育児や介護などを理由に、時短勤務をしているという方も少なくありません。時短勤務を利用することで、仕事と育児・介護を両立できますので、仕事を辞めることなく働き続けることが可能になります。
しかし、会社によっては時短勤務中であるのに残業を命じられるケースもあるようです。せっかく時短勤務になったのに、残業することになれば「今までと変わらないのでは?」と感じるかもしれません。このような時短勤務中の残業は違法にならないのでしょうか。
今回は、子育て世帯が知っておくべき、時短勤務中の残業のルールについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
時短勤務中であっても残業は可能なのでしょうか。
以下では、時短勤務の概要と時短勤務中の残業の法的問題点について説明します。
時短勤務とは、子育てや介護などの両立を目的として、フルタイム勤務の労働者における1日の勤務時間を短縮する制度をいいます。時短勤務は、育児・介護休業法により定められた制度で、正式名称を「短時間勤務制度」といいます。
時短勤務を利用することで、仕事と家庭の両立を図り、離職せずに働き続けることができるなどのメリットがありますので、条件に該当する方は、積極的に利用していくべきでしょう。
時短勤務の適用要件については、2章(1)で解説します。
育児・介護休業法では、時短勤務中の残業を禁止してはいません。
そのため、時短勤務中であっても残業は可能です。
ただし、労働基準法では1日8時間、1週40時間という法定労働時間を定めていますので、それを超える残業は違法となります。
また、36協定の締結・届出により法定労働時間を超える残業が可能になりますが、残業時間には月45時間・年360時間という上限が設けられていますので、このような上限を超える残業も違法です。
つまり、時短勤務中の労働者の残業自体は違法ではありませんが、労働基準法による残業時間の規制が及ぶため、具体的な状況によっては違法な残業になることもあります。
一定の条件を満たす場合、労働者が会社に対して残業の免除を請求することができます。
対象となる労働者から残業免除の請求があった場合、会社は、労働者に残業をさせることができませんので、会社から残業を命じられたとしても、これを拒否することができます。
育児を理由とする残業免除は、これまでは3歳未満の子どもを養育する労働者に限定されていました。
しかし、育児・介護休業法の改正により令和7年4月1日からは、小学校就学前の子どもを養育する労働者に対象が拡大されます。
時短勤務はどのような場合に適用されるのでしょうか。
以下では、時短勤務の適用要件と対象労働者について説明します。
育児・介護休業法の時短勤務の適用が受けられるのは、以下の4つの要件をすべて満たす労働者です。
これらの要件を満たす労働者は、会社に対して、時短勤務の適用を申請することにより、原則として所定労働時間を6時間に短縮できます。
なお、時短勤務制度は、育児・介護休業法が定める法律上の制度ですので、会社に時短勤務制度がなかったとしても、申請することが可能です。
育児・介護休業法の時短勤務制度は、前述した4つの適用要件を満たせば、パートやアルバイトなどの非正規労働者にも適用されます。
ただし、時短勤務制度の適用要件の中には、「1日の所定労働時間が6時間を超えていること」という要件がありますので、6時間以下の短い所定労働時間で働いているパートやアルバイトの方は、対象外になります。
時短勤務制度が適用されている場合でも、残業代の未払いは違法です。
以下では、時短勤務における違法な残業代未払いのケースを説明します。
サービス残業とは、本来支払うべき残業代を支払うことなく、労働者に残業をさせることをいいます。
労働者には残業時間に応じた残業代を請求する法的権利がありますので、サービス残業を理由に会社が残業代を支払わないのは違法です。
もし、会社から「サービス残業だから残業代は出ない」と言われたとしても、しっかりと残業代を請求していくようにしましょう。
時短勤務は、通常の勤務時間よりも短いため、勤務時間内に仕事が終わらず、持ち帰り残業を余儀なくされるケースも少なくありません。
近年では、リモートワークの普及もあり、職場外で仕事をする「持ち帰り残業」が増えているといわれています。
会社から明示または黙示の指示により、持ち帰り残業がなされたといえる場合には、持ち帰り残業をした時間も労働時間にあたりますので、残業代を請求することが可能です。
会社から明示または黙示の指示は、以下のようなケースが該当します。
時短勤務でも、残業を命じることは禁止されていませんので、あらかじめ一定時間分の残業代を給料に含めて支払う「固定残業代制度」が設けられているケースもあります。
固定残業代制度は、一定時間分の残業代が支払われていますので、みなし残業時間の範囲内の残業であれば、追加で残業代を請求することはできません。
しかし、みなし残業時間を超える残業をしている場合、固定残業代だけでは足りませんので、別途残業代を請求することが可能です。
そのため、固定残業代以外の残業代が一切支払われないというケースは、固定残業代制度の違法な運用がなされている可能性がありますので、一度確認してみるとよいでしょう。
時短勤務で未払い残業代が発生している場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
会社に対して残業代請求をするには、労働者が未払い残業代の存在を証拠により立証していかなければなりません。証拠がなければ未払い残業代を支払ってもらうのは困難ですので、まずは十分な証拠を集めることが重要です。
もっとも、一般の方では、どのような証拠が必要になるのか、どのように証拠を集めればよいのかわからないことも少なくありません。
弁護士であれば、会社への任意の証拠開示請求や裁判所への証拠保全の申立てなどの手段により残業代請求に必要となる証拠を確保することができます。
手元に残業代の証拠がない状態でも相談は可能ですので、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
未払い残業代に関する証拠収集ができたら、次は証拠に基づいて未払い残業代の金額を計算します。
しかし、残業代計算は、非常に複雑な計算方法となっていますので、一般の方では正確に残業代計算を行うことは困難です。残業代計算を間違えると、本来もらえるはずの残業代よりも少なくなってしまうこともありますので、残業代計算は専門家である弁護士に任せるようにしましょう。
弁護士であれば迅速・正確に未払い残業代の金額を計算できますので、労働者自身の負担を大幅に軽減することができます。
弁護士に依頼すれば、会社に対する未払い残業代請求の交渉を一任することができます。
不慣れな交渉を労働者自身で行うのは非常に負担が大きいといえますが、弁護士がいればそのような心配はありません。弁護士が窓口になって交渉することで、会社も不誠実な対応はできませんので、真摯な対応が期待できるでしょう。
また、時短勤務なのに残業が多すぎると感じている場合は、労働条件の改善についても弁護士を通じて交渉することができます。
ご自身で交渉するのが不安に感じるときは、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
育児・介護休業法の時短勤務制度を利用すれば、原則として所定労働時間を6時間に短縮することが可能になります。
もっとも、時短勤務制度を利用している労働者でも残業自体が禁止されるわけではありませんので、会社から残業を命じられれば、基本的には応じなければなりません。
ただし、違法な残業であれば拒否することができ、未払い残業代があれば会社に請求することも可能です。
時短勤務なのに残業が多すぎると感じる方や、未払い残業代を請求したいとお考えの方は、まずはベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
残業代の証拠収集から会社との交渉まで、弁護士がサポートします。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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