残業を強制する会社で働き続けたために心身に悪影響がおよび、転職や退職を検討している方もいるでしょう。なかには残業代がきちんと支払われておらず、不満を感じている方も少なくないはずです。
残業が多すぎたり、残業代が支払われなかったりしている場合、会社が労働基準法に違反している可能性があります。「この会社は法的に問題があるのではないか」と思ったときは、弁護士にご相談ください。
本記事では、残業が多い会社の違法性や対処法、未払い残業代がある場合の請求手順などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
心身を壊すような長時間の残業が行われている場合は、労働基準法違反の疑いがあるため、注意が必要です。1章では、日本での平均残業時間や法律で定められているルールについて、解説します。
厚生労働省が公表する令和5年度の「毎月勤労統計調査」によると、常用労働者5人以上の事業所において、同年中の一般労働者の月間平均総実労働時間は163時間で、そのうち所定外労働時間(=残業)は13.7時間でした。
このデータを参考にすると、毎月20~30時間程度でも残業が多いと言えます。
毎月45時間程度、あるいはそれ以上の残業をしている場合は、残業が多すぎる状態です。
使用者(経営者や事業主など)は、残業をした労働者に対して残業代を支払わなければなりません。残業代には、以下の割増率が適用されます(労働基準法第37条)。
残業の種類 | 概要 | 割増率 |
---|---|---|
法定内残業 | 所定労働時間を超え、法定労働時間を超えない部分の残業 ※所定労働時間:労働契約または就業規則で定められた労働時間 ※法定労働時間:原則として1日当たり8時間、1週間当たり40時間 |
法律上割増なし ※各使用者の就業規則において、法定内残業の割増率を通常の賃金に対して125%等とする場合もある。 |
時間外労働 | 法定労働時間を超える部分の残業 | 通常の賃金に対して125%以上 ※月60時間を超える部分については、通常の賃金に対して150%以上 |
休日労働 | 法定休日における労働 ※法定休日:労働基準法に基づいて付与が義務付けられている休日。1週間につき1日、または4週間を通じて4日 |
通常の賃金に対して135%以上 |
深夜労働 | 午後10時から午前5時までに行われる労働 | 通常の賃金に対して125%以上 |
また、使用者が労働者に時間外労働または休日労働をさせるためには、労使協定(36協定)を締結しなければなりません(同法第32条、第36条)。
時間外労働と休日労働の時間数は、36協定で定められた基準の範囲内とする必要があります。
上記のルールに反して、労働者に残業をさせた者は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます(同法第119条第1号)。さらに、会社に対しても30万円以下の罰金が科されます(同法第121条)。
労働者の立場で「残業が多い」と感じた場合は、まずはこれらのルールに則った状況にあるのかどうかを確認しましょう。
たとえば、以下のような残業指示は労働基準法違反に該当します。
これらの残業指示に当てはまる場合は、社内相談窓口や労働基準監督署、弁護士などにご相談ください。
日々の残業が多すぎるときは、これからどうすべきか考えたくても、心身ともに疲労していることから休日に寝てばかりになるケースも少なくないでしょう。
ここからは、残業が多い会社で働いている方が考えるべき3つのポイントについて、解説します。
会社側の残業指示が不当なものである場合は、残業を拒否することが可能です。
たとえば以下のような場合には、法的に残業の拒否が認められます。
無理することなく、会社側に対して理由とともに残業できない旨を伝えましょう。
このとき、感情的に訴えるのではなく、冷静かつ具体的に事実を伝えることがポイントです。
自分にばかり残業が偏っていると思われる場合は、上司にその旨を相談してみましょう。仕事量の調整や、配置転換などを検討してもらえることがあります。
上司が対応してくれない場合は、経営陣や人事担当者などに残業の多さを訴えることも考えられます。上司に対して、仕事量の調整などを行うよう指示してもらえるかもしれません。
この場合においても、愚痴っぽく話すのではなく、冷静に事実を伝えるようにしましょう。
残業を拒否したり、上司に相談したりしても、残業が多い状況が全く改善しない場合は、退職や転職することも検討すべきです。その際は、いきなり会社を辞めるのではなく、休職して心身を休める選択肢もあります。
同じ会社で働き続けることにこだわらず、自分の心と身体を守ることを優先してください。
残業が多い会社では、残業代が正しく支払われず未払いとなっているケースがよく見られます。
以下の手順で、会社に対して未払い残業代を請求しましょう。
未払い残業代の請求を成功させるためには、残業の証拠を十分に確保することが大切です。
以下のような証拠を、できる限り豊富に集めましょう。
どのような証拠が役立つか、および証拠収集の方法などについては、弁護士に相談すればアドバイスを受けることができます。
集まった証拠をもとに残業時間を集計したうえで、以下の式によって残業代の額を計算します(月給制の原則的な計算方法)。
残業の種類 | 割増率 |
---|---|
法定内残業 | 割増なし |
時間外労働 | 125%以上 ※月60時間を超える部分については150%以上 |
休日労働 | 135%以上 |
深夜労働 | 125%以上 |
上記の方法で計算した額から、すでに支払われた残業代の額を差し引くと、未払い残業代の額を求められます。
残業代計算を正確に行うためには、専門的な知識が必要です。また、特殊な勤務形態や労働時間制で働いている場合には、上記とは異なる計算方法が適用される点にも注意を要します。弁護士にアドバイスを求めましょう。
未払い残業代の計算をしたあとは、会社に対して内容証明郵便で請求書を送付しましょう。内容証明郵便が会社に到達すると、未払い残業代請求権の時効完成が6か月間猶予されます(民法第150条第1項)。
なお、時効は以下のとおりです。
賃金発生日 | 時効期間 | 備考 |
---|---|---|
令和2年(2020年)4月1日以降の賃金 | 3年 | 将来的に5年に延長される可能性あり(附則) |
令和2年(2020年)3月31日以前の賃金 | 2年 | 改正前の労働基準法、民法が適用される |
会社から返信があったら、未払い残業代の支払いを求めて交渉を行いましょう。
弁護士を通じて、法的な根拠を示しながら請求すると、会社が支払いに応じる可能性が高まります。
会社が未払い残業代の支払いに応じないときは、労働基準監督署や労働組合に相談することも検討しましょう。
労働基準監督署は立ち入り調査や是正勧告、労働組合は団体交渉を通じて、会社に未払い残業代の適切な支払いを求めてもらえることがあります。
ただし、労働基準監督署や労働組合が迅速に対応してくれるとは限りません。
時効を考えて、未払い残業代の回収に向けた行動をすぐにとりたいなどの場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
未払い残業代請求の交渉がまとまらないときは、労働審判や訴訟を利用することも検討すべきです。
労働審判は非公開、訴訟は公開で行われる裁判手続きです。中立の裁判官や労働審判員が判断を行うため、事実に沿った妥当な解決が期待できます。
労働審判や訴訟を有利に進めるためには、残業の証拠を漏れなく提出したうえで、法的根拠に基づいた請求を行うことが大切です。手続きも専門的で難しい対応が求められるので、弁護士と協力して労働審判や訴訟の準備を整えましょう。
残業が多い会社を辞めたいと考えている方は、弁護士に相談することで以下のようなメリットが得られます。
残業の多さを理由に退職を考えている方は、お早めに弁護士へご相談ください。
弁護士に依頼するメリットについては、詳しくはこちらで解説しています。
残業が多すぎる場合や、サービス残業をしている場合は、労働基準法違反の可能性があります。上司に業務量の調整を求めることや、未払い残業代請求などを検討しましょう。
残業が多い企業を辞めたい場合は、退職の意思を明確にして早めに相談することが大切です。弁護士による退職代行サービスを利用すれば、ストレスを軽減しながらスムーズに退職することができます。また、未払い残業代請求なども依頼できるので安心です。
ベリーベストは、弁護士による退職サポートをご提供しております。
残業の多い企業を辞めたい方や、退職に伴って未払い残業代を請求したい方は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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