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残業代請求の弁護士コラム

医師の残業時間に上限はある? 働き方改革による規制と過労死ライン

2024年08月19日
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医師の残業時間に上限はある? 働き方改革による規制と過労死ライン

近年、医師の過酷な勤務による長時間労働の実態が社会的にも大きな問題になっています。

2022年には100連勤・月200時間超の時間外労働という過酷な環境で勤務していた医師が過労の末に自殺し、労災認定されたというニュースが大きく報道されました。

こういった医師の勤務環境の改善を目的とし、令和6年(2024年)4月から、医師の残業時間に関する上限規制の適用が開始されました。医師の長時間労働については、今後厳格に規制が行われることが想定されます。

あまりにも長時間の残業を強いられている医師の方は、弁護士への相談をご検討ください。本コラムでは、医師(勤務医)の残業時間について適用されるルールなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、勤務医の残業時間に適用されるルール

勤務医の残業時間については、労働基準法のルールが適用されます。
医師だから仕方がないとあきらめず、まずは労働基準法の基本的なルールと、勤務医の残業時間についてよく問題になるポイントを確認しておきましょう。

  1. (1)勤務医・研修医は労働者|労働基準法が適用される

    勤務医は、医療機関(使用者)の指揮命令下で働く労働者です。
    したがって、勤務医の労働時間には労働基準法のルールが適用されます
    これは、研修医という立場であっても同様です。

    労働時間について適用される労働基準法の基本的なルールは、以下のとおりです。

    ① 法定労働時間
    労働時間は原則として、1日あたり8時間・1週あたり40時間が上限です。
    ※特殊な労働時間制などにより、例外が認められることがあります。
    ② 36協定
    労使間で「36協定」を締結すると、その定めの範囲内で、法定労働時間を超える労働(=時間外労働)および法定休日の労働(=休日労働)を指示することが認められます。
    ただし後述のとおり、36協定を締結している場合でも、労働時間については一定の上限が適用されます
    ③ 残業代
    時間外労働・休日労働・深夜労働(=午後10時から午前5時までの労働)については、通常の賃金に対して一定割合以上の割増賃金を支払う必要があります。
  2. (2)研鑽時間・待機時間・仮眠時間の取り扱い

    勤務医や研修医については、研鑽時間・待機時間・仮眠時間などが労働時間に当たるかどうかが問題になります。
    労働時間に該当すれば、賃金(残業代)支払いの対象です。

    労働時間に当たるのは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間です。
    具体的には、以下の基準によって労働時間に当たるかどうかを判断します。

    ① 研鑽時間
    使用者に指示された勤務場所において研鑽を行う場合、または上司の明示・黙示の指示によって研鑽を行う場合は、労働時間にあたります。
    これに対して、場所を自由に決め、上司の明示・黙示の指示によらずに研鑽を行う場合には、在院して行う場合も労働時間に該当しません。
    ② 待機時間
    完全に業務から解放されておらず、指示があれば業務に従事することが求められる場合は、労働時間に該当します。
    ③ 仮眠時間
    待機時間と同様に、指示があれば業務に従事することが求められる場合は、労働時間に該当します。
  3. (3)年俸制でも残業代は発生する

    勤務医の賃金額は、年俸制によって定められることがよくあります。

    年俸制であっても、使用者の残業代の支払い義務が免除されるわけではありません
    法定労働時間を超えて働いた場合は時間外手当、法定休日に働いた場合は休日手当、深夜に働いた場合は深夜手当がそれぞれ発生します。

    年俸制を理由に残業代が支払われていないときは、残業代の未払いを疑いましょう

  4. (4)固定残業代制における残業代の取り扱い

    「固定残業代制」とは、実際の残業時間にかかわらず、あらかじめ定められた残業代(=固定残業代)を支払う制度です。

    固定残業代制を採用する場合、使用者は労働者に対して、固定残業代に対応する残業時間(=固定残業時間)を明示する必要があります。
    また、固定残業時間を超えて働いた労働者に対しては、超過時間数に対応する残業代を追加で支払わなければなりません。

    勤務医の労働時間は長くなりがちであるため、固定残業代制が採用されていても、固定残業時間を超過して残業代が発生するケースが多いです
    固定残業代制を理由に超過した時間分の残業代が一切支払われていないときは、残業代の未払いが生じていることになります



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2、働き方改革による勤務医に適用される労働時間の上限規制

令和6年4月より、勤務医に適用される労働時間の上限規制が厳格化されました。

以前の労働時間規制では、36協定において定める勤務医の時間外労働や休日労働の時間数には、特に制限が設けられていませんでした。

令和6年4月以降は、36協定による時間外労働の限度時間が、原則として「月45時間・年360時間」に制限されました。
また、臨時的に限度時間を超えて労働させる場合についても、医療機関の水準区分に応じた制限が適用されるようになっています。

  1. (1)勤務医の労働時間規制の水準区分

    令和6年4月から適用されている新たな労働時間規制において、勤務医に適用される規制の内容は、以下の医療機関の水準区分によって区別されています。


    A水準 原則的な規制が適用される(B水準・連携B水準・C-1水準・C-2水準のいずれにも該当しない医療機関)
    B水準(特定地域医療提供機関) 所在する地域の医療提供体制を確保する役割を担う医療機関
    連携B水準(連携型特定地域医療提供機関) 医師の派遣を通じてその地域の医療提供体制を確保する役割を担う医療機関
    C-1水準(技能向上集中研修機関) 臨床・専門研修を集中的に行わせる役割を担う医療機関
    C-2水準(特定高度技能研修機関) 高度技能の修得研修を集中的に行わせる役割を担う医療機関

    ※参考:日本医師協会

  2. (2)水準区分別|勤務医の労働時間の上限

    いずれの水準区分の医療機関においても、36協定に基づく勤務医の時間外労働は、原則として1か月あたり45時間以内かつ1年あたり360時間以内に抑えなければなりません(=限度時間)。

    ただし、36協定で特別条項を定めれば、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴って臨時的に必要がある場合に限り、限度時間を超えて勤務医に時間外労働をさせることができます

    特別条項に基づく労働時間については、A水準とその他の水準区分の医療機関で、以下のとおり規制の内容が異なっています。

    特別条項に基づく労働時間の上限

    A水準 時間外労働と休日労働を合わせて、月100時間未満(例外あり)かつ年960時間以内
    B水準・連携B水準・C-1水準・C-2水準 時間外労働と休日労働を合わせて、月100時間未満(例外あり)かつ年1860時間以内

    ※参考:日本医師協会

  3. (3)勤務医について講ずべき追加的健康確保措置

    特別条項を適用する場合でも、勤務医の時間外労働と休日労働の合計時間は、原則として月100時間未満に抑えなければなりません。

    ただし、健康状態に関する面接指導などの追加的健康確保措置を講じる旨を36協定に定め、適切に運用すれば、例外的に合計月100時間以上の時間外労働・休日労働を指示することができます

    また、B水準・連携B水準・C-1水準・C-2水準の医療機関においては、勤務医の労働時間が非常に長くなることが想定されます。
    そのため、これらの水準区分の医療機関では、連続勤務時間の抑制・勤務間インターバルの確保・代償休息の付与に関する追加的健康確保措置を講じることが義務付けられています。

    また、A水準においても、これらの追加的健康確保措置は努力義務とされています。

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3、医師の「過労死ライン」は? 労災認定基準・実態・遺族がとるべき対応

医師があまりにも長時間の労働をした場合、過労死のリスクが高まります。
万が一医師である家族が過労死してしまったら、労災保険給付や損害賠償の請求をご検討ください

  1. (1)労災認定基準における「過労死ライン」|医師にも当てはまる

    厚生労働省が公表している脳・心臓疾患の労災認定基準では、1か月あたり100時間を超える時間外労働をした場合や、2~6か月間を平均して1か月あたり80時間を超える時間外労働をした場合には、業務と発症の関連性が強いと評価されています。

    この「1か月あたり100時間」「2~6か月平均で1か月あたり80時間」というのは、一般的に「過労死ライン」と呼ばれる水準です。
    超えると労災のリスクが高まる過労死ラインは、職業にかかわらずすべての労働者に当てはまります。

    医師の方も、過労死ラインを超える時間外労働をしている場合は、労災のリスクが高い状態なので要注意です。

  2. (2)病院における常勤勤務医の労働時間の実態

    令和4年7月に行われた「医師の勤務環境把握に関する研究」調査では、病院における常勤勤務医の労働時間は、以下のとおり分布していることが分かりました。


    週40時間未満 22.5%
    週40時間以上50時間未満 32.7%
    週50時間以上60時間未満 23.7%
    週60時間以上70時間未満 12.1%
    週70時間以上80時間未満 5.4%
    週80時間以上90時間未満 2.3%
    週90時間以上100時間未満 0.9%
    週100時間以上 0.5%

    ※参考:「医師の勤務実態について」(厚生労働省)

    労働時間が「週60時間以上70時間未満」と回答した医師は、過労死ラインに差し掛かっているか、それを超えている状態です
    上記のデータによると、労働時間が過労死ラインのボーダーライン以上である医師は、21.2%と高い割合に及んでいます。

  3. (3)医師が過労死した場合に、家族がとるべき対応

    医師である家族が過労死してしまったら、労働基準監督署に対して労災保険給付を請求しましょう
    遺族補償給付や葬祭料をはじめとして、さまざまな種類の給付を受給できます。

    ただし、労災保険給付だけでは、過労死によって本人や遺族が被った損害全額は補填されません。不足額については、勤務先の医療機関に対して損害賠償を請求できます

    適正額の損害賠償を請求するためには、弁護士にご相談・ご依頼ください。

    ※参考:「労災保険給付の概要」(厚生労働省)
    ※参考:過労死ラインが認定される基準は? 令和3年の法改正に基づいて解説(ベリーベスト法律事務所)

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4、医師の未払い残業代請求を弁護士に依頼すべき理由

毎月長時間労働をしている医師の方は、未払い残業代が発生している可能性があります
未払い残業代請求は、以下の理由から弁護士に依頼するのがおすすめです。

  • 残業の証拠を集める方法について、具体的なアドバイスを受けられる
  • 自分で医療機関側と交渉する必要がなくなる
  • 訴訟などの法的手続きについても一任できる
  • 法的根拠に基づく請求により、適正額の残業代を得られる可能性が高まる

未払い残業代が生じているのではないかと疑われる医師の方は、お早めに弁護士へご相談ください。

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5、まとめ

医師の労働時間については、これまで緩やかな規制が維持されており、当事者の間でもあまり意識されていませんでした。

しかし、令和6年4月以降は、勤務医の労働時間に関する規制が厳格化されています。
長時間労働が慢性化している勤務医の方は、未払い残業代が発生している可能性があるので、今一度ご自身の労働時間を見直してみましょう

ベリーベスト法律事務所では、勤務医として働く中、未払い残業代請求や労働時間などについての相談を受け付けております。労働問題専門チームの弁護士が適切に賃金を支払ってもらえるよう、サポートします。
また、激務が原因となり休職を余儀なくされた場合、労災保険を使用するだけでなく、勤務先に対して損害賠償請求が可能なケースがあります

医師の残業問題・長時間労働でお悩みの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
残業代請求、不当解雇・退職勧奨、同一労働同一賃金、退職サポート、労働災害、労働条件・ハラスメントに関するトラブルなど、幅広く労働者のお悩み解決をサポートします。ぜひお気軽に お問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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