークでも、法定労働時間を超えた労働時間については、会社は従業員に対して時間外の割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。
みなし残業制度を採用した場合も同様です。
たとえ在宅勤務であっても、みなし残業時間を超えて残業した場合、会社はその分の残業代を支払う必要があります。
みなし残業制度とは、「20時間」や「30時間」など、あらかじめ一定時間を残業したとみなし、固定残業代として基本給や手当などの固定給に含めて支払う制度です。
固定残業制度と呼ばれることもあります。
みなし残業制度は、営業職などに適用される「事業場外のみなし労働時間制」や研究職などに適用される「裁量労働制」のように、労働基準法に定められた労働時間制度ではありません。
みなし残業制度は適用要件や適用範囲が厳格に定められておらず、会社が任意に導入することができます。
就業規則への明記やみなし時間を超えた分の残業代の支払いなど、適切に制度を運用すれば違法とはなりません。
正しく運用されたみなし残業制度では、あらかじめみなした時間まで残業しなくても、固定残業代が満額支払われます。
一方、みなし時間を超過した残業には、その超過分を固定残業代に加えて支払うことになります。みなし時間を超えて残業した月のお給料に超過分の残業代を加えて支払うことをせず、実際の残業時間がみなし時間に到達しなかった月に充当するといった取り扱いはできません。
みなし残業制度は、会社と従業員の双方にメリットがあります。
一方で、在宅勤務においてみなし残業制度が適用される場合には、労働時間の把握が難しいことを理由に固定残業代をカットされる、超過分の残業代が支払われないなどのトラブルが発生する恐れがあります。
在宅勤務は、通勤時間の削減や業務の効率化、ワークライフバランスの実現など、さまざまなメリットがある勤務形態です。
しかし、一部の会社では、残業代の未払いや固定残業代のカットなど、従業員が不当な扱いを受けるケースも少なくありません。
未払いの残業代を請求するにあたっては、事前に次の事柄について確認しておきましょう。
雇用形態は大きく分けて「雇用型」と「業務委託型」という2つの形があります。
在宅勤務での残業代を請求するにあたっては、次の2つの条件を満たしていることが必要です。
就業規則や社内ルールに従い、上司の許可を得て残業をしたのに残業代が支払われないときには、どのように対応すればよいのでしょうか。未払い残業代を請求するには次の方法があります。
会社が支払うべき残業代を計算して、残業代請求書を作成します。
請求書を会社に提出し、支払ってくれるように申し入れします。
会社が話し合いに応じてくれない場合や支払いを拒否された場合には、会社に内容証明書を送付します。
未払い残業代の時効は2年(令和2年4月以降に支払われる賃金については当面3年)ですが、内容証明書を送付することにより、時効期間を6か月延ばすことができます。
未払い残業代の時効については、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
未払い残業代のほか、会社の労働時間管理や賃金管理について疑問を感じたら、各地域の労働基準監督署・労働局に設置してある「総合労働相談コーナー」でアドバイスを受けることができます。
会社との交渉が決裂した場合には、法的手続きを用いて未払い残業代を請求します。
労働審判とは、裁判所に申し立てて行われる紛争解決手続きです。原則3回以内の期日で審理するため、訴訟に比べると早期の解決が期待できるでしょう。
もちろん訴訟(労働裁判)を起こして請求することも可能です。
会社と未払い残業代について交渉するには労働基準法などの法的知識が必要であり、個人が会社と直接交渉するのはなかなか難しいことです。
場合によっては退職勧奨などの嫌がらせを受ける恐れもあるでしょう。
弁護士を介入させると、法的知識や経験に基づく主張により会社との円滑な交渉が期待できるうえ、退職勧奨などの不当な扱いにも対抗できます。
残業代の証拠集めのアドバイスや残業代の算定、内容証明の送付などについても対応してもらえるでしょう。
在宅勤務は労働時間管理が難しいことから、長時間勤務やサービス残業などの問題が生じやすい勤務形態です。みなし残業制度であっても、あらかじめ定めた時間を超えた残業については残業代を請求することができます。
未払い残業代を請求するのなら、弁護士に相談することをおすすめします。
在宅勤務で未払い残業代が発生してお困りであれば、労働問題の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所へお任せください。
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