「管理職だから残業にはならない!」「管理職だから休日はない!」などと言われたことがある管理職の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、これらの説明は「管理職」と労働基準法上の「管理監督者」を混同しているので、必ずしも正しいとはと言えません。
今回は、管理職と管理監督者との違いを踏まえつつ、管理職と残業時間の関係について説明していきます。
管理職とは、一般的に企業内において、部長や課長といった役職の方のことを指します。
一方で、労働基準法には「管理監督者」という概念があります。
世間一般の意味でいう「管理職」が、労働基準法上の「管理監督者」に該当するかは、以下の3点を中心として総合的に考慮して判断されています。
この基準に照らして、管理監督者ではないとされれば、会社の中で管理職についていたとしても、労働基準法上は一般の労働者と同じ扱いになります。
一般の労働者には当然に適用される労働基準法の規定が、なぜ管理監督者には適用されないのでしょうか。
それは、管理監督者の地位の特殊性に理由があります。
管理監督者は、立場が経営者に近く重要な職務を任されているので、一般の労働者と同様の労働時間規制になじまず、勤務時間についてある程度自由な裁量をもつため、厳格な労働時間規制によって、保護する必要性が低いと考えられているのです。
もし、管理職の方のなかで、労働基準法上の「管理監督者」に該当する場合には、以下のように一般の労働者とは違う扱いを受けることになります。
労働基準法32条によれば、1日8時間、1週40時間を超えて労働することは原則として禁止されています。
しかし、管理監督者に該当する場合には、この労働時間の規制を受けなくなります。
簡単に言えば、何時間働いても時間外労働として扱われないということです。
ただし、深夜労働については、管理監督者に該当する場合であっても、深夜割増手当が支払われます。
詳しくは「3、管理職だと残業代をもらえない?」をご参照ください。
労働基準法34条によれば、労働者は1日6時間を超えて労働する場合には45分、8時間を超えて労働する場合には1時間以上の休憩をとる必要があります。
しかし、管理監督者に該当する場合には、必ずしも休憩時間を取る必要はありません。
つまり、業務上必要であれば、休憩時間なく働き続けなければならないケースがあります。
現在は、週休2日制を採用している企業が多いですが、労働基準法35条によれば、毎週少なくとも1日の休日を、一般の労働者はとる必要があります。
しかし、管理監督者に当たる場合には、この休日に関する決まりが適用されません。
では、管理職の方は、残業代をもらうことはできないのでしょうか。
この点については、管理職の方が、労働基準法上の「管理監督者」に該当するか否かで結論異なります。
管理職の方が、労働基準法上の「管理監督者」に該当するのであれば、残業代をもらうことはできません。
それは、法律が残業代を管理監督者には支払わなくて良いと認めているからです。
但し、その残業が深夜に行われたものであるならば、深夜割増賃金をもらうことできます。
深夜労働とは、午後10時~午前5時までに行う労働のことを指します。この時間内に働いた場合には、一時間当たりの賃金の0.25倍の金額が支払われます。
深夜労働について、詳しくは下記のコラムをご覧ください。
深夜労働手当の対象になる時間は? 年齢制限や割増額の計算法も解説
管理職の方が、労働基準法上の「管理監督者」に該当しないのであれば、一般の労働者と同じように、残業代をもらうことができます。
もし現在残業代をもらっていない場合には、企業側に対して残業代請求を検討しましょう。
今回は、管理職と残業時間の関係について説明してきました。
会社から「あなたは管理職だから残業代は出ない」と言われていても、労働基準法上の「管理監督者」には当たらないというケースはありますので、まずはご自身の立場がどのようなものになっているのか、確認しましょう。
この点、弁護士であれば、
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