本記事をお読みの方の中には、会社から残業代が一切支給されず、「残業した分のお金を支払ってほしいけれど、請求するにはどうしたらいいのか分からない」とお考えの方もいるでしょう。
厚生労働省の「監督指導による賃金不払残業の是正結果」によると、令和4年1月から令和4年12月の期間中、労働基準監督署の監督指導により残業未払い分の賃金が支給され解決した件数は、1万9708 件でした。また、対象労働者数は17万5893人となっています。
このように、残業代が支払われない現状に不満を抱えている方は多くいらっしゃいます。今回は、会社に対して残業代を請求するとき、最低限知っておきたいことについてベリーベスト法律事務所の弁護士が説明します。
(出典:厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/chingin-c_r04.html)
労働者が予め定められている労働時間を超えて働いたのに、その分の賃金が支払われていないとき、残業代の支払いを請求できる可能性があります。
まずは、会社に対して、未払い分の残業代を請求することができるのかどうかを確認しましょう。
具体的には、以下は、残業代が請求できる可能性が高いケースです。
ただし、その労働者が労働基準法41条2号に定める「管理監督者」であったり、裁量労働制が導入されていたりする場合など、置かれている状況によっては、残業代の請求ができないことがあります。
まずは、自分の立場や就業規則等の会社の労働制度を確認してみましょう。
会社に対して残業代を請求するとき、必ずしも第三者を交える必要はありませんが、適切な残業代請求をするためには、弁護士に相談することをおすすめします。ここからは、残業代請求を行うために確認しておくべきことについて、説明していきます。
会社に残業代を請求するにあたっては、自分が何時から何時まで働いていたかを示す何かしらの証拠が重要です。自分の残業代がどのくらいになるのかを確認するだけでなく、あなたの残業を証明する証拠を集めましょう。
たとえば、以下のようなものが証拠となり得ます。
証拠の種類 | 証拠の一例 |
---|---|
残業していたことの証明になる証拠 | タイムカードや勤務時間表、交通ICカード型定期の通過履歴、業務に関するメールなど |
残業代の計算にあたり必要な証拠 | 雇用契約書(労働契約書)、就業規則など |
会社が十分な給与を支払っていなかったことを証明する証拠 | 全労時間が書かれている給与明細、源泉徴収票など |
その他労働審判を利用する場合に必要な資料 | 会社の登記簿謄本 |
これらの証拠が手元になかったり、集め方が分からなかったりする場合は、弁護士に相談することをおすすめします。たとえ証拠が自分で収集できなかった場合であっても、会社に対して、勤務時間の記録や雇用契約書などの開示請求を行うことができるからです。
適切に請求を進めるためにも、何か困ることがあれば、弁護士に依頼をするようにしましょう。
支払われていない残業代が現時点でどのくらいの金額になるのか、まずは自分自身で計算してみましょう。未払い分の賃金を計算するときに不可欠なものが、割増率というものです。
割増率とは、残業の種類ごとに決められた率で加算される賃金の割合のことをいいます。
割増率は、以下の表のとおりです。
労働の種類 | 賃金割増率 |
---|---|
時間外労働(法定労働時間を超過した場合) | 25%割増 |
時間外労働(1か月60時間を超過した場合)※ | 50%割増 |
深夜労働(午後10時から午前5時の間で労働した場合) | 25%割増 |
休日労働(法定休日に働いた場合) | 35%割増 |
時間外労働(法定労働時間を超過した場合)+深夜労働 | 50%割増 |
時間外労働(1か月60時間を超過した場合)+深夜労働 | 75%割増 |
休日労働+深夜労働 | 60%割増 |
上記の割増率を参考にしながら、ご自身の残業代を計算してみましょう。
一般的な勤務形態のときは、以下の計算式で算出します。
また、これまで説明した計算式を使うだけでなく、残業代チェッカーを使い簡易的におおよその残業代を調べることも可能です。あくまでも目安を示すものになるので、参考程度にとどめておくと良いでしょう。
残業代の計算が難しい場合・不安な場合は、弁護士に相談を
ここまで残業代の計算についてご紹介しました。
人によっては、フレックスタイム制や裁量労働制などで一般的な勤務形態の計算方法に当てはまらなかったり、そもそも計算結果が正しいのか疑問に思ったりする方も少なくないはずです。
そのような方におすすめなのは、弁護士に依頼をするという手段になります。
弁護士に依頼をすれば、あなたの雇用形態や勤務状況から、正確な残業代を計算してくれるでしょう。
今までの残業代を算出し、必要な証拠もそろったら、会社に対して残業代を請求する手続きに入ります。どのような流れになるのか、確認しましょう。
まず、会社に対して「未払い分の残業代を支払ってほしい」という意思表示をするために、内容証明郵便を送る方法があります。
内容証明郵便とは、文書のやり取りを記録に残したり、証明したりするときに活用する郵便方法のひとつです。日本郵便株式会社によるサービスで、郵便窓口だけでなく、ネット上でも利用することができます。
内容証明郵便に記載する内容としては、一般的に以下のようなものを書き入れます。
内容証明郵便は、法律的にはあくまで普通の書面です。そのため、あなたが内容証明郵便を出したとしても、残業代を支払ってくれない可能性があります。
しかし、内容証明郵便を送ることで「残業代請求の時効の進行を一時的に止める」という効果はあります。
実は、残業代を請求できるのは現状3年となっています。つまり、3年前のものまでしか請求できません。時効によって残業代の請求ができなくなることを避けるためにも、内容証明郵便を会社側に送ることが大切です。
内容証明を送ってからも残業代が支払われない場合、算出した実際の残業代をもとに、会社側に残業代の支払いについて、当事者同士で話し合いを行います。
この話し合いできちんと支払いを行う会社もあれば、そもそも交渉に応じなかったり、支払いを拒否したりする会社もあります。
証拠を集めたからといって、必ずスムーズに話が進むとは限らず、反論を受ける可能性など、さまざまなパターンを考えておくことが大切です。個人で交渉をするのは労力や負担が掛かるものだと理解しておきましょう。
会社との交渉や内容証明郵便を送るなどをしても和解できなかった場合、第三者を挟んでの手段を取ることになります。具体的には、労働審判の申し立てや訴訟での解決です。
これらの方法を行うには、法的な知識や手続きが必要になります。そのため、個人で対処するのは非常に困難でしょう。
このような手段で残業代請求を行う際は、労働問題に詳しい弁護士へ依頼することをおすすめします。
残業代を請求する場合、請求する時点で会社に在籍しているかどうかは関係ありません。退職した後であっても、未払い分の残業代を請求することは可能です。
しかし、注意すべき問題が2つあります。
1つ目に、残業代請求には時効があるということです。前述のとおり、残業代を請求できるのは3年までと法律で決められています。たとえば、令和4年3月21日に支払われるはずだった残業代の請求権は、令和7年3月21日に時効によって消滅し、以降請求することはできません。
また、この時効は今後5年にまで伸びる可能性があるため、残業代請求の時効について、チェックしておきましょう。
2つ目に、残業をしていた証拠を集めることが困難になる可能性があります。会社に対する開示請求を行うことはできますが、うまく隠されてしまうケースもあるでしょう。
そのため、できるだけ在籍している間に準備を進めておくと良いでしょう。
今回は、残業代を請求できるケースや残業代を請求するために確認するべきこと、請求するための流れについて説明しました。まずは証拠を集めたり、残業代を算出したり、ご自身でできることを確認していきましょう。
念頭に置いておきたいことは、残業代の請求の交渉を行うのは個人ではなく、会社相手であるということです。時間を割くうえにスムーズに進まないケースもあるため、大きな労力が必要になります。
あなたの負担を少しでも軽くしたり、不安を解消したりするためにも、残業代請求に詳しい弁護士に依頼することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、残業代請求のご相談は、何度でも無料で受け付けています。
残業代の請求を考えている方は、ぜひ一度当事務所までご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
残業代請求、不当解雇・退職勧奨、同一労働同一賃金、退職サポート、労働災害、労働条件・ハラスメントに関するトラブルなど、幅広く労働者のお悩み解決をサポートします。ぜひお気軽に お問い合わせください。
1人で悩むより、弁護士に相談を
1人で悩むより、弁護士に相談を